コンテンツへスキップ
MINATON
視線が合わない気がする
Vol.381発達

視線が合わない気がする

「目が合いにくい」は発達相談で最も多いテーマの一つ。最新のアイトラッキング研究と外来での実感を整理します

発達・・1〜3歳5
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 4·Q&A 3問収録

プロフィール →

この記事のポイント

  • 視線が合うかは0〜6歳の発達指標の一つだが、単独では診断できない
  • 2024年のライブアイトラッキング研究では、直接視線への反応単独でASDを早期予測するのは難しいと報告
  • 「視線の量」より「視線の使い方(共同注意・叙述の指さし)」が重要

愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.381

視線が合わない気がする

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

「うちの子、なんとなく目が合いにくくて」。この一言から始まるご相談は、発達相談の入口として本当に多いものです。今号は、最新のアイトラッキング研究をもとに「目が合う」ということの意味を整理します。

「目が合わない」はどこまで心配ですか

まず知ってほしいのは、「目が合うかどうか」は単独では診断にはならないということです。赤ちゃんには「興味のあるもの」を見る時期があり、大人の顔よりもテレビや回るおもちゃに夢中になることは、定型発達でもよく起こります [1]。

一方で、2013年のJonesとKlinによる有名な研究では、のちにASDと診断された子どもは生後2〜6ヶ月にかけて他人の目への注視時間が徐々に減っていく傾向が報告されました [2]。この研究は「視線の発達軌跡」に注目した点で画期的でした。

しかし、2024年のRudlingらによるライブアイトラッキング研究(10・14・18ヶ月の169名を追跡、うち35名が後にASDと診断)では、「直接視線への反応量や反応速度」だけでは、ASDを有意に予測できなかったと報告されています [3]。つまり「視線が合う/合わない」という量的な評価だけでは、早期発見には不十分なのです。

ポイント

  • 視線が合うかは重要だが、単独の指標にはならない [1]
  • 生後2〜6ヶ月の「目への注視の減少」はサインの一つ [2]
  • 2024年の最新研究では、直接視線への反応だけでは早期予測が難しい [3]

「視線の量」より大切なもの

最近の発達研究が強調しているのは、「視線をどう使っているか」という質の評価です [3][4]。具体的には次の3点が重視されます。

観点内容
共同注意親が指さしたものを一緒に見るか、見つけたものを親に見せようとするか
叙述の指さし「あれ見て!」と喜びを共有する指さしが12〜14ヶ月で出るか
社会的参照困ったとき・驚いたときに親の顔をチラッと確認するか

これらの「視線のやりとり」は、「目が合う秒数」よりも発達を反映します [4]。外来でお子さんを評価するときも、僕は「じっと見てくるか」ではなく「何かあったときにこちらをチラッと見てくるか」を観察します。

⚠️こんなときは相談を

・呼んでも振り向かない ・指さしがなく、大人の指さした先も見ない ・何かを見つけても、親の顔を振り返って共有しようとしない ・18ヶ月を過ぎても共同注意の行動がほとんど見られない

「うちの子、合うときもあるんですが……」

これもよくあるご相談です。「機嫌のいいときは合う」「テレビに夢中のときは合わない」というのは、むしろ定型発達の子でもよくあります。大事なのは、「呼ばれたとき」「何かを見せたいとき」など、“社会的な文脈”で視線が使えるかどうかです [4]。

コンコン先生
🏥

おかもん先生より

「目が合わないんです」と言って来られたお母さんに、僕が最初にするのは「この絵本を見せてみてください」とお願いすることです。絵本を見ている最中、お子さんが気になるページでお母さんの顔をチラッと見るか。ページをめくる瞬間に視線を交わすか。外来の短い時間でも、その一瞬の「目配せ」があれば、僕はかなり安心します。逆に「じっと見てくる」のに社会的な目配せがない子のほうが、少し気になる、というのが長年の実感です。

今号のまとめ

  • 「目が合う/合わない」は単独では診断できない
  • 2024年の最新研究でも、視線量だけでの早期予測は難しい
  • 共同注意・叙述の指さし・社会的参照という「視線の使い方」のほうが大事
  • 気になるときは、動画を持ってかかりつけ小児科へ

愛育病院 小児科 おかもん先生

本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまの症状についてはかかりつけの小児科医にご相談ください。

この記事は役に立ちましたか?

※ この記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さんの症状が心配な場合は、かかりつけの小児科医にご相談ください。

関連記事