愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.470
ビデオゲームは悪者か、攻撃性と注意機能への影響を整理する
「ゲームばかりやっていて、勉強しません。取り上げたほうがいいですか?」。小学生のお母さんから、しょっちゅう聞かれます。
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
JAMA Pediatrics 2026年のメタ解析で、ビデオゲームについて興味深い結果が出ました [1]。「ゲーム=悪」でもなく、「ゲーム=教育ツール」でもない、混在した影響が示されたんです。今回は、3〜12歳のお子さんを持つご家庭向けに整理します。
Q1.「ビデオゲームは子どもに悪いんですか?」
——結論から知りたいです
悪い面と良い面が両方あります、というのが正直な結論です
JAMA Pediatrics 2026年のメタ解析(65研究)[1] で示された主な結果。
研究数(効果量)
- 攻撃性
- 14 (42)
- 外在化行動
- 11 (28)
- 向社会的行動
- 9 (22)
- 注意・実行機能
- 3 (16)
r(95% CI)
- 攻撃性
- 0.16(0.09〜0.23)
- 外在化行動
- 0.17(0.07〜0.26)
- 向社会的行動
- −0.13(−0.25〜0.00)
- 注意・実行機能
- 0.10(0.03〜0.16)
攻撃性や外在化行動(反抗・ルール違反・癇癪)は増え、向社会的行動(助け合い・共感)は少し減る。一方で、注意・実行機能(集中・切り替え・抑制)はわずかに向上。きれいに「悪い」とも「良い」とも言えないんです。
Q2.「攻撃性が上がるって、どれくらい?」
——r=0.16は大きい数字ですか?
Cohenの基準で『小さい』に分類されますが、14研究・42効果量で一貫して出ている点が重要です [1]
論文の考察では、この関連は「メディア暴力・行動的脱抑制理論」と整合する、と説明されています [1]。暴力的なコンテンツに繰り返し触れることで、暴力を「普通のこと」と感じやすくなる、という仮説です。
ただし、全てのゲームが同じ効果を持つわけではありません。論文も限界として「ゲーム内容(レーティング成人ゲーム、リスク賛美ゲーム vs 通常)のばらつき」が異質性に寄与していると書いています [1]。つまり、パズルゲームとシューティングゲームでは、全く違う話なんです。
Q3.「注意・実行機能が上がるのは本当?」
——ゲームをやらせたほうが頭が良くなる、って話も聞きますが
部分的には本当です。ただし学業成績には反映されません
メタ解析の注意・実行機能との正の関連 [1]。
- 効果量 r=0.10(小さい〜中程度の小さい方)
- ただし研究数が少ない(3研究16効果量)
- 学業成績向上を伴わない
論文の考察でも「ゲームの認知的要求を反映する可能性があるが、研究数が少なく、学業成績向上を伴わない」と慎重に書かれています [1]。
おそらく、ゲームで鍛えられる注意・実行機能は「そのゲームに特化したもの」で、教科学習に一般化しにくいと考えられています。シューティングゲームで反射が上がっても、算数の成績は上がらない、というイメージです。
Q4.「ジャンル別の目安はありますか?」
——どんなゲームならOK、どんなゲームならNGとか、ありますか?
一般的には、以下の視点で分けるのがおすすめです
リスク
- パズル・教育系
- 低
- スポーツ・シミュレーション
- 低〜中
- RPG・アドベンチャー
- 中
- シューティング・格闘(暴力描写あり)
- 中〜高
- オンライン対戦(音声チャット含む)
- 中〜高
推奨年齢
- パズル・教育系
- 3歳以上(保護者と一緒に)
- スポーツ・シミュレーション
- 6歳以上
- RPG・アドベンチャー
- 年齢レーティングに従う
- シューティング・格闘(暴力描写あり)
- 12〜15歳以上を目安
- オンライン対戦(音声チャット含む)
- 高学年以降、保護者が利用環境を把握
日本のCEROレーティング(A:全年齢、B:12歳以上、C:15歳以上、D:17歳以上、Z:18歳以上)を基本に、家庭でもう一段階慎重にするくらいでちょうどいいです。
Q5.「時間は何時間までならいいですか?」
——結局、時間の目安は?
年齢とコンテンツによりますが、平日1時間前後が現実的な目安です
年齢別の一般的なガイド。
- 3〜5歳: 保護者と一緒に短時間(15〜30分まで)
- 6〜9歳: 平日30〜60分、休日60〜90分
- 10〜12歳: 平日60分、休日90〜120分
- 中学生以降: 家庭で話し合って決める
ただし、時間より「他の生活が回っているか」が本質です。睡眠・運動・宿題・対面での家族との会話、これらが削られていない範囲なら、多少時間が長くても問題は起きにくいです。逆に、30分でも睡眠を削っているなら見直しが必要です。
AAPも2026年の方針声明で「時間制限一辺倒から、質・文脈・会話重視へ」と転換しています [2]。
Q6.「家庭でどう向き合えばいいですか?」
——禁止すると反発されます
禁止より『一緒にやる』『話題にする』が効果的です
質的研究 [3] でも、親の戦略として「共視聴・共プレイ」が繰り返し挙がっています。実践のポイントは4つ。
- 2一度一緒にプレイしてみる: 「何が楽しいのか」を体感する
- 4ゲームの話を聞く: 「今どのステージ?」「あのキャラ、どうなった?」
- 6家族の会話の話題にする: 子のゲーム知識が会話の入口になる
- 8家全体のルールを相談する: 「君はどう思う?」から始める
禁止は一見最短ですが、親子関係という最大の資源を消耗させます。共有する方向のほうが、長期的にはコントロールが効きます。
小学生でオンラインゲームを始めたら、以下を必ずチェックしてください。(1) 音声チャットの相手は誰か、(2) 課金の仕組みを理解しているか、(3) ゲーム内のトラブルを親に相談できるか。知らない大人との接触は、ゲームそのものよりリスクが高いです。
「ゲームをやる子は悪い子」は違う
外来で最も誤解が多いのが「ゲームをやる=不良化する」という見方です。メタ解析が示しているのは、ゲームが攻撃性をわずかに上げる傾向がある、ということであって、「ゲーマー=問題児」ではありません [1]。
むしろ、友達と一緒にプレイして盛り上がっている、ゲームの話で家族が笑っている、こういう使い方なら、ゲームは大きな社会的資源になります。同じゲームでも、部屋に閉じこもって1人で暴力的な内容を長時間やり続けるのとは、中身が全く違います。

おかもん先生より
私は外来で「ゲームは禁止しない派」です。代わりに、「ゲーム時間と睡眠時間、どっちが先?」「今日どんなゲームをやった?」と聞くようにしています。親が関心を持ってくれるだけで、子のゲームへの向き合い方は少し変わります。「やめなさい」ではなく「教えて」から始めてみてください。
今号のまとめ
- JAMA Pediatrics 2026年メタ解析で、ゲームは攻撃性・外在化行動と関連(r=0.16〜0.17)
- 一方で注意・実行機能はわずかに向上(r=0.10)、ただし学業成績には反映されない
- ジャンル・コンテンツによって影響は大きく異なる。CEROレーティングを基準に
- 時間より「他の生活が回っているか」が本質
- 禁止より「共プレイ・会話の話題化」が効く
- オンラインゲームは接触相手・課金・相談体制を必ずチェック
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