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「手のひらと口の中に発疹が……」、手足口病の正しい知識
Vol.39感染症

「手のひらと口の中に発疹が……」、手足口病の正しい知識

手足口病の症状と家庭でのケア

感染症6〜12ヶ月・1〜3歳・3〜6歳16
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 13·Q&A 5問収録

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この記事のポイント

  • 手足口病は夏に流行し、5歳以下の乳幼児に多い。ほとんどは軽症で自然治癒する
  • 手のひら・足の裏・口の中の発疹が特徴。口内炎が痛くて食べられないことも
  • 特効薬はなく、対症療法が基本。まれに髄膜炎などの合併症に注意

愛育病院 小児科おかもん だより Vol.39

「手のひらと口の中に発疹が……」、手足口病の正しい知識

今号のポイント

  1. 2
    手足口病は夏に流行し、5歳以下の乳幼児に多い。ほとんどは軽症で自然治癒する
  2. 4
    手のひら・足の裏・口の中の発疹が特徴。口内炎が痛くて食べられないことも
  3. 6
    特効薬はなく、対症療法が基本。まれに髄膜炎などの合併症に注意

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

「手のひらと口の中に水ぶくれができました。食事が痛くて食べられません」、これは手足口病の典型的な症状です。

手足口病は、夏に流行する代表的な感染症で、保育園や幼稚園で毎年流行します [1]。ほとんどは軽症で自然に治りますが、口内炎の痛みで食事がとれないことや、まれに髄膜炎などの合併症を起こすことがあります [2]。

今回は、手足口病について知っておいてほしい症状・経過・ホームケアをお伝えします。

Q1.「手足口病ってどんな病気ですか? どのくらい多いんですか?」

——保育園で手足口病が流行っています。どんな病気なんですか?

手足口病は、エンテロウイルスというウイルスによる感染症で、手のひら、足の裏、口の中に水疱性の発疹ができるのが特徴です [1]。英語では"Hand, Foot, and Mouth Disease (HFMD)"といいます

手足口病の基本情報:

項目内容
原因ウイルスコクサッキーウイルスA16型、A6型、エンテロウイルス71型など [1][3]
好発年齢5歳以下、特に2歳以下が約90% [1]
流行時期夏(6月〜8月)がピーク [1][4]
潜伏期間3〜6日 [1]
患者数日本で流行年には約50〜100万人と推定(小児科定点報告)[4]
再感染原因ウイルスが複数あるため、何度でも感染する [3]

——夏に多いんですね。なぜ夏なんですか?

エンテロウイルスは高温多湿な環境を好むため、夏に流行します [1]。ただし、近年は秋まで流行が続くこともあります [4]。保育園や幼稚園での集団生活で広がりやすく、毎年夏になると外来が手足口病の患者さんであふれます

——何度もかかることがあるんですか?

はい。手足口病を起こすウイルスは10種類以上あり、それぞれに対する免疫は別々です [3]。つまり、一度かかっても、別のウイルスで再び感染します。ただし、同じウイルスには免疫ができるので、まったく同じ型には通常かかりません [3]

——10種類もあるんですか! その中でも危険なウイルスはありますか?

はい。エンテロウイルス71型(EV71)は、他のウイルスより重症化しやすく、髄膜炎、脳炎、急性弛緩性麻痺(きゅうせいしかんせいまひ=手足に力が入らなくなる病気)などの合併症を起こすことがあります [2][5]。特にアジアでは、EV71による重症例や死亡例が報告されています [5]

ポイント

  • 手足口病の原因は エンテロウイルス(10種類以上) [1][3]
  • 5歳以下、特に2歳以下が約90%。夏(6〜8月)がピーク [1][4]
  • 何度でも感染する(原因ウイルスが複数あるため)[3]
  • エンテロウイルス71型(EV71)は重症化リスク高 [2][5]

Q2.「手足口病の症状と経過を教えてください」

——どんな症状が出ますか? どうやって診断するんですか?

