愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.183
「触っただけでかぶれるの?」、接触皮膚炎のはなし
今号のポイント
- 2接触皮膚炎には刺激性とアレルギー性の2つの型がある。子どもではおむつかぶれ・よだれかぶれなどの刺激性が多い
- 4植物かぶれ(ウルシ、イチョウ等)はアレルギー性接触皮膚炎。一度感作されると再接触で発症する
- 6治療の基本は原因の除去+ステロイド外用薬。原因を突き止めることが最も大切
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「公園で遊んだ後に手首が赤くなった」「新しいベルトを着けたらおなかがかゆくなった」。"かぶれ"は外来でもよく相談される皮膚トラブルです。医学的には接触皮膚炎と呼び、特定の物質が皮膚に触れて起こる炎症反応です [1]。今回は子どもに多いタイプと対処をまとめます。おむつかぶれはVol.41で別に扱っています。
Q1.「接触皮膚炎には種類があるのですか?」
——"かぶれ"にも種類があると聞いたのですが、どう違うのですか?
はい。接触皮膚炎は大きく2つの型に分かれます [1][2]
接触皮膚炎の2つの型 [1][2]:
刺激性接触皮膚炎
- メカニズム
- 物質の直接的な刺激で皮膚が炎症を起こす [1]
- 感作の必要
- 不要。初めての接触でも起こりうる [1]
- 発症までの時間
- 接触後数分〜数時間 [1]
- 誰に起こるか
- 誰でも起こりうる(濃度・接触時間に依存)[1]
- 子どもで多い例
- おむつかぶれ、よだれかぶれ、洗剤 [1]
- 皮膚の見た目
- 発赤、乾燥、ひび割れ [1]
アレルギー性接触皮膚炎
- メカニズム
- 免疫反応(IV型アレルギー)を介して起こる [2]
- 感作の必要
- 必要。初回接触で感作→2回目以降に発症 [2]
- 発症までの時間
- 接触後24〜72時間 [2]
- 誰に起こるか
- 感作された人だけに起こる [2]
- 子どもで多い例
- 植物(ウルシ)、金属(ニッケル)[2]
- 皮膚の見た目
- 発赤、水疱、強いかゆみ [2]
子どもで圧倒的に多いのは刺激性接触皮膚炎です [1]。おむつかぶれ(Vol.41参照)やよだれかぶれが代表的です。一方、アレルギー性接触皮膚炎は年齢が上がるにつれて増えてきます [2]。ウルシかぶれや金属アレルギーがこれに当たります
——刺激性は誰でもなるけど、アレルギー性は体質ですか?
その理解で正しいです。刺激性は物質の濃度や接触時間が長ければ誰でも起こります [1]。一方、アレルギー性は一度感作(免疫が記憶)されないと起こりません [2]。ただし、一度感作されると少量の接触でも発症するため、やっかいです [2]
ポイント
- 接触皮膚炎には刺激性とアレルギー性の2つの型がある [1][2]
- 刺激性は誰でも起こりうる(おむつかぶれ、よだれかぶれ等)[1]
- アレルギー性は感作が必要。一度感作されると少量でも発症する [2]
- 子どもでは刺激性が圧倒的に多い [1]
Q2.「子どもに多い"かぶれ"の原因は何ですか?」
——子どもの場合、何に気をつければいいですか? 身の回りにかぶれる原因はありますか?
