愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.382
指さしをしない
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
1歳半健診で「指さしはしますか?」と聞かれ、「あれ、してないかも……」と不安になるお母さん・お父さんは少なくありません。今号では、最新のジェスチャー研究をもとに「指さしが持つ意味」を整理します。
指さしの種類と出現時期
指さしには、実は3つの種類があり、出現時期も意味も違います [1]。
意味
- 要求の指さし
- 「あれちょうだい」
- 叙述の指さし
- 「あれ見て!」(共有)
- 応答の指さし
- 「どれ?」→「これ」
出現時期
- 要求の指さし
- 10〜12ヶ月
- 叙述の指さし
- 12〜14ヶ月
- 応答の指さし
- 14〜16ヶ月
要求の指さしは「自分がほしいものを取ってもらう」ための道具として使われます。一方、叙述の指さしは「自分の発見を親と一緒に喜びたい」という動機から出るもので、共同注意(joint attention)の中核的な行動です [1]。
ASDの早期サインとして特に重要なのは、叙述の指さしの遅れ・欠如です [1][2]。「欲しいときには指さしする」のに「共有のための指さしが出ない」というパターンは、診察室でも注意深く観察します。
ポイント
- 指さしには「要求」「叙述」「応答」の3種類 [1]
- 叙述の指さしは12〜14ヶ月が目安 [1]
- 「要求あり・叙述なし」のパターンに注意
2024年の最新研究から
2024年のBMC Psychiatry掲載研究(Yuら)は、ASDの家族歴を持つリスクの高い乳児74名を9〜19ヶ月で縦断追跡し、ジェスチャー発達の軌跡を解析しました [2]。
結果、のちにASDと診断された子どもでは次のような特徴が見られました:
- 12〜13ヶ月で社会的ジェスチャー(指さし・見せる等)が減少
- 15〜16ヶ月で「ジェスチャー+2つ以上のコミュニケーションスキル」の統合が遅れる
- 18〜19ヶ月で「ジェスチャー+視線」の統合が少ない
つまり、「指さしが出るかどうか」だけでなく、「指さしと視線・発声がつながっているか」が重要な予測因子になるということです [2]。
・14ヶ月を過ぎても指さしが全く出ない ・要求の指さしはあるが、「見て!」という叙述の指さしがない ・大人が指さした方向を見ない ・バイバイや「ちょうだい」などの身振りも乏しい
外来で見る「指さしゼロ」のお子さん

おかもん先生より
「指さししないんです」と1歳半で来られた子が、診察室では堂々と指さしをしてくれることがあります。親御さんが「え、家ではしないのに!」と驚く場面です。逆に、家ではときどきしているように見えても、診察室の“発見の多い場面”で全く指さしが出ないお子さんもいます。僕は後者のほうを少し気にかけます。外来では、絵本を開いて「わんわんどこ?」と問いかけ、お子さんが指で示すか、そのときお母さんの顔をチラッと見るか、という“一連の動き”を観察するようにしています。
今号のまとめ
- 指さしは12〜14ヶ月が目安で、種類によって意味が異なる
- 叙述の指さし(「見て!」)の遅れが最も重要
- 2024年の研究では、ジェスチャー+視線・発声の統合がASD早期予測因子
- 14ヶ月で全く指さしがなければ、動画を持って受診を
愛育病院 小児科 おかもん先生
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまの症状についてはかかりつけの小児科医にご相談ください。