手足口病の診断は臨床症状(発疹の場所と形)で行います [1]。特徴的な3つの症状があります

手足口病の典型的な症状 [1][2][6]:

① 発熱(約30〜50%)

  • 微熱(37〜38℃台)が1〜2日続く
  • 発熱しないこともある
  • 高熱(39℃以上)はまれ
  • ※頻度は原因ウイルスの血清型により異なる [3]

② 口の中の発疹(ほぼ100%)

最も特徴的で、最も困る症状 [6]:

  • 口の中に2〜3mmの水疱や潰瘍(アフタ)ができる
  • 場所: 舌、頬の内側、上あご、歯茎
  • 非常に痛い
  • 食事・水分がとれなくなる
  • 2〜3日がピーク、7〜10日で治癒

③ 手足の発疹(約90%)

  • 手のひら、足の裏に特徴的な発疹
  • 手足の甲、指の間、お尻、膝にも出ることがある(特にCA6型では広範囲に分布する非典型例あり [3])
  • 形: 2〜5mmの楕円形、水疱性(水ぶくれ)
  • 周囲が赤い
  • 痛みやかゆみは少ない
  • 7〜10日で自然に消える

発疹の出現順序 [6]:

  1. 2
    口の中 → 手足より先に出ることが多い
  2. 4
    手のひら・足の裏
  3. 6
    手足の甲、お尻、膝など

——口の中が痛くて、うちの子は何も食べられません。水も飲めなくて……

手足口病で最もつらいのが口内炎の痛みです [6]。特に小さなお子さんは、痛みで飲食を拒否してしまいます。脱水にならないよう、工夫が必要です(Q3で詳しく説明します)

手足口病の経過 [1][2]:

  • 潜伏期間: 3〜6日
  • 発症: 発熱(出ないこともある)→ 口内炎 → 手足の発疹
  • ピーク: 発症後2〜3日
  • 回復: 7〜10日で自然治癒
  • 発疹の後: 手足の発疹が消えた後、1〜2ヶ月後に爪がはがれることがある [7](痛みなし、自然に治る)

——爪がはがれるんですか!?

はい。特にコクサッキーウイルスA6型に感染した後、1〜2ヶ月後に手足の爪が根元からはがれることがあります [7]。これは『爪甲脱落症(そうこうだつらくしょう)』といって、手足口病の後遺症のひとつです。見た目は心配になりますが、痛みはなく、新しい爪が生えてくるので心配ありません [7]

ポイント

  • 典型的な3症状: 発熱(微熱)、口内炎、手足の発疹 [1][2]
  • 口内炎が最も困る症状。非常に痛く、飲食困難に [6]
  • 発疹は手のひら・足の裏が特徴。痛み・かゆみは少ない [1]
  • 7〜10日で自然治癒 [1]
  • 1〜2ヶ月後に爪がはがれることあり(痛みなし、自然治癒)[7]

Q3.「手足口病の治療はどうするんですか? 痛みで食べられないときは?」

——手足口病と診断されたら、どんな治療をするんですか?

残念ながら、手足口病に効く特効薬(抗ウイルス薬)はありません [1][2]。治療の基本は対症療法です。特に口内炎の痛みの管理と脱水予防が重要です [6]

手足口病の治療とホームケア [1][2][6][8]:

① 口内炎の痛みの管理

薬物療法:

  • アセトアミノフェン(カロナール): 痛み止め・解熱剤
  • 口腔内用軟膏: デキサメタゾン軟膏、アズレンスルホン酸ナトリウムなど
  • うがい薬: アズレンスルホン酸ナトリウム(ハチアズレなど)

注意: イブプロフェンは使用可能ですが、胃腸障害があるためアセトアミノフェンが第一選択 [8]

② 食事の工夫(最重要)

食べやすいもの [6][8]:

OK(痛みが少ない):

  • 冷たいもの: アイスクリーム、プリン、ゼリー、ヨーグルト
  • 柔らかいもの: おかゆ、うどん(細かく切る)、豆腐
  • のどごしのよいもの: 茶碗蒸し、卵豆腐
  • 栄養補助食品: 経口補水液、栄養ドリンク(子ども用)

NG(痛みが増す):

  • 酸っぱいもの: オレンジジュース、トマト、みかん
  • しょっぱいもの: 塩辛い食事、味噌汁(濃い味)
  • 辛いもの: カレー、香辛料
  • 硬いもの: せんべい、パンの耳
  • 熱いもの: 熱いスープ、ラーメン

——アイスクリームを食べさせてもいいんですか?

