愛育病院 小児科おかもん だより Vol.28
「子どもが吐いた!」、感染性胃腸炎のホームケア完全ガイド
今号のポイント
- 2吐いた直後は10〜30分ほど胃を休ませる。焦って一気飲みは禁物
- 4水分再開は少量頻回が鉄則。スプーン1杯から始める
- 6吐き気止めや下痢止めは原則使わない。脱水のサインを見逃さないことが大切
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
夜中に突然「ウッ」という声で目が覚める。保護者にとって、子どもが吐いた瞬間はいちばん慌てる場面のひとつです。水分をあげていいのか、吐き気止めはどうか、病院に行くべきか、疑問が次々に浮かびます。
今回は、感染性胃腸炎、いわゆる「おなかの風邪」のホームケアについて、現時点のエビデンスをもとにまとめます。
Q1.「感染性胃腸炎って何ですか? ノロウイルスとは違うんですか?」
——よく「おなかの風邪」って言われますが、正確には何なんでしょう?
感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌が胃腸に感染して嘔吐・下痢・腹痛を起こす病気の総称です [1]
主な原因ウイルス:
特徴
- ノロウイルス
- 嘔吐が激しい。感染力が非常に強い
- ロタウイルス
- 白っぽい水様便。乳幼児に多い
- アデノウイルス
- 下痢が主体。熱が出ることも
- エンテロウイルス
- 夏に多い。手足口病の原因にも
流行時期
- ノロウイルス
- 冬(11〜3月)
- ロタウイルス
- 冬〜春
- アデノウイルス
- 通年
- エンテロウイルス
- 夏
ノロウイルスは感染性胃腸炎の代表例です。今回はノロに限らず、胃腸炎全般に共通するホームケアをまとめます
ポイント
- 感染性胃腸炎はウイルス・細菌による胃腸感染の総称 [1]
- ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどが代表的
- ホームケアの基本は原因にかかわらずほぼ同じ
Q2.「吐いた後、いつから水分をあげていいですか?」
——さっき子どもが吐きました。すぐに水分をあげたほうがいいですか?
気持ちはよくわかります。ですが、吐いた直後は少し胃を休ませてあげてください。焦って飲ませるとまた吐いてしまい、かえって脱水が進みます [2]
吐いた直後の対応(時系列):
Step 1: 吐いた直後(目安10〜30分)
- 水も含めていったん休ませる
- 口が気持ち悪そうなら濡れたガーゼで口を湿らせる程度に
吐いた直後の胃は非常に敏感です。すぐ飲ませるとまた吐く、というループに入りやすい。短時間だけ待ってから少量ずつ再開するのがコツです [3]
Step 2: 少量から水分再開
- まずはスプーン1杯(5mL)程度から
- 5〜10分おきに、吐かなければ少しずつ増やす
推奨される飲み物(優先順):
- 2経口補水液(OS-1など) [4]
- 脱水の予防・治療に最適
- 糖分と電解質のバランスが理想的
- 4母乳・ミルク(乳児の場合)
- 無理に経口補水液に変える必要はない
- 6麦茶・白湯
- 経口補水液がない場合
- 8りんごジュース(薄めたもの)
- 米国小児科学会も推奨 [5]
避けるべき飲み物:
- スポーツドリンク: 糖分が多すぎて逆効果
- 炭酸飲料: 胃を刺激して嘔吐を誘発
- オレンジジュースなど酸味の強いもの: 胃への刺激が強い
Step 3: 吐かなければ徐々に増量
| 時間 | 量の目安 |
|---|---|
| 開始時 | スプーン1杯(5mL) |
| 10分後 | スプーン2杯(10mL) |
| 20分後 | 大さじ1杯(15mL) |
| 30分後 | 30mL |
| 1時間後 | 50mL |
ポイントは少量頻回です。一度に多く飲ませると吐いてしまいます。焦らず、少しずつが鉄則です [2]
ポイント
- 吐いた直後は10〜30分ほど胃を休ませる [2]
- 再開はスプーン1杯から。少量頻回が鉄則 [3]
- 経口補水液が最適 [4]
- スポーツドリンク・炭酸飲料は避ける
Q3.「吐き気止めや下痢止めは使っていいですか?」
——子どもが何度も吐いて辛そうです。吐き気止めは使えませんか?
辛そうだと薬を使いたくなりますよね。ただ、感染性胃腸炎では吐き気止めや下痢止めは原則使いません [6]
なぜ使わないのか?
