愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.87
子どもの花粉症、知っておきたい5つのQ&A
今号のポイント
- 2花粉症は2歳から発症例あり。小学生の30%超が花粉症と報告されており、低年齢化が進んでいる
- 4風邪との見分け方は「鼻水の性状」「目のかゆみ」「持続期間」がカギ
- 6舌下免疫療法(シダキュア)は5歳以上で開始可能。根本的な体質改善が期待できる唯一の治療法
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
今回のテーマは子どもの花粉症です。
「こんなに小さい子でも花粉症になるの?」と驚かれる方は多いですが、答えは「はい、なります」。近年、花粉症の発症年齢はどんどん低下しており、2〜3歳で発症するケースも珍しくありません [1]。
春先に鼻水やくしゃみが続くと「風邪かな?」と思いがちですが、実は花粉症だった、というケースは外来で本当に多いです。今号では、子どもの花粉症について保護者の方からよくいただく5つの質問にお答えします。
Q1.「子どもでも花粉症になるんですか? 何歳から発症しますか?」
——うちの子はまだ2歳なんですが、春になると鼻水がずっと出ています。まさか花粉症ってことはないですよね?
実は、2歳でも花粉症を発症することはあります。かつては「花粉症は大人の病気」というイメージがありましたが、現在では低年齢化が著しく進んでいます [1][2]
——えっ、2歳でもですか?
はい。日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会の全国疫学調査によると、スギ花粉症の有病率は以下のように報告されています [1]
スギ花粉症有病率
- 0〜4歳
- 約3.8%
- 5〜9歳
- 約30.1%
- 10〜19歳
- 約49.5%
- 全年齢
- 約38.8%
備考
- 0〜4歳
- 2歳以降の発症が多い [1]
- 5〜9歳
- 小学校低学年で急増 [1]
- 10〜19歳
- 約半数が花粉症 [1]
- 全年齢
- 国民の約4割 [1]
特に注目すべきは、5〜9歳で約30%、10代では約50%という高い有病率です [1]。これは20年前と比較して約2倍に増加しています [2]。花粉の飛散量の増加、大気汚染、食生活の変化(衛生仮説)など複数の要因が指摘されています [2]
——こんなに多いんですね……。でも、小さい子だと花粉症だとわかりにくくないですか?
おっしゃる通りです。特に2〜3歳のお子さんは、自分で『目がかゆい』『鼻がむずむずする』と伝えられません。鼻を頻繁にこする、目をゴシゴシこする、くしゃみを連発する、鼻づまりで口呼吸になる、こうしたサインに注目してください [3]。次のQ2で、風邪との見分け方を詳しくお伝えしますね
ポイント
- 花粉症は2歳から発症しうる。低年齢化が進んでいる [1]
- 小学生の約30%、10代の約50%がスギ花粉症 [1]
- 小さい子は鼻こすり、目こすり、口呼吸がサイン [3]
Q2.「風邪と花粉症、どう見分ければいいですか?」
——春先に鼻水が出ると、毎回『風邪かな? 花粉症かな?』と迷います。見分け方はありますか?
とても良い質問です。風邪と花粉症にはいくつかの違いがあります。以下の比較表を参考にしてください [3][4]
風邪
- 鼻水の性状
- 最初は透明 → 数日で黄色〜緑に変化
- くしゃみ
- 時々
- 鼻づまり
- 片側が多い
- 目のかゆみ
- なし〜軽度
- のどの痛み
- あり
- 発熱
- あり(37.5℃以上)
- 持続期間
- 7〜10日で自然に治る
- 時間帯
- 一日中
- 天候との関係
- 関係なし
花粉症
- 鼻水の性状
- ずっと透明でサラサラ [3]
- くしゃみ
- 連発する(5回以上) [3]
- 鼻づまり
- 両側が多い [3]
- 目のかゆみ
- 強い(こする、充血) [4]
- のどの痛み
- なし〜軽度
- 発熱
- なし [4]
- 持続期間
- 花粉シーズン中ずっと続く(数週間〜数ヶ月) [4]
- 時間帯
- 朝と夕方に悪化しやすい [3]
- 天候との関係
- 晴れ・風の強い日に悪化 [3]
最もわかりやすい違いは3つです。①鼻水がずっと透明でサラサラ、②目のかゆみがある、③2週間以上続く。この3つが揃えば、花粉症の可能性が高いです [3][4]
——風邪だと鼻水の色が変わるんですね