はい。手足口病の時は冷たいものが一番食べやすいです [6]。栄養バランスより、まず口から何か入れることを優先してください。アイスクリームでもゼリーでも、食べられるものでOKです

③ 水分補給(脱水予防)

  • こまめに少量ずつ飲ませる
  • 冷たい麦茶、イオン飲料、経口補水液
  • ストローを使うと飲みやすいことも
  • 8時間以上おしっこが出ない場合は受診 [8]

④ 入浴

  • 熱がなく、元気なら入浴OK [1]
  • 発疹は感染力があるが、お風呂で悪化することはない
  • タオルは共用しない

⑤ 保育園・幼稚園

  • 発熱がなく、食事がとれて元気なら登園可能 [9]
  • 学校保健安全法では出席停止期間の定めなし [9]
  • ただし、口内炎がひどい間は食事がとれず、集団生活が難しい

——抗生物質は飲まなくていいんですか?

手足口病はウイルス感染症なので、抗生物質(細菌をやっつける薬)は効きません [1]。不要な抗生物質は副作用や薬剤耐性菌のリスクを高めます。細菌感染の合併(とびひなど)がない限り、抗生物質は不要です

ポイント

  • 手足口病に特効薬はなく、対症療法が基本 [1][2]
  • 痛み止め(アセトアミノフェン)と食事の工夫が重要 [6][8]
  • 冷たいものが食べやすい。アイスクリーム、ゼリー、プリンOK [6]
  • 酸っぱいもの、しょっぱいもの、熱いものはNG [8]
  • 抗生物質は効かない(ウイルス感染症のため)[1]
  • 発熱なし、食事がとれて元気なら登園可能 [9]

Q4.「合併症はありますか? 注意すべきことは?」

——手足口病で怖い合併症はありますか?

手足口病はほとんどが軽症で自然治癒します [1]。しかし、まれに中枢神経系の合併症を起こすことがあり、特にエンテロウイルス71型(EV71)に注意が必要です [2][5]

手足口病の合併症 [2][5][10]:

① 無菌性髄膜炎(最も多い)

  • 発生頻度: 数百〜数千人に1人 [10]
  • 症状: 頭痛、嘔吐、首が硬い(項部硬直)
  • ウイルスが髄膜(脳を覆う膜)に感染
  • ほとんどは後遺症なく治る [10]

② 脳炎・脳症(まれ)

  • 症状: 意識障害、けいれん、異常行動
  • EV71に多い [5]
  • 重症化すると後遺症が残ることも

③ 急性弛緩性麻痺(AFM)(まれ)

  • 症状: 手足の麻痺、筋力低下
  • EV71やエンテロウイルスD68に関連 [11]
  • ポリオに似た症状

④ 心筋炎(非常にまれ)

  • 症状: 胸痛、呼吸困難、顔色不良
  • EV71に関連 [5]

⑤ 脱水

  • 口内炎の痛みで飲食できず、脱水になる
  • 最も注意すべき合併症 [8]

——どんなサインが出たら、すぐ病院に行くべきですか?

以下のサインがあれば、すぐに受診してください [2][8][10]

すぐに受診すべきサイン [2][8][10]:

緊急(救急車):

  • 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しない
  • けいれん(5分以上、または繰り返す)
  • 呼吸困難(ゼーゼー、唇が紫色)
  • ぐったりしている

当日受診:

  • 高熱(39℃以上)が2日以上続く
  • 頭痛がひどい、何度も嘔吐する
  • 首が硬い(あごが胸につかない)
  • 8時間以上おしっこが出ない(脱水)
  • 手足に力が入らない(麻痺)

翌日受診:

  • 口内炎がひどくて、まったく食べられない
  • 発疹が化膿している(とびひの合併)

——どのくらいの頻度で合併症が起こるんですか?

