愛育病院 小児科おかもん だより Vol.33
「逆さバイバイは発達障害?」、誤解されやすい赤ちゃんの仕草
今号のポイント
- 2逆さバイバイは1〜2歳では正常な発達段階。心配不要
- 4発達障害の診断は「一つの行動」ではなく「全体像」で判断
- 6気になるときは1歳6ヶ月健診・3歳児健診で相談を
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「うちの子、バイバイを逆さ(手のひらを自分に向けて)にするんです。自閉スペクトラム症ではないかと心配で……」、こうしたご相談を、健診や外来でよくいただきます。
実は、逆さバイバイは1〜2歳の多くの子どもに見られる正常な発達段階です [1]。今回は、逆さバイバイをはじめとした 「心配されがちだけど実は正常な発達行動」 についてお話しします。
Q1.「逆さバイバイって、何ですか?」
——逆さバイバイという言葉を初めて聞きました。どういう意味ですか?
逆さバイバイとは、手のひらを自分の方に向けて手を振る仕草のことです [1]
通常のバイバイ vs 逆さバイバイ:
| 通常のバイバイ | 逆さバイバイ |
|---|---|
| 手のひらを相手に向けて振る | 手のひらを自分に向けて振る |
| 「相手から見たらこう見える」を理解している | まだ理解していない |
つまり、逆さバイバイは、自分がバイバイされた時に見た手の形を、そのまま真似しているだけなのです [1]。「相手から見たらどう見えるか」という 視点取得(他者視点)がまだ発達していないことを示しています
逆さバイバイをする理由:
- 2
模倣学習の段階 [2]
- 大人がバイバイするのを見て、その手の形を真似ている
- 自分の視点からの模倣(まだ他者視点に立てない)
- 4
手首の動きの発達途中 [3]
- 手首を外側に返す動きがまだ未熟
- 手のひらを自分に向けるほうが楽
ポイント
- 逆さバイバイは 手のひらを自分に向けて振る仕草 [1]
- 自分が見た手の形をそのまま真似している [1]
- 他者視点に立つ力がまだ発達していないだけ [2]
Q2.「逆さバイバイは自閉スペクトラム症のサインですか?」
——ネットで『逆さバイバイは自閉症の兆候』と書いてあって、とても心配になりました……
その不安、よくわかります。でも、逆さバイバイだけで自閉スペクトラム症と判断することはできません [4]
重要な事実:
- 2
定型発達の子どもも逆さバイバイをする [1]
- 1〜2歳では、多くの子どもが逆さバイバイを経験する
- 発達とともに自然に通常のバイバイに移行する [1]
- 4
自閉スペクトラム症の診断は「一つの行動」では判断しない [5]
- 診断には、社会的コミュニケーション・限定的反復行動の2領域での特徴が必要 [5]
- 逆さバイバイは、診断基準の一項目にすらなっていない
- 6
逆さバイバイをしていても、ほとんどの子どもは定型発達 [4]
つまり、逆さバイバイだけを見て心配する必要はないのです [4]。大事なのは、お子さんの 全体的な発達を見ることです
自閉スペクトラム症で注目すべき点(DSM-5診断基準より) [5]:
A. 社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応の持続的な欠損
- 目が合いにくい(視線が合わせられない、逸らす)
- 指さしをしない(1歳6ヶ月以降も指さしが出ない)
- 他者への関心が薄い(親が部屋を出ても気にしない)
- 共同注意の欠如(「見て見て」と共有しない)
B. 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式
- 特定の物への強いこだわり
- 手をひらひらさせる、体を揺らすなどの常同行動
- 同じ遊びの繰り返し(並べるだけ、回すだけ)
- 感覚過敏・鈍麻(音に過敏、痛みに鈍感など)
逆さバイバイをしていても、目が合う、指さしをする、親の後追いをする、笑いかけると笑い返す、こうした行動があれば、心配は少ないです [6]
ポイント
- 逆さバイバイだけでは自閉スペクトラム症と判断できない [4]
- 定型発達の子どもも多くが経験する [1]
- 診断は 全体像で判断(社会的コミュニケーション・限定的反復行動) [5]
- 目が合う、指さしをするなら心配少ない [6]
Q3.「いつまで逆さバイバイが続いたら心配すべきですか?」
——逆さバイバイは何歳まで続いても大丈夫なんでしょうか?
