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「40度!すぐ解熱剤?」、発熱と解熱剤のよくある誤解3つ
Vol.11感染症

「40度!すぐ解熱剤?」、発熱と解熱剤のよくある誤解3つ

子どもの発熱と解熱剤にまつわる誤解を正す

感染症全年齢15
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 8·Q&A 5問収録

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この記事のポイント

  • 感染症による発熱で脳にダメージが出ることは通常ない。体のサーモスタットが41度前後で上昇を制限する
  • 解熱剤は「病気を治す薬」ではなく「つらさを和らげる薬」。使う基準は体温の数字ではなくお子さんの様子
  • 厚着で汗をかかせるのは危険。受診の判断は体温よりも「いつもと違う」全身状態で決める

愛育病院 小児科おかもん だより Vol.11

「40度!すぐ解熱剤?」、発熱と解熱剤のよくある誤解3つ

今号のポイント

  1. 2
    感染症による発熱で脳にダメージが出ることは通常ない。体のサーモスタットが41度前後で上昇を制限する
  2. 4
    解熱剤は「病気を治す薬」ではなく「つらさを和らげる薬」。使う基準は体温の数字ではなくお子さんの様子
  3. 6
    厚着で汗をかかせるのは危険。受診の判断は体温よりも「いつもと違う」全身状態で決める

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

今回のテーマは発熱と解熱剤です。

お子さんが急に高い熱を出すと、誰でも焦りますよね。でもまず安心してください。お子さんの体には、熱から自分を守る仕組みがしっかり備わっています。「40度もある、脳がやられてしまうのでは」「すぐに解熱剤を使わなきゃ」「布団をかけて汗をかかせれば治る」、こうした「常識」は、実はどれもよくある誤解なんです。

今号では、外来で特に多い3つの誤解を取り上げ、エビデンスに基づいた正しい知識をお伝えします。

Q1.「40度の熱で脳がやられることはありますか?」

——昨夜39.8度まで熱が上がって、もう少しで40度になりそうでした。おばあちゃんに電話したら『脳に障害が出るから早く熱を下げなさい!』って言われて……。本当に高い熱で脳がダメージを受けるんですか?

これは、外来で最もよくいただく質問のひとつです。結論から言いますと、感染症による発熱で脳にダメージが出ることは、まずありません

——えっ、40度でもですか?

はい。脳にダメージが出る可能性があるのは、体温が42℃を超えた場合です [1]。しかし、感染症による発熱(風邪やインフルエンザなど)で体温が42℃まで上がることは、通常ありません。なぜなら、体には「体温のサーモスタット」があるからです。脳の視床下部(ししょうかぶ=体温や食欲などを調節する脳の司令塔)という部分が体温の上限をコントロールしていて、感染症による発熱では41℃程度で頭打ちになるように調節されています [1]

——体の中に温度調節の仕組みがあるんですね。じゃあ42度を超えるのはどういう時?

42℃を超えるのは、熱中症のように体の温度調節が破綻した場合です。たとえば真夏に車の中に閉じ込められるようなケースですね。こうした場合は体のサーモスタットが機能しなくなり、体温が際限なく上がってしまいます。感染症の発熱とはメカニズムがまったく違うんです。1980年にSchmittが『Fever Phobia(発熱恐怖症)』という論文で、多くの保護者が低い熱でも脳へのダメージを心配していることを報告しました [2]。20年後の追跡調査でも、この誤解はほとんど変わっていなかったとされています [3]。つまり、親の不安は40年以上前からずっと続いているのですが、科学的には心配する必要はないのです

——40年前から……!もっと早く知りたかったです

ポイント

  • 感染症の発熱で脳にダメージが出ることは通常ない [1]
  • 脳のサーモスタットが41℃前後で体温上昇を制限する [1]
  • 42℃を超えるのは熱中症など体温調節が破綻した場合のみ
  • 「高熱=脳がやられる」は40年以上続く誤解 [2][3]

Q2.「解熱剤はいつ使えばいいですか? 37.5度で使っていいですか?」

——熱が出たらすぐ解熱剤を飲ませたほうがいいんですよね? 37.5度を超えたら使うものだと思っていたんですが……

ここに大きな誤解があるんです。解熱剤は「病気を治す薬」ではありません。解熱剤の目的は、ただひとつ、お子さんのつらさを和らげることです [4]

——治す薬じゃない……ということは、熱を下げても治りが早くなるわけではない?