日本での手足口病の合併症は非常にまれです。無菌性髄膜炎が最も多いですが、それでも数百〜数千人に1人程度です [10]。脳炎や心筋炎はさらにまれです。ただし、アジアの一部の国(中国、台湾など)では、EV71による重症例が多く報告されており、日本でも注意が必要です [5]

ポイント

  • ほとんどは軽症で自然治癒 [1]
  • まれな合併症: 無菌性髄膜炎、脳炎、急性弛緩性麻痺 [2][5][10]
  • エンテロウイルス71型(EV71)は重症化リスク高 [5]
  • 意識障害、けいれん、頭痛・嘔吐、8時間以上尿なし → すぐ受診 [2][8][10]
  • 脱水が最も注意すべき合併症 [8]

Q5.「手足口病はうつりますか? どうやって予防すればいいですか?」

——手足口病はうつりますか? 兄弟にうつらないようにできますか?

手足口病は感染力が強く、特に保育園や幼稚園で広がりやすいです [1]。完全に予防するのは難しいですが、感染リスクを減らす方法はあります

感染経路 [1][12]:

① 飛沫感染

  • 咳やくしゃみで飛び散る飛沫を吸い込む

② 接触感染

  • 水疱の内容物、便に含まれるウイルスに触れる
  • おもちゃ、タオルを介して感染

③ 糞口感染

  • 便の中にウイルスが排泄される [12]
  • おむつ替え後の手洗い不足で感染
  • 症状が治まった後も2〜4週間、便中にウイルスが排泄される [12]

——症状が治まった後も感染力があるんですか!?

はい。これが手足口病の感染予防の難しさです。発疹が消えても、便中には2〜4週間ウイルスが排泄され続けます [12]。そのため、完全に感染を防ぐのは不可能です。学校保健安全法でも出席停止期間が定められていないのは、このためです [9]

家庭内での感染予防 [1][12]:

① 手洗い(最重要)

  • 石けんで15秒以上こすり洗い
  • 特におむつ替え後、食事前、トイレ後
  • アルコール消毒は手足口病ウイルスに効きにくい [12]

② おむつ替えの注意

  • 使い捨て手袋を使う
  • おむつはビニール袋に入れて密閉
  • おむつ替え後は石けんで手洗い

③ タオル・食器の共用を避ける

  • 特にハンドタオル、バスタオル
  • 食器は別々に洗う

④ おもちゃの消毒

  • 塩素系消毒液(次亜塩素酸ナトリウム)で拭く
  • アルコールは効きにくい [12]

⑤ 便の処理

  • 回復後も2〜4週間は注意 [12]
  • おむつ替え後の手洗いを徹底

——予防接種やワクチンはないんですか?

現在、日本で使える手足口病ワクチンはありません [1]。中国ではEV71ワクチンが開発・承認されていますが、日本ではまだ承認されていません [13]。手足口病を起こすウイルスが10種類以上あるため、すべてをカバーするワクチン開発は困難です [13]

登園・登校の目安 [9]:

  • 発熱がなく、食事がとれて元気なら登園可能
  • 学校保健安全法では出席停止期間の定めなし [9]
  • ただし、園によっては「発疹が消えるまで」など独自の基準がある場合も
  • 回復後も便中にウイルスが排泄されるため、長期の出席停止は意味がない [9]

ポイント

  • 手足口病は感染力が強い(飛沫・接触・糞口感染)[1][12]
  • 症状が治まった後も2〜4週間、便中にウイルス排泄 [12]
  • 手洗いが最も重要(特におむつ替え後)[12]
  • アルコール消毒は効きにくい。塩素系消毒液を使う [12]
  • ワクチンはまだない [1][13]
  • 発熱なし、食事OK、元気なら登園可能 [9]

まとめ

  • 手足口病はエンテロウイルスが原因で、夏に流行。5歳以下に多い [1][4]
  • 典型的な症状: 口内炎、手のひら・足の裏の発疹 [1][2]
  • 口内炎が最もつらい。冷たいもの(アイスクリーム、ゼリー)が食べやすい [6][8]
  • 特効薬はなく、対症療法。抗生物質は効かない [1][2]
  • まれな合併症: 無菌性髄膜炎、脳炎、急性弛緩性麻痺 [2][5][10]
  • 意識障害、けいれん、頭痛・嘔吐、8時間以上尿なし → すぐ受診 [2][8][10]
  • 手洗いが最重要。症状消失後も2〜4週間は便中にウイルス排泄 [12]

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