愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.202
「咳がずっと続きます」、マイコプラズマ肺炎
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
マイコプラズマ肺炎は、学童期の肺炎の原因として最も多い感染症です。「歩く肺炎(walking pneumonia)」とも呼ばれ、全身状態は比較的良好なのに咳が長引くのが特徴です。4年周期で流行するとされ、近年も大きな流行が見られました。今回は、マイコプラズマ肺炎についてお伝えします。
Q1.「マイコプラズマ肺炎とは?」
——マイコプラズマとは何ですか?
マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)は、細菌でもウイルスでもない、最小の自己増殖可能な微生物です [1]。
| 基本情報 | 詳細 |
|---|---|
| 好発年齢 | 5-15歳(学童期に最多) |
| 潜伏期間 | 2-3週間(長い) |
| 流行周期 | 約4年ごとに大流行 |
| 感染経路 | 飛沫感染(咳、くしゃみ) |
| 季節 | 年間を通じて発生(秋〜冬にやや多い) |
| マイコプラズマ肺炎の特徴 |
|---|
| 全身状態は比較的良好(元気そうに見える) |
| 咳が非常に長引く(3-4週間) |
| 最初は乾いた咳→痰がらみの咳に変化 |
| 熱は38℃前後が多い(高熱のこともある) |
ポイント
- 学童期の肺炎の最多原因
- 潜伏期間が2-3週間と長い
- 元気そうに見えるが咳が長引く
Q2.「診断はどうしますか?」
——検査で分かりますか?
いくつかの検査法がありますが、完璧な検査はありません [2]。
| 検査 | 特徴 |
|---|---|
| 迅速検査(イムノクロマト法) | その場で結果が出る。ただし感度は60-70% |
| LAMP法 | 感度が高い。結果は翌日以降 |
| 血液検査(抗体) | ペア血清(2回採血)で確定。急性期は間に合わない |
| 胸部X線 | すりガラス影、浸潤影 |
「学童で咳が長引いて、聴診で雑音があって、レントゲンで影がある。この組み合わせなら、検査を待たずに治療を始めることも多いです。」
ポイント
- 迅速検査は感度が60-70%(陰性でも否定できない)
- 臨床症状で総合的に判断
- 胸部X線が診断の参考になる
Q3.「治療は?」
——普通の抗菌薬で治りますか?
マイコプラズマには通常のペニシリン系・セフェム系抗菌薬は効きません [3]。
| 使用する抗菌薬 | 詳細 |
|---|---|
| マクロライド系 | クラリスロマイシン、アジスロマイシン。第一選択 |
| テトラサイクリン系 | ミノサイクリン。8歳以上で使用 |
| ニューキノロン系 | トスフロキサシン。重症例 |
「日本ではマクロライド耐性が多く、年や地域により報告は50〜90%と幅があります(要確認:最新の流行期データ)。マクロライド系で48〜72時間経っても熱や咳が引かなければ、薬の変更を考えます。」
ポイント
- ペニシリン系・セフェム系は無効
- マクロライド系が第一選択
- マクロライド耐性は日本で高率(報告により50〜90%)
Q4.「家族にうつりますか?」
——きょうだいにうつりますか?
潜伏期間が長いため、家族内感染が起こりやすいです [4]。
| 家族内感染の特徴 | 詳細 |
|---|---|
| 感染率 | 家族内の二次感染率は約50% |
| 潜伏期間 | 2-3週間後に発症 |
| 予防 | 手洗い、咳エチケット |
| 出席停止 | 法的な出席停止期間はない |
「上の子が発症して2〜3週間後に下の子が発症する、というパターンをよく見ます。咳が出ている間はマスクを。」
ポイント
- 家族内感染率は約50%
- 2-3週間後に発症するパターン
- 咳が出ている間はマスクを
Q5.「合併症はありますか?」
——肺炎以外の症状も出ますか?
まれですが、肺外合併症が見られることがあります [5]。
頻度
- 皮膚症状
- 比較的多い
- 中耳炎
- やや多い
- 脳炎・脳症
- まれ
- 心筋炎
- まれ
- 溶血性貧血
- まれ
症状
- 皮膚症状
- 発疹、多形紅斑
- 中耳炎
- 耳の痛み
- 脳炎・脳症
- けいれん、意識障害
- 心筋炎
- 胸痛、動悸
- 溶血性貧血
- 貧血症状
「合併症は全体の約10-20%に見られますが、多くは軽症です。ただし、けいれんや意識障害が見られたら緊急受診してください。」
ポイント
- 肺外合併症が約10-20%に見られる
- 皮膚症状が比較的多い
- けいれん・意識障害は緊急受診
今号のまとめ
- マイコプラズマ肺炎は学童期の肺炎の最多原因
- 元気そうに見えるが咳が3-4週間続く
- ペニシリン系は無効。マクロライド系が第一選択
- 家族内感染率は約50%。咳エチケットが重要
- マクロライド耐性は高率(報告により50〜90%)。改善なければ薬の変更を
あわせて読みたい
- Vol.201「肺炎」
- Vol.200「気管支炎」
- Vol.155「抗菌薬の正しい使い方」
- Vol.199「クループ症候群」
ご質問・ご感想
「咳が長引いてマイコプラズマと言われました」「家族にうつって困っています」など、ご経験やご質問がございましたら、お気軽にお寄せください。
愛育病院 小児科 おかもん先生
本メルマガの内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまの症状についてはかかりつけの小児科医にご相談ください。