子どもの接触皮膚炎の原因は、年齢によって変わってきます [1][2][3]
年齢別・子どもに多い接触皮膚炎の原因 [1][2][3]:
乳児期(0〜1歳)
部位
- おむつ(尿・便の刺激)
- おしり、陰部
- よだれ
- 口の周り、顎
- 食べ物(果汁、トマトなど)
- 口の周り、手
- おしりふき(アルコール・防腐剤)
- おしり
タイプ
- おむつ(尿・便の刺激)
- 刺激性 [1]
- よだれ
- 刺激性 [1]
- 食べ物(果汁、トマトなど)
- 刺激性 [3]
- おしりふき(アルコール・防腐剤)
- 刺激性 or アレルギー性 [3]
幼児〜学童期(1歳〜)
部位
- 植物(ウルシ、イチョウ等)
- 手、腕、顔
- ゴム(靴、手袋のゴム成分)
- 足、手
- 金属(ニッケル:ベルト、ボタン、アクセサリー)
- おなか、耳、首
- 衣類の染料・仕上げ剤
- 体幹、腋窩
- 日焼け止め・虫よけ
- 塗布部位
- 絆創膏のテープ
- 貼付部位
- 靴の革・接着剤
- 足背
タイプ
- 植物(ウルシ、イチョウ等)
- アレルギー性 [2]
- ゴム(靴、手袋のゴム成分)
- アレルギー性 [3]
- 金属(ニッケル:ベルト、ボタン、アクセサリー)
- アレルギー性 [2][3]
- 衣類の染料・仕上げ剤
- アレルギー性 [3]
- 日焼け止め・虫よけ
- 刺激性 or アレルギー性 [3]
- 絆創膏のテープ
- 刺激性 or アレルギー性 [3]
- 靴の革・接着剤
- アレルギー性 [3]
特に意外と見逃されやすいのが金属アレルギーです [2][3]。ジーンズのボタンやベルトのバックル(ニッケル)がおなかに触れて、おへその周りに湿疹ができるケースがあります [3]。最近ではスマートフォンの金属部分でかぶれるケースも報告されています [3]
——ピアスでかぶれるのは聞いたことがありますが、ベルトでもかぶれるんですね
はい。ニッケルは最も頻度の高い接触アレルゲンです [2]。ニッケルは100円玉、ベルトのバックル、アクセサリー、時計の裏蓋、楽器(フルートなど)にも含まれています [2][3]。お子さんが特定の部位に繰り返し湿疹を起こす場合は、その部位に何が触れているかを確認してください
ポイント
- 乳児期はおむつ・よだれ・食べ物による刺激性接触皮膚炎が多い [1]
- 幼児〜学童期は植物・金属・ゴムによるアレルギー性接触皮膚炎が増える [2][3]
- ニッケルは最も頻度の高い接触アレルゲン [2]
- 特定の部位に繰り返す湿疹は何が触れているかを確認する [3]
Q3.「植物でかぶれることがあると聞きました。どの植物が危険ですか?」
——公園や山で遊ぶとき、触ってはいけない植物はありますか?
日本で接触皮膚炎を起こしやすい植物がいくつかあります [2][4]。代表的なものをまとめますね
接触皮膚炎を起こす主な植物 [2][4][5]:
| 植物 | 原因物質 | 特徴 | 好発時期 |
|---|---|---|---|
| ウルシ | ウルシオール | 最も強力な植物かぶれの原因。少量の接触でも重度の水疱性皮膚炎 [4] | 通年(特に秋) |
| ヤマウルシ | ウルシオール | ウルシの仲間。山歩き中に接触しやすい [4] | 通年 |
| ハゼノキ | ウルシオール | ウルシ科。紅葉がきれいだが触るとかぶれる [4] | 秋 |
| イチョウ | ギンコール酸 | 銀杏(ギンナン)の果肉に含まれる。葉では通常起こらない [5] | 秋(実が落ちる時期) |
| サクラソウ | プリミン | 園芸品種で接触する機会がある [5] | 春 |
| キク科植物 | セスキテルペンラクトン | マーガレット、菊、ヨモギなど [5] | 夏〜秋 |
| マンゴー | ウルシオール類縁物質 | ウルシ科の果物。口の周りのかぶれ [4] | 通年(食べたとき) |
ウルシ科の植物は特に注意です [4]。ウルシオールという成分は非常に感作力が強く、一度かぶれると少量の接触でも再発します [4]。マンゴーもウルシ科の植物であるため、ウルシにかぶれた経験がある人はマンゴーでもかぶれる可能性があります [4]
植物かぶれの症状と経過 [2][4]:
| 時期 | 症状 |
|---|---|
| 接触後24〜48時間 | 接触部位に発赤・かゆみが出現 [2] |
| 2〜5日後 | 水疱・びらんが形成。強いかゆみ [2] |
| 1〜3週間 | 適切な治療で徐々に改善 [2] |
| 注意点 | 水疱の液には原因物質は含まれない→水疱をつぶしても広がらない [4] |
——かぶれた後に水疱の液が他の人につくとうつりますか?
