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「あれ見て!」が育つとき、指さしと共同注意が教えてくれること
Vol.123発達

「あれ見て!」が育つとき、指さしと共同注意が教えてくれること

指さしは「言葉の前の言葉」。興味の指さし→要求→叙述→応答と段階的に発達する

発達1〜3歳15
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 12·Q&A 6問収録

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この記事のポイント

  • 指さしは「言葉の前の言葉」。興味の指さし→要求→叙述→応答と段階的に発達する
  • 共同注意(三項関係)は社会性と言語発達の土台。9〜12ヶ月頃から発達する
  • 1歳半で指さしが出ない場合はASDの早期スクリーニング項目。ただし指さし=ASD診断ではない

愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.123

「あれ見て!」が育つとき、指さしと共同注意が教えてくれること

今号のポイント

  1. 2
    指さしは「言葉の前の言葉」。興味の指さし→要求→叙述→応答と段階的に発達する
  2. 4
    共同注意(三項関係)は社会性と言語発達の土台。9〜12ヶ月頃から発達する
  3. 6
    1歳半で指さしが出ない場合はASDの早期スクリーニング項目。ただし指さし=ASD診断ではない

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

1歳半健診で必ず確認される「指さし」。「指さししますか?」と聞かれて、「うちの子、あまりしないかも……」と不安になった経験はありませんか? 指さしは単なる仕草ではなく、お子さんの心の発達を映す鏡です。今回は、指さしの発達段階と、その背景にある共同注意(joint attention)の仕組み、そして1歳半健診で確認される理由をお伝えします。

Q1.「指さしにはどんな種類がありますか?」

——指さしって、ただ何かを指差すことですよね?種類があるんですか?

実は、指さしには4つの段階があり、それぞれが異なる心の発達を反映しています [1][2]

指さしの4つの段階:

段階名称時期の目安意味
第1段階興味の指さし9〜10ヶ月興味のあるものに手を伸ばす・指で示す飛行機を見て「あっ」と指さす [1]
第2段階要求の指さし10〜12ヶ月欲しいもの・やってほしいことを指で伝える高い棚のお菓子を指さして親を見る [2]
第3段階叙述の指さし12〜14ヶ月「あれ見て!」と共有するための指さし犬を見つけて親に「見て!」と指さす [1]
第4段階応答の指さし14〜18ヶ月質問に答える指さし「ワンワンはどれ?」と聞かれて正しく指さす [2]

「特に重要なのは第3段階の「叙述の指さし」です [1][3]。これは"欲しいから指さす"のではなく、"面白いから誰かと共有したい"という気持ちの表れです。自分の体験を他者と分かち合いたいという欲求、これは人間に特有のコミュニケーション能力の芽生えであり、言葉の発達の重要な前段階です [3]。」

指さしの発達チェック:

月齢確認ポイント
9ヶ月興味のあるものに手を伸ばす [1]
10〜12ヶ月欲しいものを指さして親を見る [2]
12〜14ヶ月「あれ見て!」と面白いものを指さして親を見る [1]
14〜18ヶ月「〇〇はどれ?」の質問に指さしで答える [2]

ポイント

  • 指さしには 4つの段階 がある(興味→要求→叙述→応答)[1][2]
  • 叙述の指さし(「あれ見て!」)が最も重要。共有したい気持ちの表れ [1][3]
  • 指さしは 言葉の前の言葉。言語発達の重要な前段階 [3]

Q2.「共同注意とは何ですか?」

——"共同注意"という言葉を聞いたことがあります。指さしとどう関係するのですか?

共同注意(joint attention)とは、自分と他者が同じものに一緒に注意を向けることです。これを理解するには、"三項関係"という概念がポイントになります [3][4]

二項関係と三項関係:

関係説明時期
二項関係自分と対象、または自分と人の2者間赤ちゃんがおもちゃを見る / ママを見る0〜8ヶ月 [4]
三項関係自分・他者・対象の3者間で注意を共有赤ちゃんが犬を指さし、ママを振り返って笑う9〜12ヶ月〜 [3]

「三項関係が成立するためには、赤ちゃんが"自分が見ているもの"を"相手も見ている"と理解することが必要です [3]。これは非常に高度な認知能力です。」

共同注意の2つの方向:

説明

応答的共同注意(RJA)
他者が注意を向けたものに自分も注意を向ける
始発的共同注意(IJA)
自分から他者の注意を引きつける

応答的共同注意(RJA)
ママが「あれ見て」と指さす方向を見る [4]
始発的共同注意(IJA)
赤ちゃんが犬を指さして「あっ」とママを見る [4]

「始発的共同注意(IJA)がより重要です [4][5]。これは"自分から他者と何かを共有しようとする意欲"の表れであり、言葉を使ったコミュニケーションの原型です。指さしは、この始発的共同注意の最も典型的な行動なのです。」

共同注意が言語発達に不可欠な理由 [3][5]:

