愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.120
ハイハイしないけど大丈夫?、お座りとハイハイの「正解」はひとつじゃない
今号のポイント
- 2お座りは6〜9ヶ月、ハイハイは7〜11ヶ月が正常範囲。いずれも個人差が大きい
- 4ハイハイをスキップして歩き始める子もいる。移動スタイルは十人十色
- 6シャフリングベビー(いざりっ子)は歩行開始が遅れるが、多くは正常に発達する
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「7ヶ月になったのにお座りがグラグラする」「9ヶ月なのにハイハイしない」「お座りの姿勢が変」、こうしたご相談をよくいただきます。前号(Vol.119)では首すわりと寝返りについてお伝えしましたが、今回はその次のステップであるお座りとハイハイの発達について、個人差の大きさと、本当に心配すべきサインをお伝えします。
Q1.「お座りはいつ頃できるようになりますか?」
——7ヶ月ですが、まだ支えがないと座れません。遅いですか?
7ヶ月で支えなしのお座りが安定していないお子さんは、珍しくありません。お座りには段階があり、支え座り → 手をついた座り → 独り座りと進みます [1][2]。
お座りの発達段階:
時期の目安
- 支え座り
- 5〜6ヶ月
- 手つき座り(三脚座り)
- 6〜7ヶ月
- 独り座り
- 7〜9ヶ月
- 座位からの移行
- 8〜10ヶ月
特徴
- 支え座り
- 大人が支えると座れる。自分では支えられない [1]
- 手つき座り(三脚座り)
- 両手を前について座る。手を離すと倒れる [2]
- 独り座り
- 手を使わずに安定して座れる。おもちゃで遊べる [1]
- 座位からの移行
- 座った姿勢からうつ伏せやハイハイに移れる [2]
独り座り達成時期の目安:
達成率
- 6ヶ月
- 約30〜40%
- 7ヶ月
- 約50〜60%
- 8ヶ月
- 約80〜85%
- 9ヶ月
- 約95%以上
補足
- 6ヶ月
- 早い子 [1]
- 7ヶ月
- 約半数 [1]
- 8ヶ月
- 大多数 [2]
- 9ヶ月
- ほぼ全員 [1]
「WHO Multicentre Growth Reference Studyでは、独り座りの達成時期は3.8〜9.2ヶ月(99%タイル範囲)と報告されています [1]。つまり、9ヶ月頃までに独り座りができれば正常範囲です。7ヶ月で手つき座りの段階であれば、まったく心配いりません。」
ポイント
- お座りは段階的に発達する。独り座りは7〜9ヶ月が目安 [1][2]
- 9ヶ月で独り座りできれば正常範囲 [1]
- 7ヶ月で支え座りの段階でも焦る必要なし
Q2.「ハイハイの標準的な時期と、いろいろなスタイルについて教えてください」
——もうすぐ9ヶ月ですが、ハイハイしません。それと、お友達の赤ちゃんは変わった動き方をしていました。ハイハイにも種類があるんですか?
はい、ハイハイには実にさまざまなスタイルがあります。"正しいハイハイ"は一つではないのです [3][4]。
ハイハイの達成時期:
達成率
- 7ヶ月
- 約20〜30%
- 8ヶ月
- 約40〜50%
- 9ヶ月
- 約60〜70%
- 10ヶ月
- 約80〜85%
- 11ヶ月
- 約90%以上
補足
- 7ヶ月
- 早い子 [1]
- 8ヶ月
- [3]
- 9ヶ月
- [1]
- 10ヶ月
- 大多数 [3]
- 11ヶ月
- [1]
ハイハイのさまざまなスタイル:
説明
- 四つ這い(標準型)
- 手と膝をつき、交互に動かして進む
- ずりばい(ほふく前進型)
- お腹を床につけたまま、腕で引っ張って進む
- 高這い(ベアウォーク)
- 手と足をつき、膝を浮かせて進む
- お尻歩き(シャフリング)
- お座りの姿勢でお尻を使って移動
- 片側ハイハイ
- 片方の膝だけ使い、もう片方は足裏をつける
- ローリング
- 寝返りを繰り返して移動
正常?