よくある誤解ですが、水疱の液で他の人にうつることはありません [4]。水疱の液にはウルシオールは含まれていないためです [4]。ただし、衣服や靴にウルシオールが付着している場合は、そこから二次的に接触すると他の部位にかぶれが広がる可能性があります [4]。触れた可能性のある衣服はすぐに洗濯してください
植物かぶれの予防 [4][5]:
| 対策 | 具体的な方法 |
|---|---|
| 植物の識別 | ウルシ科の植物の特徴(3枚複葉、赤い実)を覚える [4] |
| 長袖・長ズボン | 山歩きや草むら遊びでは肌を露出しない [4] |
| 早めの洗浄 | 触れたら10分以内に石鹸と水でしっかり洗い流すと発症を軽減できる(10分以内なら約50%のウルシオールを除去可能)[4] |
| ギンナンを素手で触らない | 秋の銀杏拾いは手袋を着用 [5] |
ポイント
- ウルシ科の植物が植物かぶれの最大の原因。少量でも重度のかぶれを起こす [4]
- マンゴーもウルシ科。ウルシかぶれの既往がある人は注意 [4]
- 水疱の液では他人にうつらないが、衣服のウルシオール付着に注意 [4]
- 接触後10分以内の洗浄で発症を軽減できることがある [4]
Q4.「"かぶれ"の原因を調べる検査はありますか?」
——子どもが繰り返し同じ場所に湿疹ができるのですが、何にかぶれているのか調べてもらえますか?
はい。アレルギー性接触皮膚炎の原因を調べる検査として、パッチテスト(貼布試験)があります [2][6]
パッチテストの方法 [2][6]:
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 方法 | 疑わしいアレルゲンをシートに載せて背中に貼付。48時間後と72〜96時間後に判定 [6] |
| 判定 | 貼付部位の発赤・水疱の有無でアレルギーの有無を判断 [6] |
| 標準アレルゲン | ジャパニーズスタンダードアレルゲン(金属、ゴム、防腐剤、香料など25種類前後)[6] |
| 持ち込みアレルゲン | 疑わしい製品(化粧品、シャンプー、外用薬など)を持参して貼付 [6] |
| 注意点 | 検査期間中(約1週間)は入浴・発汗を控える必要がある [6] |
パッチテストが有用なケース [2][6]:
| ケース | 理由 |
|---|---|
| 原因不明の慢性湿疹 | 接触アレルゲンが隠れている可能性 |
| 特定の部位に繰り返す湿疹 | 金属、衣類、靴などへの接触アレルギー |
| 外用薬で悪化する湿疹 | 外用薬の成分(防腐剤、基剤)へのアレルギー |
| 職業性皮膚炎 | 学校の実習や部活動で使う物質への接触 |
パッチテストは基本的に皮膚科専門医で実施します [6]。お子さんの場合は、繰り返す湿疹の場所と生活環境をよく観察して、何に触れたときに悪化するかの情報を集めておくと、検査がスムーズに進みます [6]
——血液検査でもわかりますか?