その通りです。アメリカ小児科学会(AAP)の2011年の公式見解でも、『発熱のあるお子さんへの治療の目的は、体温を正常化させることではなく、全体的な快適さを改善すること』と明記されています [4]。さらに同じ報告で、『発熱は感染症と闘うための生理的なメカニズムであり、発熱そのものが病気の経過を悪化させるというエビデンスはない』とも述べられています [4]。つまり発熱は、体がウイルスや細菌と戦っている「証拠」でもあるんです

——じゃあ、38度でも元気なら使わなくていい?

はい。お子さんが元気に遊んでいたり、水分がとれていたり、眠れているなら、38度でも39度でも解熱剤を使う必要はありません。逆に、37.5度でもぐったりして水分がとれない、眠れない時は使ってあげてください。判断基準は「体温計の数字」ではなく、「お子さんのつらさ」です。日本小児科学会のガイダンスでも、38.5℃以上を目安としつつも、元気で水分がとれていれば解熱剤は必ずしも必要ではないとされています [5]

——数字じゃなくて、子どもの様子を見ればいいんですね

そうです。ちなみに、お子さんに使える解熱剤はアセトアミノフェン(カロナールなど)が第一選択です。体重1kgあたり10〜15mgを4〜6時間おきに投与します [4]。イブプロフェンは生後6ヶ月以上のお子さんに使え、体重1kgあたり5〜10mgを6〜8時間おきに投与します [4]。いずれも体重に基づいた量を計算することが大切で、年齢だけで判断するのは不正確です。なお、生後3ヶ月未満の赤ちゃんの発熱は重症感染症のサインの可能性があるため、解熱剤を使う前に必ず受診してください [5]

ポイント

  • 解熱剤は病気を治す薬ではなく、つらさを和らげる薬 [4]
  • 使う判断基準は体温の数字ではなく「お子さんのつらさ」 [4][5]
  • アセトアミノフェン: 10〜15mg/kg、4〜6時間おき [4]
  • イブプロフェン: 5〜10mg/kg(6ヶ月以上)、6〜8時間おき [4]
  • 生後3ヶ月未満の発熱は解熱剤の前にまず受診 [5]

Q3.「布団をたくさんかけて汗をかかせれば治りますか?」

——おばあちゃんが『厚着させて布団をしっかりかけて、汗をかかせれば熱が下がる』って言うんですが、これは正しいんですか?

お気持ちはわかるのですが、これは明確に間違いです。むしろ危険な行為ですので、ぜひ知っておいてください

——危険なんですか!?

はい。先ほどお話しした通り、発熱時は脳のサーモスタットが体温の設定を高くしています。厚着や布団で体を覆ってしまうと、体から余分な熱が逃げられなくなり、体温がさらに上がってしまう危険があります [6]。これは特に赤ちゃんや小さなお子さんで深刻です。赤ちゃんは大人に比べて体温調節の能力が未発達なので、外部からの過剰な保温で容易に体温が上がりすぎてしまうのです

——具体的にどんなリスクがあるんですか?

最も心配なのは脱水です。厚着で汗をかかせると、体の水分が大量に失われます。お子さんはもともと体に対する水分の割合が大人より高く、発熱だけでも普段より多くの水分を消費しています。そこに発汗が加わると、脱水が一気に進む可能性があります [6]。また、乳児突然死症候群(SIDS)の研究でも、発熱時の厚着・過剰な保温が危険因子のひとつとして指摘されています [7]

——じゃあ、どうするのが正解ですか?

発熱のフェーズによって対応を変えるのがコツです。寒気・ふるえがある時期(体温が上がっている最中)は、お子さんが寒がりますので1枚多めに掛けてあげてOKです。しかし、熱が上がりきって汗をかき始めたら、逆に薄着にして熱が逃げやすくしてあげてください。具体的には、室温を涼しめ(22〜24℃程度)に保ち、薄手の服1枚程度で過ごすのが理想です。そして何より、こまめな水分補給が最も大切です。経口補水液やお茶、母乳・ミルクなどを少量ずつ頻回に与えてください

——寒がっている時は温めて、汗が出始めたら涼しくする。フェーズを見分けるんですね

ポイント

  • 「厚着で汗をかかせる」は危険な行為。脱水・過体温のリスク [6]
  • 発熱時の過剰保温はSIDSの危険因子としても指摘されている [7]
  • 寒気がある時 → 1枚多めに。汗が出始めたら → 薄着に切り替え
  • 一番大切なのはこまめな水分補給

Q4.「熱性けいれんが心配です。高い熱が出ると起こるんですよね?」

——上の子が1歳の時に熱性けいれんを起こして、あの時のことがトラウマで……。熱が高くならないように解熱剤でこまめに下げたほうがいいですよね?