- 四つ這い(標準型)
- 正常。最も典型的 [3]
- ずりばい(ほふく前進型)
- 正常。四つ這いの前段階 [4]
- 高這い(ベアウォーク)
- 正常 [3]
- お尻歩き(シャフリング)
- 正常だが歩行開始が遅い傾向(後述)[5]
- 片側ハイハイ
- 多くは正常。持続する場合は相談 [3]
- ローリング
- 一時的なら正常 [4]
「赤ちゃんは自分にとって一番効率的な移動手段を見つけます [4]。四つ這いが"正しい"ハイハイというわけではありません。どのスタイルでも、自分の意思で目的地に移動できていれば、運動発達としては順調です。」
ポイント
- ハイハイは 7〜11ヶ月が正常範囲 [1][3]
- スタイルは多様。四つ這いだけが「正しい」わけではない [3][4]
- 自分の意思で移動できていれば順調
Q3.「ハイハイをスキップする子もいると聞きましたが、本当ですか?」
——ハイハイしないまま歩き始めたという話を聞きました。それって大丈夫なんですか?
はい、ハイハイをスキップして、つかまり立ちから直接歩き始める子は珍しくありません [4][6]。
ハイハイスキップの事実:
| 項目 | データ |
|---|---|
| ハイハイをスキップする割合 | 約4〜15%と報告にばらつきがある [4][6] |
| 発達上の問題 | ハイハイスキップ自体は異常ではない [4] |
| その後の発達 | 大多数が正常に発達。運動能力にも差が出ない [6] |
「ハイハイをスキップする原因としては、独り座りが安定しやすい体型の子、つかまり立ちが好きな子、環境要因(つかまる家具が多いなど)があります [4]。"ハイハイは脳の発達に必須"という説を耳にすることがありますが、現時点で、ハイハイをスキップすることが脳の発達に悪影響を与えるという科学的根拠はありません [6]。」
「ただし、ハイハイも歩行もせず、移動手段がまったくないという場合は、運動発達全般の遅れの可能性がありますので、相談が必要です [7]。」
ポイント
- ハイハイをスキップする子は約4〜15%。珍しくない [4][6]
- ハイハイスキップ自体は異常ではなく、その後の発達も問題ない [6]
- 移動手段がまったくない場合は相談を [7]
Q4.「シャフリングベビー(いざりっ子)とは何ですか?」
——うちの子、お座りの姿勢でお尻をずって移動します。これは"シャフリングベビー"ですか?
おそらくそうです。シャフリングベビー(shuffling baby、いざりっ子)とは、四つ這いのハイハイをせず、お座りの姿勢でお尻や足を使って移動する赤ちゃんのことです [5][8]。
シャフリングベビーの特徴:
| 特徴 | 説明 |
|---|---|
| 移動方法 | お座りの姿勢でお尻をずって移動(bottom shuffling)[5] |
| 頻度 | Largòの分類で約9% [4]。Robsonの報告では約1/40(約2.5%)[5] |
| 家族歴 | 約40%に家族内で同じパターンの人がいる [8] |
| 四つ這いハイハイ | しないことが多い [5] |
| 歩行開始時期 | 平均約19.6ヶ月。通常より遅い [5] |
| その後の発達 | 大多数が正常に発達する [8] |
シャフリングベビーのタイムライン:
通常の発達
- 6〜8ヶ月
- お座り
- 8〜10ヶ月
- 四つ這い開始
- 9〜12ヶ月
- つかまり立ち・伝い歩き
- 12〜15ヶ月
- 独歩
- 2〜3歳
- 走る・跳ぶ
シャフリングベビー
- 6〜8ヶ月
- お座り(同じ)
- 8〜10ヶ月
- 四つ這いせず、お座りで移動開始
- 9〜12ヶ月
- つかまり立ち遅い(12〜15ヶ月頃)
- 12〜15ヶ月
- 独歩遅い(平均約19.6ヶ月、時に24ヶ月)[5]
- 2〜3歳
- 追いつく。運動発達は正常に [8]
シャフリングベビーは体質的なもので、病気ではありません [5]。歩行開始は遅くなりますが、最終的にはしっかり歩けるようになります。ただし、シャフリングに加えて知的発達の遅れや筋緊張の異常がある場合は、小児神経の専門医に相談してください [8]。
ポイント
- シャフリングベビーはLargòの分類で約9%、Robsonの報告では約1/40。体質的なもの [4][5]
- 歩行開始は平均約19.6ヶ月と遅いが、最終的に追いつく [5]
- 約40%に家族歴あり(遺伝的要素)[8]
- 知的発達の遅れや筋緊張異常がなければ心配不要
Q5.「発達の順序が教科書通りでなくても大丈夫ですか?」
——寝返り→お座り→ハイハイ→つかまり立ちという順番が普通だと聞きましたが、うちの子は順番が違います。大丈夫ですか?