多くの子どもは2歳前後で通常のバイバイに移行します [1]。ただし、個人差があります
逆さバイバイの自然経過:
| 年齢 | 状況 |
|---|---|
| 1歳〜1歳半 | 逆さバイバイが多い。正常な発達段階 [1] |
| 1歳半〜2歳 | 徐々に通常のバイバイに移行 [1] |
| 2歳以降 | ほとんどの子どもが通常のバイバイをする |
| 3歳以降 | 逆さバイバイが続く場合は相談を検討 [7] |
相談すべきタイミング:
1歳6ヶ月健診で相談すべきケース
- 逆さバイバイ + 目が合いにくい
- 逆さバイバイ + 指さしをしない
- 逆さバイバイ + 言葉が出ない(「ママ」「パパ」などの意味のある言葉)
- 逆さバイバイ + 名前を呼んでも振り向かない
3歳児健診で相談すべきケース
- 3歳過ぎても逆さバイバイが続く [7]
- 他にも気になる発達の遅れがある
ただし、逆さバイバイだけで他に問題がなければ、焦る必要はありません [4]。健診のタイミングで、専門家に全体的な発達を見てもらうのが良いでしょう
ポイント
- 多くの子どもは 2歳前後で通常のバイバイに移行 [1]
- 3歳過ぎても続く場合は相談を検討 [7]
- 逆さバイバイ + 他の気になるサインがあれば健診で相談 [6]
Q4.「他にも誤解されやすい子どもの仕草はありますか?」
——逆さバイバイ以外にも、よく心配される仕草があれば教えてください
はい、いくつかあります。これらも 多くが正常な発達段階です [8]
誤解されやすい仕草①:つま先歩き
よくある心配:
- 「つま先立ちで歩くのは自閉スペクトラム症では?」
実際:
- 1〜3歳では正常な発達段階 [8]
- バランス感覚を養っている、好奇心で試している
- 常につま先歩きではなく、時々する程度なら心配不要
相談すべきケース:
- 常にかかとをつけずにつま先歩き
- 3歳以降もつま先歩きが続く [8]
誤解されやすい仕草②:ぐるぐる回る
よくある心配:
- 「ぐるぐる回るのは常同行動では?」
実際:
- 1〜4歳ではごく普通の遊び [9]
- 前庭感覚(バランス感覚)を刺激して楽しんでいる
- 回ったあとのめまいを楽しむ時期
相談すべきケース:
- 何時間も回り続ける
- 他の遊びをせず、回ることだけに固執 [9]
誤解されやすい仕草③:手をひらひらさせる
よくある心配:
- 「手をひらひらさせるのは常同行動では?」
実際:
- 興奮したとき、嬉しいときに手をひらひらさせるのは正常 [10]
- 感情表現の一つ
相談すべきケース:
- 一日中、延々と手をひらひらさせている
- 名前を呼んでも反応せず、手をひらひらさせ続ける [10]
大事なのは、「その行動だけ」で判断しないことです [4]。お子さんが 目が合う、笑顔を見せる、親の後追いをする、指さしをする、こうした社会性の発達があれば、心配は少ないのです [6]
ポイント
- つま先歩き・ぐるぐる回る・手をひらひらも 多くは正常 [8][9][10]
- 「その行動だけ」で判断しない [4]
- 社会性の発達(目が合う、指さしなど)が重要 [6]
Q5.「もし気になる場合、どこに相談すればいいですか?」
——やっぱり気になるので、相談したいのですが、どこに行けばいいですか?
相談先はいくつかあります。早めに相談することは、決して悪いことではありません [11]
相談先一覧:
タイミング
- 1歳6ヶ月健診
- 1歳6ヶ月
- 3歳児健診
- 3歳
- かかりつけ小児科
- いつでも
- 保健センター
- いつでも
- 児童発達支援センター
- 紹介後
- 小児神経専門医
- 紹介後
内容
- 1歳6ヶ月健診
- 発達全般のチェック。指さし・言葉・社会性を評価
- 3歳児健診
- 言葉・社会性・行動の評価
- かかりつけ小児科
- 発達の心配を相談。必要に応じて専門機関を紹介
- 保健センター
- 保健師に相談。発達相談・心理相談
- 児童発達支援センター
- 発達検査(新版K式発達検査など)・療育
- 小児神経専門医
- 発達障害の診断・フォローアップ
大切なのは、「様子を見ましょう」だけで放置しないこと [11]。もし気になるなら、1歳6ヶ月健診や3歳児健診のタイミングで相談してください。「心配しすぎかな」と思っても、相談して損はありません [11]
早期相談のメリット:
- 2安心できる: 「心配ない」と言われれば安心
- 4早期発見: もし支援が必要なら、早期に開始できる [12]
- 6療育の効果: 早期療育は効果が高い [12]
「相談=発達障害の診断」ではありません [11]。相談して、「今は様子を見ましょう」となるケースも多いです。気軽に相談してください
ポイント
- 気になるなら 1歳6ヶ月健診・3歳児健診で相談 [11]
- かかりつけ小児科・保健センターにも相談できる
- 早期相談は悪いことではない。安心or早期支援につながる [11][12]
まとめ
- 逆さバイバイは 1〜2歳では正常な発達段階。心配不要
- 定型発達の子どもも 多くが経験する
- 診断は 全体像で判断。「一つの行動」では判断しない
- 目が合う、指さしをするなら心配は少ない
- つま先歩き・ぐるぐる回る・手をひらひらも 多くは正常
- 気になるなら 1歳6ヶ月健診・3歳児健診で相談
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