1. 吐き気止め(制吐薬)
- 小児への使用はガイドライン上推奨されていない [6]
- 一部の吐き気止め(プリンペラン、ナウゼリンなど)は副作用のリスク(錐体外路症状など)がある
- 例外: ナウゼリン坐薬は、医師の判断で使われることがある
2. 下痢止め(止痢薬)
- 感染性胃腸炎の下痢は、ウイルス・細菌を体外に排出するための防御反応 [7]
- 下痢を無理に止めると、ウイルスや細菌が腸内に留まり、かえって症状が長引く
- 細菌性胃腸炎(サルモネラ、カンピロバクターなど)では合併症のリスクが上がる可能性
嘔吐も下痢も、体が悪いものを出そうとしている反応です。無理に止めると、かえって回復が遅れることがあります [7]。辛いのは事実ですが、水分管理で乗り切るのが基本です
使えるお薬:
- 整腸剤(ビオフェルミンなど): 腸内環境を整える。使用OK
- 解熱剤(アセトアミノフェン): 高熱で辛い場合のみ
- 亜鉛製剤: 下痢の期間を短縮する可能性(WHOも推奨) [8]
ポイント
- 吐き気止め・下痢止めは原則使わない [6][7]
- 嘔吐・下痢は体の防御反応
- 整腸剤はOK。解熱剤は高熱時のみ
Q4.「食事はどうすればいいですか?」
——吐かなくなったら、何を食べさせればいいですか?
食事の再開のタイミングと内容も、回復を左右します
食事再開のタイミング:
- 吐かずに水分が摂れるようになったら食事を再開してOK [9]
- 「丸1日絶食」は不要。早期の食事再開が推奨されている
推奨される食事(段階的に):
Phase 1: 吐き止まり後すぐ(軽食)
| おすすめ | 理由 |
|---|---|
| おかゆ・うどん | 消化が良い |
| バナナ | カリウム補給、消化が良い |
| 食パン(トーストしたもの) | 脂質が少ない |
| すりおろしりんご | 食物繊維とペクチンが腸に優しい |
Phase 2: 症状が落ち着いてきたら
- 鶏ささみ・白身魚
- 卵(ゆで卵、卵とじ)
- じゃがいも・かぼちゃ
Phase 3: 完全に治ったら
- 通常の食事に戻す
避けるべき食事(回復期):
- 脂っこいもの(揚げ物、ラーメン、カレーなど)
- 乳製品(牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム)
- 一時的な乳糖不耐症が起こりやすい [10]
- 甘いもの(ケーキ、チョコレートなど)
- 柑橘類(みかん、オレンジ)
BRAT dietという言葉を聞いたことがあるかもしれません。Banana、Rice、Applesauce、Toastの頭文字で、かつては胃腸炎の定番食でした。ただ現在は栄養が偏ると考えられており、米国小児科学会も推奨していません。早めに普段の食事に戻したほうが回復が早いとされています [9]。無理に制限しすぎず、食べられるものを食べさせて大丈夫です
ポイント
- 水分が摂れたら早期に食事再開してOK [9]
- おかゆ・うどん・バナナ・トーストから
- 脂っこいもの・乳製品は回復期は避ける [10]
- 無理に制限しすぎない
Q5.「脱水のサインを教えてください。どうなったら病院に行くべきですか?」
——脱水が心配です。どうなったら病院に行くべきですか?
脱水のサインは覚えておいてください。受診のタイミングを逃さないための手がかりです [11]
脱水のサイン(すぐ受診):
| サイン | 説明 |
|---|---|
| おしっこが6時間以上出ない | 最も重要なサイン [11] |
| 口の中が乾いている | 唾液が少ない、唇がカサカサ |
| 泣いても涙が出ない | 体液が不足している証拠 |
| 目がくぼんでいる | 中等度以上の脱水 |
| 皮膚をつまんでも戻りにくい | 皮膚のハリがない |
| ぐったりしている | 活気がない、反応が鈍い |
| 意識がおかしい | 呼びかけに反応しない |
すぐに救急受診が必要なサイン:
- 意識がおかしい(呼びかけに反応しない、目線が合わない)
- けいれん
- 呼吸が苦しそう
- 血便(赤い便、黒いタール便)
- 激しい腹痛(お腹を抱えて泣き叫ぶ)
- 吐血(コーヒーのような茶色い嘔吐物)
翌朝受診でOKのケース:
- 嘔吐・下痢はあるが、水分が少しずつ摂れている
- おしっこが出ている
- 機嫌が悪くない、時々笑顔が見られる
迷ったら小児救急電話相談(#8000)に電話してください [12]。看護師や小児科医が対応してくれます
ポイント
- おしっこが6時間以上出ないは要受診 [11]
- 泣いても涙が出ない、口が乾いている、ぐったりも脱水のサイン
- 意識異常・けいれん・血便はすぐ救急受診
- 迷ったら#8000に相談 [12]
まとめ
- 吐いた直後は10〜30分ほど胃を休ませる。焦って一気飲みは禁物
- 水分再開はスプーン1杯から少量頻回。経口補水液が最適
- 吐き気止め・下痢止めは原則使わない。体の防御反応を妨げる
- 食事は水分が摂れたら早期に再開。おかゆ・うどん・バナナから
- 脱水のサイン(おしっこ6時間出ない、涙が出ない)を見逃さない
- 迷ったら#8000に相談
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