愛育病院 小児科おかもん だより Vol.25
【通説検証】「インフルエンザB型はA型より軽い」
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
今回は「通説検証」コーナーです。インフルエンザの季節になると、外来でこんな会話をすることがあります。
「検査でB型って言われたんです。B型は軽いって聞いたので、少し安心しました」
SNSやネット記事でも「A型は重症化しやすい、B型は軽い」という情報をよく見かけます。でも、本当にそうでしょうか。エビデンスを確認してみます。
通説: 「インフルエンザB型はA型より軽い」
判定: 誤り(小児では必ずしも軽症ではなく、むしろリスクが高い場合もある)
エビデンスを見てみましょう
1. 小児のインフルエンザ関連死亡、B型の割合が高い
エビデンス強度: Strong
米国CDCは2004〜2012年の8シーズンにわたり、小児のインフルエンザ関連死亡830例を分析しました [1]。型が判明した症例のうちB型は150例で、うち72例(48%)が基礎疾患のない健康な子どもでした。
重要なポイント:
- B型による小児死亡は決してまれではなく、流行シーズンによっては全体のかなりの割合を占める
- B型で亡くなった子どもの48%(72/150)は基礎疾患のない健康な子ども。健康児でも命に関わりうる [1]
- 非パンデミックシーズンほど、B型が占める相対的な割合が大きくなる
この研究は、「B型だから安心」という考え方は医学的に誤りであることを示しています。
2. 脳症・神経合併症のリスク、A型とB型で差はない
エビデンス強度: Strong
日本国内でも重要なデータがあります。国立感染症研究所の報告によれば、2009〜2019年の10シーズンで、小児のインフルエンザ脳症はA型・B型ともに発生しており、型による脳症リスクの明確な差は認められていません [2]。
実際の症例報告でも:
- B型インフルエンザ脳症の重症例は複数報告されている
- けいれん重積、意識障害などの神経症状はA型・B型ともに起こりうる
- B型でも急性壊死性脳症(ANE)の報告がある [3]
「B型は脳症になりにくい」という根拠はなく、どちらの型でも神経合併症のリスクはあるのです。
3. 症状の違い、「B型は軽い」ではなく「A型と違う」
エビデンス強度: Emerging
確かに、A型とB型では臨床的な特徴に違いがあります。しかし、それは「軽い・重い」ではなく「症状の出方が異なる」という理解が正確です。
A型の特徴:
- 突然の高熱(39〜40℃)
- 全身倦怠感が強い
- 筋肉痛・関節痛が顕著
- 流行が短期間で急速に広がる
B型の特徴:
- 発熱がやや緩やか、または微熱のこともある
- 消化器症状(嘔吐・下痢・腹痛)がより多い [4]
- 呼吸器症状(咳・鼻水)が強く出ることも
- 熱が下がった後も咳や倦怠感が長引く傾向
つまりB型は「軽い」のではなく「症状の出方が違う」。消化器症状が強い分、子どもにとって辛いことも多いです。
じゃあ、どうすればいい?
インフルエンザB型と診断されたときに知っておくべきポイントです:
1. 「B型だから安心」と油断しない
- B型でも重症化・脳症のリスクはある
- 特に以下のような危険サインがあればすぐ受診:
- けいれん(特に5分以上続く、繰り返す)
- 意識がおかしい(呼びかけに反応しない、目つきがおかしい)
- 呼吸が苦しそう(肩で息をする、顔色が悪い)
- 水分が全く摂れない、おしっこが半日以上出ない
2. 抗インフルエンザ薬の判断は型で決めない
- 「B型だから薬は不要」という考え方は誤り
- 発症48時間以内であれば、A型・B型いずれにも抗インフルエンザ薬は有効
- 使うかどうかは、お子さんの年齢・基礎疾患・症状の強さで判断
- 詳しくはVol.002 インフルエンザの薬と異常行動を参照
3. B型特有の症状に注意
- 嘔吐・下痢が強い場合は脱水に注意
- 経口補水液(OS-1など)をこまめに少量ずつ
- 熱が下がっても咳が長引くことがあるため、学校・保育園の出席停止基準(解熱後2日経過)を守る
4. 予防は変わらない
- インフルエンザワクチンはA型・B型の両方に効果がある
- 特に現在の4価ワクチン(A型2株+B型2株)はB型にもしっかり対応
- 詳しくはVol.003 インフルエンザワクチン徹底ガイドを参照
おかもん先生のひとこと
外来で「インフルB型です」とお伝えすると、「よかった、B型なら安心ですね」とおっしゃる保護者の方がいます。お気持ちはわかります。ネットで「B型は軽い」と書いてある記事が多いですから。
でも、小児科医が一番恐れるのは「B型だから大丈夫」と油断して重症化のサインを見逃すことです。CDCのデータでも、B型で亡くなった子どもの48%は基礎疾患のない健康な子どもでした [1]。脳症のリスクもA型と変わりません。
「A型は怖い、B型は軽い」ではなく、「A型もB型もどちらも注意が必要」 、これが正しい理解です。型によって安心するのではなく、お子さんの症状をしっかり観察し、危険サインがあればすぐに受診してください。それが何より大切です。
今月の通説検証まとめ
通説 判定 ひとことで言うと 「インフルB型はA型より軽い」 誤り B型死亡例の48%は健康な子ども。脳症リスクもA型と同等 [1][2]
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