  1. 2
    言葉の学習場面を作る: ママが「ワンワンだね」と言う時、赤ちゃんと同じ犬を見ていることで、「ワンワン」=犬という結びつきが学べる
  2. 4
    コミュニケーション意欲の基盤: 「伝えたい」気持ちが言葉を生む
  3. 6
    社会的参照: 新しいものに出会った時、ママの表情を見て安全かどうかを判断する

ポイント

  • 共同注意は 自分・他者・対象の三項関係 [3]
  • 始発的共同注意(自分から共有しようとする力)がより重要 [4][5]
  • 共同注意は 言葉を学ぶための土台 [3][5]

Q3.「共同注意はいつ頃から発達するのですか?」

——何ヶ月頃から共同注意ができるようになるんですか?

共同注意は9〜12ヶ月頃から発達し始めますが、その前段階から準備が進んでいます [3][4]

共同注意の発達タイムライン:

発達段階

2〜3ヶ月
社会的微笑
4〜6ヶ月
二者間のやりとり
6〜8ヶ月
視線追従の始まり
9〜10ヶ月
共同注意の芽生え
10〜12ヶ月
始発的共同注意の出現
12〜14ヶ月
叙述の指さし
14〜18ヶ月
応答の指さし
18ヶ月〜
共同注意が安定

行動の例

2〜3ヶ月
人の顔を見て笑う [6]
4〜6ヶ月
ママとの"あーうー"のやりとり [6]
6〜8ヶ月
ママが見ている方向を何となく見る [4]
9〜10ヶ月
ママの指さす方向を見る(応答的共同注意)[4]
10〜12ヶ月
自分から指さして親を見る [3]
12〜14ヶ月
「あれ見て!」の共有 [1]
14〜18ヶ月
「〇〇はどれ?」に答える [2]
18ヶ月〜
さまざまな場面で自然に行う [3]

共同注意の発達を確認するチェックリスト:

月齢チェック項目
9ヶ月大人が見ている方向を何となく見る
10ヶ月大人が指さした方を見る
12ヶ月興味のあるものを指さして大人を振り返る
14ヶ月面白いもの・驚いたものを大人に見せようとする
18ヶ月「〇〇はどれ?」と聞かれて指さしで答える

ポイント

  • 共同注意は 9〜12ヶ月頃から発達 [3][4]
  • その前段階として社会的微笑・二者間のやりとりがある [6]
  • 12ヶ月頃に叙述の指さしが出現するのが目安 [1]

Q4.「共同注意の欠如がASDの早期サインになるのはなぜですか?」

——指さしをしないと自閉スペクトラム症(ASD)かもしれないと聞きました。なぜですか?

これは非常に重要なご質問です。まず強調したいのは、"指さしをしない=ASD"ではないということです [7]。ただし、共同注意の欠如がASDの早期サインの一つであることは、多くの研究で示されています [5][7][8]

なぜ共同注意がASDと関連するのか [5][7]:

「ASDの中核的な特徴は、社会的コミュニケーションと対人的相互反応の困難です [9]。共同注意は、まさにこの社会的コミュニケーションの最も初期の形です。共同注意が育ちにくいと、以下のような影響が出ます。」

ASDで見られる困難

視線追従
他者の視線の方向を追いにくい
指さしの理解
指さされた方向を見にくい
叙述の指さし
「あれ見て!」の共有が少ない
社会的参照
新しい状況でママの表情を確認しにくい

影響

視線追従
社会的情報の取り込みが減る [5]
指さしの理解
言葉と物の結びつきが学びにくい [7]
叙述の指さし
社会的動機づけの弱さ [5]
社会的参照
社会的学習の機会が減る [8]

ASDの早期サインとして注目される行動 [7][8]:

月齢注意すべきサイン
6ヶ月社会的微笑が少ない [8]
9ヶ月声や表情のやりとりが少ない [7]
12ヶ月指さしが出ない。名前を呼んでも振り向かない [7]
14ヶ月興味のあるものを見せに来ない。共有の行動が少ない [8]
16ヶ月有意語がない [7]
18ヶ月見立て遊び(ごっこ遊び)がない [8]
どの月齢でも以前あった言葉やスキルが消えた(退行) [7]

重要な注意点:

「上記のサインが一つあるだけでASDと判断することはできません [7]。ASDの診断には、複数の領域にわたる特徴が持続的に見られることが必要です [9]。指さしが遅い子でも、その後共同注意が発達し、定型発達の経過をたどるケースは多くあります。」

「ただし、複数のサインが重なる場合や、1歳半を過ぎても叙述の指さしが全く出ない場合は、専門家への相談をお勧めします [7]。早期に気づくことは、早期支援の開始につながり、お子さんの発達を助けることが示されています [10]。」

ポイント

  • "指さしをしない=ASD"ではない [7]
  • ただし共同注意の欠如はASDの早期サインの一つ [5][7]
  • 複数のサインが重なる場合に注意。1つだけでは判断できない [7][9]
  • 早期発見は 早期支援につながる [10]

Q5.「1歳半健診で指さしを確認するのはなぜですか?」

——1歳半健診で"指さししますか?"と聞かれますが、なぜそんなに重要なんですか?

