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「留学前に必要?」、髄膜炎菌ワクチンと侵襲性髄膜炎菌感染症
Vol.148予防接種

「留学前に必要?」、髄膜炎菌ワクチンと侵襲性髄膜炎菌感染症

侵襲性髄膜炎菌感染症は致死率10%、後遺症率20%の非常に重篤な感染症

予防接種全年齢8
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 8·Q&A 5問収録

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この記事のポイント

  • 侵襲性髄膜炎菌感染症は致死率10%、後遺症率20%の非常に重篤な感染症
  • 日本では稀だが、寮生活・海外留学・大規模イベント参加時にリスクが上昇
  • 4価髄膜炎菌ワクチン(MenACWY)は任意接種で、渡航前・寮生活前に推奨

愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.148

「留学前に必要?」、髄膜炎菌ワクチンと侵襲性髄膜炎菌感染症

今号のポイント

  1. 2
    侵襲性髄膜炎菌感染症は致死率10%、後遺症率20%の非常に重篤な感染症
  2. 4
    日本では稀だが、寮生活・海外留学・大規模イベント参加時にリスクが上昇
  3. 6
    4価髄膜炎菌ワクチン(MenACWY)は任意接種で、渡航前・寮生活前に推奨

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

「留学先の大学から髄膜炎菌ワクチンの接種証明を求められました」「寮生活を始めるのですが、必要ですか?」、こうしたご相談が増えています。

髄膜炎菌感染症は日本ではまれですが、発症した場合の致死率が高く進行が極めて速い感染症です [1]。今回は、髄膜炎菌ワクチンについて詳しくお伝えします。

Q1.「髄膜炎菌感染症ってどんな病気ですか?」

——髄膜炎って聞いたことはありますが、髄膜炎菌は初めて聞きます

髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)はグラム陰性双球菌で、侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)と呼ばれる重篤な病態を引き起こします [1]

侵襲性髄膜炎菌感染症の特徴 [1][2]:

項目内容
病原体髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)
血清群A, B, C, W, X, Y群など。日本ではB群とY群が多い [2]
主な病型髄膜炎(頭痛・頸部硬直)、菌血症/敗血症(急速進行)
致死率約10%(適切な治療を行っても) [1]
後遺症率約20%(難聴、四肢切断、脳障害など) [1]
進行速度発症から24〜48時間で死亡しうる [1]

この感染症の怖さは進行の速さです。朝は元気だった人が、夜には重篤な状態になることがあります [1]。日本での発生は年間10〜40例程度ですが [2]、一度発症すると非常に深刻です

ポイント

  • 致死率約10%、後遺症率約20%の重篤な感染症 [1]
  • 発症から24〜48時間で致死的になりうる [1]
  • 日本では年間10〜40例程度だが、発症時は非常に深刻 [2]

Q2.「どんな人がリスクが高いのですか?」

——日本では少ないのに、なぜワクチンが必要なのですか?

特定の状況で感染リスクが高まります [3]

リスクが高い状況 [3][4]:

リスク因子説明
寮生活共同生活での密接な接触。大学寮で特にリスク上昇 [3]
海外留学欧米・アフリカ髄膜炎ベルトでは発生率が高い
大規模イベント音楽フェス、スポーツ大会、巡礼(ハッジ等) [4]
補体欠損症先天性の免疫異常
無脾症・脾摘後脾臓がない、または摘出後
エクリズマブ使用補体阻害薬使用者

特に注意が必要なのは10代後半〜20代前半です [3]。この年代は咽頭への保菌率が最も高く、寮生活や活発な社会活動で感染リスクが高まります。米国では多くの大学が入学条件としてワクチン接種を求めています

ポイント

  • 寮生活・海外留学・大規模イベントでリスク上昇 [3][4]
  • 10代後半〜20代前半が最もリスクが高い年代 [3]
  • 米国の大学では入学条件としてワクチン接種を要求 [3]

Q3.「ワクチンの種類と接種スケジュールを教えてください」

——どのワクチンを打てばいいですか?

