愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.098
終わりは必ず来ます。その日まで乗り越えるコツ、夜泣き対策
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「毎晩何回も起きて泣きます」「抱っこしないと寝ません」「もう限界です……」。9〜10ヶ月健診の頃、保護者の方の顔に疲労がにじんでいることが少なくありません。夜泣きは赤ちゃんの正常な発達の一部ですが、毎晩続くとご家族の消耗は相当なものです。今回は、夜泣きの正体と、少しでもラクに乗り越えるためのコツをお伝えします。
Q1.「夜泣きはなぜ起こるのですか?」
——昼間はご機嫌なのに、夜になると急に泣き出します。何がいけないんでしょうか?
お母さんが何かいけないわけでは、まったくありません。夜泣きの原因は科学的にも完全には解明されていませんが、いくつかの要因が重なっていると考えられています [1]。まず、赤ちゃんの睡眠サイクルは大人と異なり、レム睡眠(浅い眠り)の割合が高いため、眠りと覚醒の切り替えが頻繁に起こります。次に、9〜10ヶ月頃は分離不安(お母さんがいなくなることへの不安)が発達する時期で、夜中に目が覚めた時にお母さんの姿が見えないと泣いてしまいます [2]。また、歯の萌出に伴う不快感が影響することもあります。つまり、夜泣きは脳の発達に伴う一時的な現象なのです。
ポイント
- 夜泣きはお母さんのせいではない
- 睡眠サイクルの未熟さ、分離不安、歯の萌出が主な要因
- 脳の発達に伴う一時的な現象
Q2.「夜泣きはいつまで続きますか?」
——終わりが見えなくて辛いです……いつまで続くんですか?
多くの場合、夜泣きのピークは9〜10ヶ月頃で、1歳〜1歳半にかけて徐々に収まります [3]。ただし、個人差は大きく、2歳近くまで続くお子さんもいます。Mindellらの大規模調査では、生後6ヶ月の時点で夜間覚醒がある赤ちゃんは約60%ですが、1歳の時点では約30%に減少します [4]。『終わりは必ず来る』ということだけは確かです。目の前の一晩一晩を乗り越えるのは大変ですが、この時期は永遠には続きません。
ポイント
- ピークは9〜10ヶ月頃、多くは1歳〜1歳半で収まる
- 1歳の時点で夜間覚醒があるのは約30%
- 終わりは必ず来る
Q3.「夜泣きの時、どう対応すればいいですか?」
——泣いたらすぐに抱っこするべきですか?それとも少し待ったほうがいいですか?
正解は一つではなく、ご家庭のスタイルに合った方法を見つけることが大切です [5]。ひとつの参考として、段階的な対応をお伝えします。
| ステップ | 対応 |
|---|---|
| ① まず数分待つ | 泣き声を聞いてすぐに駆けつけず、1〜2分様子を見る。自力で再入眠することも |
| ② 声かけ | 「大丈夫だよ」と声をかける。部屋を明るくしない |
| ③ トントン・なでなで | 抱き上げずに、背中やお腹を優しくトントン |
| ④ 抱っこ | ③で落ち着かなければ抱き上げて安心させる |
「また、日中の生活リズムを整えることが夜間の睡眠の質に影響することがわかっています [4]。朝は決まった時間にカーテンを開けて光を浴びる、昼寝の時間と長さを一定にする、就寝前のルーティン(入浴→絵本→おやすみ)を毎日同じ順番で行う。こうした日中の積み重ねが、夜の睡眠に効いてきます。」
ポイント
- 段階的対応:待つ → 声かけ → トントン → 抱っこ
- 日中の生活リズム(朝の光、昼寝のリズム、就寝ルーティン)が夜に効く
- 正解は一つではない。ご家庭に合った方法を
Q4.「夜泣きがひどすぎて私が限界です。助けを求めてもいいですか?」
——毎晩3〜4回起こされて、もう体がもちません。でも、母親なんだから我慢しなきゃと思って……
お母さん自身のメンタルヘルスは、赤ちゃんのケアの前提条件です。我慢することが美徳ではありません [6]。『つらい』と声に出すことは、弱さではなく、責任感の表れです。具体的にできることをまとめます。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| パートナーとの交代制 | 夜間の対応を分担。例:22時〜2時はパパ、2時以降はママ |
| 実家・家族のサポート | 週末だけでも預けて、まとまった睡眠をとる |
| 港区の産後ケア事業 | 産後1年未満のお母さんが利用できるショートステイ・デイケア [7] |
| 港区子ども家庭支援センター | 育児の悩み全般の相談窓口 |
「疲弊した状態での育児は事故のリスクも高まります。ご自分の睡眠と健康を確保することは、赤ちゃんのためでもあるのです。」
ポイント
- お母さんのメンタルヘルスは育児の前提条件
- パートナーとの交代制、実家のサポート、自治体のサービスを活用
- 「つらい」と言うことは弱さではない
Q5.「夜泣きの原因として病気の可能性はありますか?」
——ただの夜泣きではなく、どこか痛いのかもしれないと心配です
夜泣きの多くは生理的なもの(病気ではない)ですが、以下のような場合は病気が隠れている可能性があるため、受診をお勧めします [8]。
| 注意すべきサイン | 考えられる原因 |
|---|---|
| 発熱を伴う | 感染症(中耳炎など) |
| 耳を頻繁に触る | 中耳炎 |
| 嘔吐・下痢がある | 胃腸炎・牛乳アレルギー |
| 皮膚をかきむしる | アトピー性皮膚炎のかゆみ |
| 「いつもと違う泣き方」 | 急性疾患(腸重積など) |
| 体をのけぞらせて泣く | 胃食道逆流 |
「『いつもの夜泣き』と『いつもと違う泣き方』を見分けるのは、毎日お子さんを見ている保護者の方が一番得意です。『何かおかしい』と感じたら、その直感を信じて受診してください。」
ポイント
- 発熱、耳を触る、嘔吐・下痢、かきむしりなどは受診のサイン
- 「いつもと違う泣き方」は注意
- 保護者の直感を信じてよい
今号のまとめ
- 夜泣きは脳の発達に伴う一時的な現象で、お母さんのせいではありません
- ピークは9〜10ヶ月頃、多くは1歳〜1歳半で収まります。終わりは必ず来ます
- 段階的な対応(待つ→声かけ→トントン→抱っこ)と生活リズムの整備が有効です
- お母さん自身の睡眠と健康を確保することが最優先です。助けを求めてください
- 「いつもと違う泣き方」は受診のサイン。保護者の直感を信じてください
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- Vol.74「夜驚症と夜泣きの違い」
- Vol.27「ネントレは脳に有害?」
- Vol.23「夜間受診の判断」
ご質問・ご感想
「夜泣きの時期が一番辛かった」「こうやって乗り越えました」など、体験談やご質問がございましたら、お気軽にお寄せください。同じ悩みの中にいる保護者の方の力になります。
愛育病院 小児科 おかもん先生
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