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「大人が麻疹にかかる時代」、親世代のワクチン歴を確認する
Vol.377予防接種

「大人が麻疹にかかる時代」、親世代のワクチン歴を確認する

1972-1990年生まれの免疫ギャップ、抗体検査の意味、追加接種の判断基準、妊娠中の接種禁忌を解説します

予防接種全年齢6
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 5·Q&A 問収録

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この記事のポイント

  • 2025年の日本の麻疹患者の中央年齢は24歳。いま感染しているのは大人
  • 1972-1990年生まれは定期接種が1回のみ。母子手帳で確認する価値が高い
  • 妊娠中はMRワクチン禁忌。接種後4週間は妊娠を避ける必要がある

愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.377

「大人が麻疹にかかる時代」、親世代のワクチン歴を確認する

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

「麻疹は子どもの病気」。その認識はもう古いです。2025年第1〜19週の日本での麻疹届出例の年齢中央値は24歳、四分位範囲14〜34歳。患者の79%が2回接種を完了していません [1]。いま守らなきゃいけないのは、お子さんよりも、送り迎えをしている親世代だったりします。今号では、自分の接種歴をどう確認し、どう判断するか、外来でよく聞かれる順に整理します。

日本には「接種の空白世代」がある

日本の麻疹ワクチン制度は、この50年でめまぐるしく変わりました [2]。

1972年(昭和47年)10月より前は、定期接種制度そのものがありませんでした。この世代は自然感染で免疫を持った人が多いのですが、流行に遭わなかった人は無防備なままです。

1972年10月〜1990年4月の生まれは、定期接種が1回のみの世代です。つまり制度上「1回しか打っていない可能性が高い」層です。前号でお伝えしたとおり、1回接種では約5〜7%が免疫獲得に失敗します [3]。

1990年4月〜2000年4月生まれは、制度の移行期。2回接種に変わっていく過程で、接種機会を逃した人が少なくありません。2008年から5年間の特例で、中学1年生と高校3年生への追加接種機会が設けられました [2]。

2000年4月以降生まれは、定期接種2回が制度化された世代。ここから下は、ほぼ安心できます。

💡自分の世代を知る

1990年以前に生まれた方は、ほぼ全員が「要確認」です。1回接種で終わっている可能性が高い。母子手帳を開いてみる価値があります。

母子手帳が見つからない、記録がない、そんなときは

まず、実家に母子手帳があるか確認してみてください。これが一番確実です。1期・2期ともに記録があれば、基本的には追加は不要です。

母子手帳が見つからない、記録が不鮮明、という場合の選択肢は2つあります [4]。

一つは「迷わず追加接種」です。すでに免疫があった場合でも、追加でMRワクチンを打つことによる害はほぼありません。「もう1回増えるだけ」と考えて、自費で受けるのが一番シンプルです。費用は自治体や医療機関によりますが、6,000〜10,000円程度が目安です。

もう一つは「抗体検査を受けてから判断」です。採血で麻疹IgG抗体を調べ、基準値以上なら追加不要、不足していれば接種する、という流れです。健康診断のオプションや内科で対応している医療機関があります。費用は4,000〜6,000円程度。抗体検査と接種を合わせると結局1回の接種料金と変わらなくなるので、「記録がある程度残っていて、念のため確認したい」という場合に向きます。

コンコン先生
🏥

おかもん先生より

外来で親御さんの接種歴の話になったとき、多いのは「私、はしかかかった気がするんですけど」という答えです。ただ、子ども時代の記憶は曖昧で、風疹や突発性発疹と混同していることもよくあります。自然感染の既往を確実に示すには抗体検査が必要ですが、そこまでやらずに「迷ったら追加接種」のほうがシンプルで確実です。私自身、医療者なので職場の抗体検査で確認していますが、数字が基準を下回って追加接種した同僚は何人もいます。記憶はあてになりません。

妊娠中は接種禁忌。その前後の注意

MRワクチンは生ワクチンなので、妊娠中は接種できません [5]。

具体的には、

  • 妊娠中の接種は原則禁忌
  • 接種後4週間(28日)は妊娠を避ける(理論上のリスクとして。ACOG推奨)
  • もし妊娠と知らずに接種してしまった場合、妊娠の中断を考慮する必要はない(実際の胎児への影響は確認されていない)
  • 産後は授乳中でも接種可能。退院前・産褥期の接種が推奨される

妊娠を予定している方で接種歴が不明な場合は、妊娠する前に接種を済ませておくのが理想です。麻疹にかかった妊婦さんは早産や流産のリスクが上がることがわかっています [5]。ワクチンのリスクと、実際にかかるリスク、比較すればやるべきことは明らかです。

海外渡航、医療従事者、保育関係者は優先度が高い

次のどれかに当てはまる人は、接種歴の確認と追加接種の優先度が特に高くなります。

  • 海外渡航予定がある(出発4週間以上前に動く)
  • 医療機関・保育施設・学校などで働いている
  • 1歳未満の乳児と同居している
  • 妊娠を計画している
  • 抗がん剤治療などで周囲に免疫不全者がいる

逆に接種できないのは、妊娠中の方、重度の免疫不全がある方、過去にMRワクチンで重いアレルギー反応を起こした方です [5]。こうした方は周囲の集団免疫に守られる必要があるので、家族全員で打つことがより重要になります。

まとめ

  • 2025年の日本の麻疹患者は成人中心。大人の接種歴こそが鍵
  • 1972〜1990年生まれは1回接種のみの可能性が高く、要確認
  • 母子手帳がなければ抗体検査か「迷わず追加接種」の2択
  • 妊娠中は禁忌。接種後4週間は妊娠を避ける
  • 海外渡航・医療従事者・乳児と同居・妊娠予定の方は優先度が高い

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※ この記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さんの症状が心配な場合は、かかりつけの小児科医にご相談ください。

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