発達の順序は一人ひとり違います。教科書に載っている順番は"多くの子がたどるパターン"であり、すべての子に当てはまるわけではありません [4][9]。
発達の順序の個人差:
実際にある別の順番
- 寝返り → お座り → ハイハイ → つかまり立ち
- 正常の一例 [1]
- お座り → 寝返り → ハイハイ → つかまり立ち
- お座りが先 [4]
- 寝返り → お座り → つかまり立ち(ハイハイなし)
- ハイハイスキップ [6]
- お座り → シャフリング → つかまり立ち → 独歩
- シャフリングベビー [5]
- 寝返り → ずりばい → つかまり立ち(独り座り遅い)
- つかまり立ちが先 [4]
問題?
- 寝返り → お座り → ハイハイ → つかまり立ち
- いいえ
- お座り → 寝返り → ハイハイ → つかまり立ち
- いいえ
- 寝返り → お座り → つかまり立ち(ハイハイなし)
- いいえ
- お座り → シャフリング → つかまり立ち → 独歩
- いいえ
- 寝返り → ずりばい → つかまり立ち(独り座り遅い)
- いいえ
「Largò et al.(1985)の研究では、運動発達のパターンを4つに分類しています [4]。」
特徴
- Type 1(標準型)
- 四つ這い → 独歩
- Type 2(這い這いなし型)
- ハイハイなし → 独歩
- Type 3(シャフリング型)
- お尻歩き → 独歩(遅め)
- Type 4(ローリング型)
- 寝返り移動 → 独歩
割合
- Type 1(標準型)
- 約80% [4]
- Type 2(這い這いなし型)
- 約7% [4]
- Type 3(シャフリング型)
- 約9% [4]
- Type 4(ローリング型)
- 約4% [4]
「どのパターンでも、最終的に歩行を獲得し、正常な運動発達に到達します [4]。大切なのは順番ではなく、全体的に前に進んでいるかどうかです。」
ポイント
- 発達の順序は 一人ひとり違う。教科書通りでなくてOK [4]
- 4つの運動発達パターンが知られており、どれも正常 [4]
- 大切なのは順番ではなく 全体的に前に進んでいるか
Q6.「心配すべきサインと受診の目安を教えてください」
——いろいろな個人差があることはわかりましたが、やっぱり心配です。どういう時に受診すべきですか?
個人差の範囲と、受診が必要なサインを整理しましょう [7][10]。
受診チェックリスト、お座り・ハイハイ期(6〜11ヶ月):
- 9ヶ月を過ぎても支えなしで座れない [1]
- 10ヶ月を過ぎてもどの方法でも移動しない(ハイハイ、ずりばい、シャフリング、いずれもなし)[7]
- 体の左右差がある(片側の手足だけ動きが少ない・硬い)[10]
- 筋緊張の異常(極端にぐにゃぐにゃ or 極端に硬い)[10]
- 以前できていたことができなくなった(退行) [7]
- 物に手を伸ばさない、つかまない(9ヶ月以降)[7]
- 目が合わない、名前に反応しない(運動以外の発達も心配)[7]
特に注意すべき3つのサイン:
| サイン | なぜ重要か |
|---|---|
| 左右差 | 片麻痺(脳性麻痺の一型)の可能性。早期介入が有効 [10] |
| 退行 | 神経変性疾患の可能性。速やかな評価が必要 [7] |
| 筋緊張の異常 | 中枢性・末梢性の神経筋疾患の可能性 [10] |
「繰り返しになりますが、個人差は本当に大きいのです。9ヶ月健診で「ハイハイがまだですね」と言われても、それは"異常"ではなく"経過を見ましょう"という意味です。ただし、上記のチェックリストに当てはまる項目がある場合は、早めにかかりつけの小児科に相談してください。」
ポイント
- 9ヶ月で座れない、10ヶ月で移動手段なし → 相談を [1][7]
- 左右差、退行、筋緊張異常 は要注意 [7][10]
- 個人差は大きい。心配なら相談して損はない
今号のまとめ
- お座りは6〜9ヶ月、ハイハイは7〜11ヶ月が正常範囲。個人差が非常に大きいです
- ハイハイのスタイルは多様。四つ這いだけが「正しい」わけではありません
- ハイハイをスキップする子は約4〜15%。異常ではありません
- シャフリングベビーは歩行開始が遅いですが、最終的に追いつきます
- 発達の順序は一人ひとり違って当たり前。全体的に前に進んでいればOK
- 9ヶ月で座れない、10ヶ月で移動なし、左右差、退行がある場合は受診を
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