熱性けいれんを経験されると、本当に怖い思いをされますよね。お気持ちは十分にわかります。ただ、まず安心していただきたいのは、熱性けいれんは基本的に「良性」で、後遺症が残ることはほとんどないということです。そのうえで、ここにも誤解があるのでしっかりお伝えしますね。まず、熱性けいれんは「熱の高さ」そのもので起こるわけではありません [8]

——え? 高い熱でけいれんが起きると思っていたんですが……

実は、熱性けいれんの研究では、再発のリスク因子として「低い体温でのけいれん」や「発熱から短時間でのけいれん」が挙げられているんです [8]。つまり、40度で起こることもあれば38度台で起こることもある。体温の急な変動のほうが関連すると考えられています。さらに重要なのが、解熱剤でこまめに熱を下げても、熱性けいれんの予防にはならないということです [4][8]。日本小児科学会のガイドラインでも、解熱剤は熱性けいれんの予防目的には推奨されていません [5]

——解熱剤で予防できないんですか……。じゃあ、もしまた起きたらどうすれば?

まず安心していただきたいのは、熱性けいれんは基本的に「良性」だということです。6ヶ月〜5歳の子どもの約2〜5%に起こりますが(日本では7〜11%との報告もあります)、ほとんどが5分以内に自然に止まり、後遺症を残すことはありません [8]。発達への悪影響もないことがわかっています [8]。もしけいれんが起きた場合は、①横向きに寝かせる(嘔吐物で窒息しないように)、②口に何も入れない(舌を噛むことはほぼないので、指やタオルを入れると危険)、③時間を測る(5分以上続く場合は救急車を呼ぶ)。この3つを覚えておいてください

——思っていたより多いんですね。周りにもけっこういるんだ……。口に何も入れないのは意外でした

初回が12ヶ月未満なら再発率は約50%、12ヶ月以降なら約30%と報告されています [8]。年齢が上がるほど再発率は下がります。再発が心配な場合は、かかりつけ医にダイアップ(ジアゼパム坐剤=けいれんを予防するお尻から入れるお薬)という予防薬の使用について相談することもできます。ただし、これはけいれんの予防であって、発熱を防ぐものではない点にご注意くださいね

ポイント

  • 熱性けいれんは熱の高さではなく、体温の急な変動と関連する [8]
  • 解熱剤で熱性けいれんは予防できない [4][5][8]
  • 6ヶ月〜5歳の約2〜5%に発生(日本では7〜11%)。後遺症は残らず、発達への影響もない [8]
  • けいれん時は:横向き・口に入れない・時間を測る

Q5.「結局、熱が出た時にどうすればいいですか?」

——今日のお話をまとめると、40度でもあまり焦らなくていいということですか? でも、いつ受診したらいいかの目安を教えてください

よくぞ聞いてくださいました。大切なのは、熱の高さではなく、お子さんの「全身状態」を見ることです [1]。以下の「受診すべきサイン」を覚えておいてください

すぐに受診(または救急)が必要なサイン:

  • 生後3ヶ月未満の赤ちゃんの38℃以上の発熱
  • ぐったりして呼びかけに反応が弱い
  • 水分がまったくとれない(半日以上おしっこが出ない)
  • 呼吸が速い・苦しそう
  • けいれんが5分以上続く、または1日に2回以上繰り返す
  • 発疹(赤い点々が出て、押しても消えない=紫斑の場合は特に緊急)

翌日の日中受診で良いサイン:

  • 熱はあるが、水分がとれている・おしっこが出ている
  • 多少ぐずるが、あやすと反応がある
  • 3〜4日以上熱が続いている

38度でも上のサインがあれば受診。40度でも元気で水分がとれていれば、翌朝まで待って大丈夫なケースが多いです。数字より、お子さんの「いつもと違う」感覚を大事にしてくださいね

ポイント

  • 体温の数字より「全身状態」が重要 [1]
  • 生後3ヶ月未満の発熱は必ず受診 [5]
  • 受診の判断は「数字」ではなく「いつもと違う」感覚を信じる

今号のまとめ

  • 感染症の発熱で脳にダメージが出ることは通常ありません。体温42℃を超えるのは熱中症など特殊な場合のみです [1]
  • 解熱剤はつらさを和らげる薬であり、病気を治す薬ではありません。38.5℃以上でも元気なら不要です [4][5]
  • 厚着で汗をかかせるのは危険。フェーズに合わせて衣服を調整し、こまめに水分を摂りましょう [6][7]
  • 熱性けいれんは解熱剤では予防できません。けいれん時は横向き・口に入れない・時間を測る [8]
  • 受診の判断は体温の数字ではなく、お子さんの全身状態で決めてください [1]

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※ この記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さんの症状が心配な場合は、かかりつけの小児科医にご相談ください。

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