日本で接種できる髄膜炎菌ワクチンは主に以下の通りです [5]

髄膜炎菌ワクチンの種類 [5]:

対象血清群

メンクアッドフィ(MenACWY-TT)
A, C, W, Y群
B群髄膜炎菌ワクチン(Bexsero/Trumenba)
B群

日本での位置づけ

メンクアッドフィ(MenACWY-TT)
任意接種。2歳以上に接種可能。国内で流通している4価髄膜炎菌ワクチン(メナクトラは2024年3月に販売終了し、メンクアッドフィに切り替わった)
B群髄膜炎菌ワクチン(Bexsero/Trumenba)
日本では未承認(2026年時点)。国内で接種することはできない

接種スケジュール [5][6]:

対象推奨
海外留学前渡航2週間以上前に1回接種
寮生活開始前入寮前に1回接種
リスク持続者5年ごとに追加接種を検討
米国CDCの推奨11〜12歳で初回、16歳で追加(米国在住の場合) [6]

日本では任意接種(自費)です。費用は約2〜3万円程度ですが、留学先の要件や渡航先の流行状況に応じて接種を検討してください [5]

ポイント

  • 日本では任意接種(自費) [5]
  • 留学・寮生活の2週間以上前に接種 [5]
  • MenACWY(4価)が主に使用される [5]

Q4.「ワクチンの効果と安全性は?」

——効果はどのくらいありますか?副反応は?

高い有効性と良好な安全性が確認されています [6][7]

ワクチンの効果 [6][7]:

項目内容
有効性A, C, W, Y群による侵襲性感染症を約85〜100%予防 [6]
効果持続接種後3〜5年で抗体が低下。リスク持続者は追加接種を検討 [7]
集団免疫効果接種率が高い国では保菌率低下→非接種者も保護

主な副反応 [7]:

副反応頻度
接種部位の痛み約40〜50%
倦怠感・頭痛約20〜30%
発熱約5%
重篤な副反応極めてまれ

最も多いのは接種部位の痛みで、1〜2日で改善します [7]。思春期のお子さんでは注射後の血管迷走神経反射(気分不良・失神)が起きることがあるため、接種後30分は院内で安静にしてください

ポイント

  • 85〜100%の有効性 [6]
  • 副反応は主に接種部位の痛み(1〜2日で改善) [7]
  • 接種後30分は院内で安静に [7]

Q5.「髄膜炎菌感染症の初期症状を教えてください」

——もし感染した場合、早期に気づくポイントはありますか?

初期症状は風邪に似ているため見分けが難しいですが、急速に悪化するのが特徴です [1][8]

髄膜炎菌感染症の症状の進行 [1][8]:

段階症状
初期(0〜数時間)発熱、頭痛、倦怠感(風邪と区別困難)
進行期(数〜12時間)高熱、激しい頭痛、嘔吐、頸部硬直、点状出血斑
重症期(12〜24時間)意識障害、紫斑(急速に拡大する出血斑)、ショック

すぐに救急受診すべきサイン [8]:

サイン説明
点状出血斑・紫斑皮膚にガラスのコップを押し当てても消えない赤〜紫の斑点
急速な全身状態の悪化数時間で急にぐったりする
頸部硬直首を前に曲げられない
光過敏光をまぶしがる

皮膚の点状出血斑・紫斑が最も重要なサインです [8]。風邪のような症状の後に皮膚に消えない赤い斑点が出現したら、夜間でも迷わず救急受診してください。髄膜炎菌感染症は時間との戦いです

ポイント

  • 初期は風邪に似ているが急速に悪化 [1][8]
  • 皮膚の点状出血斑・紫斑が最も重要なサイン [8]
  • 疑わしい場合は夜間でも迷わず救急受診 [8]

まとめ

  • 侵襲性髄膜炎菌感染症は致死率約10%、後遺症率約20%の重篤な感染症 [1]
  • 寮生活・海外留学・大規模イベント参加時にリスク上昇 [3][4]
  • 日本では任意接種(自費)。留学前・寮生活前に接種推奨 [5]
  • MenACWY(4価ワクチン)で85〜100%の有効性 [6]
  • 点状出血斑・紫斑+急速な全身状態悪化は緊急受診サイン [8]

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愛育病院 小児科 おかもん先生

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