はい。風邪のウイルス感染では、白血球が戦った結果として鼻水が黄色〜緑色に変化しますが、花粉症はアレルギー反応なので鼻水はずっと透明のままです [3]。ただし、花粉症のお子さんが風邪を併発することもありますので、判断に迷ったらかかりつけ医に相談してくださいね。血液検査(特異的IgE検査)で花粉への感作状態を確認することもできます [4]
ポイント
- 鼻水が透明でサラサラ + 目のかゆみ + 2週間以上持続 → 花粉症を疑う [3][4]
- 風邪は7〜10日で治る。花粉症はシーズン中ずっと続く [4]
- 判断に迷ったらかかりつけ医で血液検査も可能 [4]
Q3.「子どもの花粉症、どんな治療がありますか?」
——花粉症だとわかったら、どんな治療をするんですか? 子どもに薬を飲ませるのは心配です……
お気持ちはわかりますが、花粉症はお子さんのQOL(生活の質)に大きな影響を与えます。鼻づまりによる睡眠障害、集中力低下、学業成績への影響が報告されていますので、適切な治療が大切です [5]。治療は年齢と症状に応じて選択します [4][5]
| 治療法 | 対象年齢 | 薬の例 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 第2世代抗ヒスタミン薬(内服) | 生後6ヶ月〜 | ザイザルシロップ(レボセチリジン)、アレグラDS(フェキソフェナジン)、クラリチンDS(ロラタジン)など | 眠気が少ない。第一選択 [4][5] |
| 抗ロイコトリエン薬(内服) | 1歳〜 | シングレア/キプレス(モンテルカスト) | 鼻づまりに有効。喘息合併児に特に有用 [5] |
| 鼻噴霧用ステロイド | 製品により5歳〜または12歳〜 | アラミスト(5歳以上)、ナゾネックス(12歳以上)など | 鼻症状に最も効果的。局所作用で全身への影響はほぼなし [4][5] |
| 抗アレルギー点眼薬 | 制限なし | パタノール(オロパタジン)、アレジオン点眼など | 目のかゆみ・充血に [4] |
| 舌下免疫療法 | 5歳以上 | シダキュア(スギ)、ミティキュア(ダニ) | 唯一の根本治療。Q4で詳しく解説 [6] |
——ステロイドの点鼻薬は安全なんですか?
はい、鼻噴霧用ステロイドは局所で作用するため、全身への影響はほとんどありません [5]。塗り薬のステロイドと同じで、正しく使えばとても安全です。花粉症の鼻症状に対しては最も効果的な治療とされています [4][5]。ただし、お子さんの年齢や鼻の大きさにより使いにくいこともありますので、かかりつけ医と相談してください
また、花粉の飛散開始前(目安として2月上旬)から抗ヒスタミン薬を飲み始める初期療法も有効です [4]。シーズン中の症状が軽くなることが報告されていますので、毎年花粉症がひどいお子さんは、早めの受診をおすすめします
ポイント
- 第2世代抗ヒスタミン薬が第一選択。眠気が少ないタイプを選ぶ [4][5]
- 鼻噴霧用ステロイドは局所作用で安全。鼻症状に最も効果的 [5]
- 花粉飛散前からの初期療法でシーズン中の症状を軽減 [4]
- 目の症状には抗アレルギー点眼薬を併用 [4]
Q4.「舌下免疫療法って何ですか? 子どもにもできますか?」
——『舌下免疫療法』という治療を聞いたことがあるんですが、どういうものですか? 子どもにもできますか?
舌下免疫療法(SLIT: Sublingual Immunotherapy)は、花粉症の根本的な体質改善を目指す唯一の治療法です [6][7]。アレルギーの原因物質(スギ花粉のエキスなど)を少量ずつ毎日舌の下に投与し、体を花粉に慣れさせていく治療です
——花粉のエキスを飲むんですか? 大丈夫なんですか?
はい。最初は少量から始め、体を徐々に慣らしていきます。薬は舌の下に置いて1分間保持した後に飲み込みます。5歳以上のお子さんから開始可能です [6]
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 薬の名前 | シダキュア(スギ花粉用)[6] |
| 対象年齢 | 5歳以上(薬を舌下に1分保持できることが条件)[6] |
| 投与方法 | 毎日1回、舌の下に薬を置き1分保持 → 飲み込む [6] |
| 治療期間 | 3〜5年(長期の継続が必要)[6][7] |
| 効果 | 70〜80%の患者で症状が改善 [7] |
| 開始時期 | スギ花粉飛散期を避けて6〜12月に開始 [6] |
| 副作用 | 口の中のかゆみ・腫れ(軽度)が多い。重篤な副作用はまれ [6][7] |
| 費用 | 保険適用。3割負担で月約1,500〜2,000円程度 |
——3〜5年も続けるんですね。本当に効果はありますか?