1歳半健診で指さしを確認する理由は、指さしが言語発達・社会性発達・認知発達の交差点にあるからです [2][7][11]

1歳半健診で確認される指さし関連項目 [11]:

チェック項目確認の意図
自発的に指さしをするか始発的共同注意の発達 [1]
大人の指さした方を見るか応答的共同注意の発達 [4]
「〇〇はどれ?」に指さしで答えるか理解語彙+応答の指さし [2]
絵本の絵を指差すか興味の共有+認知発達 [11]

指さしが重要な理由、3つの発達領域の指標:

発達領域指さしが反映する力
言語発達理解語彙の広がり、言葉の前段階としてのコミュニケーション [1][3]
社会性発達他者と経験を共有したい気持ち、共同注意 [5]
認知発達対象の認識、象徴機能の芽生え(指で物を"代表"させる)[2]

つまり、指さしという一つの行動を見ることで、言葉・社会性・認知の3つの発達領域を同時にチェックできるのです [2]。これが1歳半健診で指さしが重視される最大の理由です。

「ただし、健診の場で緊張して指さしをしないお子さんもいます [11]。普段の家庭での様子が最も重要です。健診の場で出なくても、家では自然に指さしをしているなら、心配は少ないです。」

ポイント

  • 指さしは 言語・社会性・認知の3領域の交差点 [2]
  • 1歳半健診では 一つの行動で3つの発達をチェック できる [11]
  • 健診で出なくても 家での様子が大切。普段しているなら心配少ない [11]

Q6.「指さしが出ない場合、家庭でできることはありますか?」

——1歳を過ぎたのに、まだ指さしをあまりしません。家でできることはありますか?

共同注意と指さしの発達を促す遊び方があります [3][12]。日常の中で自然に取り入れてみてください。

共同注意を促す関わり方:

やり方

一緒に見る
子どもが見ているものを一緒に見て、「ワンワンだね」と声をかける
大人が指さしのモデルを見せる
散歩中に「あ、ちょうちょだよ!」と指さして見せる
反応を大きく返す
子どもが何かを見て声を出したら、大きく反応する(「ほんとだ!すごいね!」)
絵本で指さし遊び
「ワンワンはどーこだ?」と聞いて、見つけたら一緒に喜ぶ
シャボン玉・風船
動くものを一緒に目で追う遊び
いないいないばあ
予測と共有の楽しさ

ねらい

一緒に見る
三項関係の経験を増やす [3]
大人が指さしのモデルを見せる
指さしの模倣を促す [12]
反応を大きく返す
共有する喜びを強化する [3]
絵本で指さし遊び
応答の指さしを促す [12]
シャボン玉・風船
視線共有・共同注意の基礎 [12]
いないいないばあ
二者間のやりとりの基盤強化 [6]

「教え込む」のではなく「一緒に楽しむ」:

「指さしは教え込むものではなく、コミュニケーションの楽しさの中から自然に生まれるものです [3]。"指さしの練習"と構えるのではなく、お子さんが今興味を持っているものに一緒に注目し、反応を返すことが最も効果的です。」

受診の目安:

  • 12ヶ月を過ぎても指さしがまったくない [7]
  • 14ヶ月を過ぎても他者に物を見せに来ない [8]
  • 18ヶ月を過ぎても叙述の指さし(「あれ見て!」)が出ない [7]
  • 名前を呼んでも振り向かない [7]
  • 目が合いにくい [8]
  • 以前あった指さしやスキルが消えた [7]

「1つでも気になるサインがあれば、かかりつけの小児科や1歳半健診で相談してください [7]。繰り返しになりますが、指さしが遅い=ASDではありません。ただ、気になることがあれば早めに相談することは、お子さんのためになります。」

ポイント

  • 「教え込む」のではなく「一緒に楽しむ」ことが大切 [3]
  • 子どもの関心に合わせて 一緒に見る・反応する [3][12]
  • 12ヶ月で指さしゼロ、18ヶ月で叙述の指さしなし → 相談を [7]

今号のまとめ

  • 指さしには4つの段階があり、「言葉の前の言葉」として非常に重要です
  • 共同注意(三項関係)は社会性と言語発達の土台。9〜12ヶ月頃から発達します
  • 叙述の指さし(「あれ見て!」)は、他者と経験を共有したい気持ちの表れです
  • 1歳半健診で指さしを確認するのは、言語・社会性・認知の3領域を同時にチェックできるから
  • 指さしが出ない=ASDではありません。ただし、複数のサインが重なる場合は相談を
  • 家庭では「教え込む」のではなく「一緒に楽しむ」関わりが最も効果的です

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