接触皮膚炎はIV型(遅延型)アレルギーであるため、食物アレルギーや花粉症で用いる血液検査(IgE検査)では検出できません [2][6]。パッチテストが唯一の確定診断法です [6]
ポイント
- アレルギー性接触皮膚炎の原因検査はパッチテスト(貼布試験) [2][6]
- 血液検査(IgE)では検出できない。パッチテストが唯一の方法 [6]
- 検査は皮膚科専門医で実施。疑わしい製品を持参するとよい [6]
- 繰り返す湿疹は何に触れたとき悪化するかを記録しておく
Q5.「かぶれてしまったらどうすればいいですか? 予防法も教えてください」
——子どもがかぶれてしまった場合の治療と、予防法を教えてください
治療の基本は2つです。①原因物質の除去と②ステロイド外用薬です [1][2][7]
接触皮膚炎の治療 [1][2][7]:
| 治療 | 具体的な方法 |
|---|---|
| 原因物質の除去 | 原因がわかれば接触を避ける。これが最も重要 [1][2] |
| 洗浄 | 原因物質に触れたらすぐに石鹸と水で洗い流す [1] |
| ステロイド外用薬 | 炎症とかゆみを抑える。部位に応じた強さを選択 [7] |
| 抗ヒスタミン薬内服 | かゆみが強い場合に補助的に使用 [7] |
| ステロイド内服 | 重症(広範囲の水疱、顔面の腫脹)の場合に短期使用 [7] |
ステロイド外用薬の選び方(部位別)[7]:
ステロイドの強さ
- 顔、首
- マイルド〜ミディアム
- 体、手足
- ストロング
- 手のひら、足の裏
- ベリーストロング
代表的な薬
- 顔、首
- ロコイド、キンダベート [7]
- 体、手足
- リンデロンV、ベトネベート [7]
- 手のひら、足の裏
- アンテベート、マイザー [7]
ステロイドの使い方はVol.13で詳しくお話ししています。3〜5日間の短期使用で副作用の心配はほとんどありません [7]。むしろ、かゆみを放置して掻き壊す→二次感染(とびひ)のほうが問題です
かぶれの予防チェックリスト [1][2][3][4]:
刺激性接触皮膚炎の予防
| 対策 | 具体的な方法 |
|---|---|
| おむつかぶれ予防 | こまめなおむつ交換、ワセリンで保護(Vol.41参照)[1] |
| よだれかぶれ予防 | よだれの後はやさしく拭き取り、ワセリンで保護 [1] |
| 食べ物かぶれ予防 | 食事前に口の周りにワセリンを塗って保護 [3] |
| 洗剤かぶれ予防 | すすぎを十分に行う。柔軟剤の使いすぎに注意 [3] |
アレルギー性接触皮膚炎の予防
| 対策 | 具体的な方法 |
|---|---|
| 金属かぶれ予防 | ニッケルフリーの製品を選ぶ。ボタン・バックルにカバーを貼る [2][3] |
| 植物かぶれ予防 | 長袖・長ズボン。ウルシ科植物の識別 [4] |
| ゴムかぶれ予防 | ラテックスフリーの手袋・靴を選ぶ [3] |
| 外用薬かぶれ予防 | 外用薬で悪化する場合はパッチテストで確認 [6] |
受診の目安 [1][2][7]:
| 症状 | 対応 |
|---|---|
| 軽い赤みのみ(限局的) | 原因除去+市販のステロイド外用薬で経過観察 |
| 広範囲の発赤・水疱 | 当日〜翌日に受診 |
| 顔面の腫脹 | 当日受診 |
| 市販薬で改善しない | 2〜3日で改善しなければ受診 |
| 原因がわからず繰り返す | 皮膚科でパッチテストを相談 |
| 眼の周囲のかぶれ | 当日受診(眼への影響の確認) |
かぶれは原因を突き止めて避けることが一番の治療法です [1][2]。"何にかぶれたか"がわかれば、再発は防げます。原因がわからない場合は遠慮なく皮膚科にご相談ください
ポイント
- 治療の基本は原因除去+ステロイド外用薬 [1][2][7]
- ステロイドの強さは部位に合わせて選択。短期使用なら副作用は心配不要 [7]
- 刺激性かぶれの予防にはワセリンによる保護が有効 [1][3]
- 原因不明の繰り返すかぶれはパッチテストで原因検索を [6]
まとめ
- 接触皮膚炎には刺激性とアレルギー性の2つの型がある。子どもでは刺激性(おむつかぶれ、よだれかぶれ)が多い [1]
- 年齢が上がると植物(ウルシ)・金属(ニッケル)によるアレルギー性接触皮膚炎が増える [2][3]
- ウルシ科植物は非常に強力なかぶれの原因。マンゴーもウルシ科であることに注意 [4]
- 原因検索にはパッチテストが有効。血液検査(IgE)では検出できない [2][6]
- 治療の基本は原因の除去+ステロイド外用薬。原因を突き止めることが最重要 [1][2][7]
- 特定の部位に繰り返す湿疹は接触皮膚炎を疑う。何が触れているか確認を [3]
あわせて読みたい
ご質問・ご感想をお待ちしています
「こんなこと聞いていいのかな?」というギモンこそ大歓迎です。 外来受診時にお気軽にお声がけいただくか、質問フォームからお寄せください。
愛育病院 小児科 おかもん先生
本メルマガの内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまの症状についてはかかりつけの小児科医にご相談ください。