大規模臨床試験の結果では、シダキュアによる舌下免疫療法で70〜80%の患者さんに症状の改善が認められています [7]。また、治療終了後も効果が持続することが報告されています [7]。抗ヒスタミン薬などの対症療法は『その場の症状を抑える』だけですが、舌下免疫療法は『花粉に反応しにくい体質に変える』ことを目指す点が大きな違いです
お子さんの場合、毎日の服薬を嫌がらないか、舌の下に薬を1分間保持できるかがポイントになります。5歳のお子さんでも上手にできている方は多いですが、お子さんの性格にもよりますので、かかりつけ医と相談してみてください。なお、ダニアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法(ミティキュア)もあります [6]
ポイント
- 舌下免疫療法は花粉症の根本治療(体質改善)を目指す唯一の方法 [6][7]
- 5歳以上で開始可能。シダキュア(スギ花粉用)を毎日投与 [6]
- 3〜5年の継続が必要だが、70〜80%で症状改善 [7]
- 花粉シーズンを避けて6〜12月に開始 [6]
Q5.「日常生活でできる花粉対策はありますか?」
——薬以外に、家庭でできる花粉対策があれば教えてください
もちろんです。花粉症の治療は薬物療法 + 花粉回避の二本柱です [8]。花粉の体への侵入を減らすだけで、症状はかなり楽になります。以下の対策を実践してみてください [8][9]
外出時の対策
| 対策 | ポイント |
|---|---|
| マスクの着用 | 花粉の吸入量を約70%減少させる [8] |
| メガネ・ゴーグル | 花粉用メガネで目への花粉侵入を約65%減少 [8] |
| 帽子 | 髪への花粉付着を防ぐ |
| ツルツルした素材の上着 | ウール・フリースは花粉が付着しやすい。ナイロンやポリエステルを選ぶ [9] |
| 花粉飛散が多い時間帯を避ける | 11〜14時、17〜19時がピーク [8] |
| 花粉情報をチェック | 環境省花粉観測システム(はなこさん)等を活用 |
帰宅時の対策
| 対策 | ポイント |
|---|---|
| 玄関で上着を払う | 花粉を室内に持ち込まない [9] |
| 手洗い・うがい・洗顔 | 顔についた花粉を洗い流す [9] |
| 鼻うがい(鼻洗浄) | 鼻腔内の花粉を洗い流す。市販の鼻洗浄器を使用 [8] |
| すぐに着替える | 花粉がついた服のまま過ごさない |
室内の対策
| 対策 | ポイント |
|---|---|
| 窓を開ける時間を制限 | 飛散ピーク時は閉めておく。開ける場合は10cm程度にしてレースカーテンをする [9] |
| 空気清浄機 | HEPAフィルター搭載のものが効果的。玄関やリビングに設置 [9] |
| こまめな掃除 | 床の花粉は掃除機よりも先に濡れ拭きで除去 [9] |
| 布団は外に干さない | 布団乾燥機を使用。やむを得ず干す場合は取り込み時に表面を払う [9] |
洗濯の工夫
| 対策 | ポイント |
|---|---|
| 室内干し | 花粉シーズン中は原則室内干し [9] |
| 乾燥機の活用 | コインランドリーの乾燥機も有効 |
| 柔軟剤の使用 | 静電気を防ぎ花粉の付着を軽減 [9] |
| 外干しする場合 | 取り込み時にしっかり払い、さらに掃除機をかける |
すべてを完璧にする必要はありませんが、マスク、帰宅時の手洗い・着替え、室内干しの3つは特に効果が大きいです。お子さんが保育園・幼稚園から帰ってきたら、まず手を洗って着替えることを習慣にしましょう [8][9]
ポイント
- マスクで花粉の吸入を約70%カット [8]
- 帰宅したら手洗い・洗顔・着替えを習慣に [9]
- 花粉シーズンは洗濯物の室内干し + 布団乾燥機 [9]
- 掃除は掃除機の前に濡れ拭きで花粉を除去 [9]
今号のまとめ
- 花粉症は2歳から発症しうる。小学生の約30%がスギ花粉症で、低年齢化が進んでいる [1][2]
- 風邪と花粉症の見分け方: 透明な鼻水 + 目のかゆみ + 2週間以上持続なら花粉症を疑う [3][4]
- 治療は抗ヒスタミン薬 + 点鼻ステロイド + 点眼薬が基本。年齢に応じて選択 [4][5]
- 舌下免疫療法(シダキュア)は5歳以上で開始可能。70〜80%に効果あり。唯一の根本治療 [6][7]
- 日常の対策はマスク、帰宅時の手洗い・着替え、室内干しが特に重要 [8][9]
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