愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.467
スクリーンタイムの2026年最新エビデンス、JAMA Pediatricsメタ解析を読み解く
「スマホって結局、子どもに悪いんですか?良いんですか?」。外来で本当によく聞かれます。
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
今年3月、JAMA Pediatricsに世界の研究を統合した大規模メタ解析が掲載されました [1]。153の縦断研究、115コホート、1,072の効果量。これまでの「スクリーンタイム研究」の決定版と言える内容です。今回は、その要点を保護者の方向けに翻訳してお伝えします。
Q1.「このメタ解析は何を調べたのですか?」
——JAMA Pediatricsの論文、ニュースでも見ました。具体的に何を明らかにしたんですか?
0〜18歳のデジタルメディア使用と、健康・発達の関連を時間軸で追った縦断研究を集めて、世界全体での傾向を数値化した研究です
この研究の特徴は3つあります [1]。
- 横断研究ではなく「縦断研究」のみを対象(時間の前後関係が追える)
- デジタルメディアを「ソーシャルメディア」「ビデオゲーム」「その他」の3つに分類
- アウトカムも「社会情動」「認知」「身体・運動」の3領域で評価
対象年齢は2〜19歳、平均12.81歳。40.5%がヨーロッパ、39.2%が北米、14.4%がアジアの研究でした [1]。
Q2.「ソーシャルメディアの影響は?」
——一番気になるのはSNSです。どんな結果でしたか?
残念ながら、検討した全領域でネガティブな関連が出ました
ソーシャルメディアと関連した主なアウトカム [1]。
相関係数 r
- 抑うつ
- 0.09
- 外在化行動(攻撃・反抗など)
- 0.13
- 内在化行動(不安・ひきこもりなど)
- 0.14
- 自傷的思考・行動
- 0.11
- 問題的インターネット使用
- 0.21
- 学業成績
- −0.07
- 自己認識
- −0.14
- 物質使用(飲酒・喫煙など)
- 0.14
95%信頼区間
- 抑うつ
- 0.06〜0.12
- 外在化行動(攻撃・反抗など)
- 0.07〜0.19
- 内在化行動(不安・ひきこもりなど)
- 0.03〜0.25
- 自傷的思考・行動
- 0.01〜0.21
- 問題的インターネット使用
- 0.13〜0.29
- 学業成績
- −0.11〜−0.02
- 自己認識
- −0.26〜−0.01
- 物質使用(飲酒・喫煙など)
- 0.08〜0.19
相関係数は小さいですが、すべての方向が「悪化」で揃っている点が重要です
Q3.「相関係数ってどう読めばいいんですか?」
——0.09とか0.14って、大きい数字なんですか?
Cohenの基準で、0.1が小さい、0.2が中、0.3が大、0.4が極大とされます [1]。0.09は小さいですが、集団全体に広がると意味のある差になります
たとえばの話です。子ども10万人の集団で抑うつの発症が10%だとします。相関係数0.09という小さい差でも、ソーシャルメディアを重く使う層と軽い層を比べると、発症率で数%の差が出ます。個人では見えにくくても、学校や地域単位では大きな数字になります。
論文の著者らも「効果量は身体不活動や不健康な食習慣といった、他の修正可能な生活習慣因子と同等」と書いています [1]。運動不足や偏食と同じレベルの、注意を払うべき生活習慣因子というイメージです。
Q4.「ビデオゲームは悪いんですか?」
——ゲームも毎日やっています。やめさせたほうがいいですか?
結果は少し複雑で、全部悪いとは言えません
ビデオゲームとの関連 [1]。
- 攻撃性の増加(r=0.16、95% CI 0.09〜0.23)
- 外在化行動の増加(r=0.17、95% CI 0.07〜0.26)
- 注意・実行機能の向上(r=0.10、95% CI 0.03〜0.16)
攻撃性との関連は「暴力的なゲーム」の影響が大きいと考えられています。一方で、注意機能や実行機能(計画・切り替え・抑制)は、ゲームによってわずかに向上することが示唆されました [1]。
ただし、ゲームでの認知機能向上が「学業成績の向上」につながるかというと、そこは否定的です。認知機能の改善は、その特定の課題に限定されがちです。
Q5.「その他のメディアは?動画サイトとか」
——YouTubeとかLINEはどうですか?
『その他のデジタルメディア』として一括で分析されました。抑うつとわずかに関連していました
「その他」には、PC・スマホ・タブレットの一般的使用、メッセージング・通信、デジタル学習、健康・フィットネスアプリ、一般的なインターネット使用が含まれます [1]。
- 抑うつ(r=0.05〜0.12)
- 一般健康の悪化(r=−0.04)
一般的なデジタル機器使用で r=0.11、メッセージングで r=0.05 と、ソーシャルメディアほどは強くないものの、正の関連がありました [1]。LINEでの友達とのやりとりも、ゼロリスクではないということです。
Q6.「結局、家庭でどうすればいいんですか?」
——数字はわかりました。具体的には?
論文の最後に方向性が書かれていて、3つにまとめられます
- 2メディアを一括で扱わない: ソーシャルメディア、ビデオゲーム、動画視聴は影響が異なります。「スクリーンタイム合計」で管理するより、種類別に考えたほうが現実的です
- 4発達段階を踏まえる: 特に若年思春期(12〜15歳)はソーシャルメディアの抑うつリスクが高いと示されました(モデレータ解析 β=−0.09, P=.009)[1]。この時期は特に注意が必要です
- 6家族の実践・学校教育・業界規制の3階建て: 著者らは「家族の共同視聴・学校のデジタルリテラシー教育・業界への規制」を組み合わせた生態学的アプローチを提案しています [1]
この研究は縦断研究を集めたもので、時間の前後関係は押さえられています。ただし、厳密な意味での「因果」は証明されていません。「メディアが悪い」と断定するより、「メディアの使い方次第で、子どもの発達に小〜中程度の影響がありうる」と理解してください。
「時間」より「種類」と「文脈」
今回のメタ解析の最大の示唆は、メディアを一括で「スクリーンタイム」と呼ぶ時代は終わった、ということです。ソーシャルメディア、ビデオゲーム、動画視聴、メッセージング。それぞれの影響は別物です。
AAP(米国小児科学会)も2026年の方針声明で「時間制限一辺倒から、質・文脈・会話重視へ」と転換しました [2]。今回のメタ解析は、その方向性を裏付けるデータになっています。

おかもん先生より
外来でこの話をすると、「じゃあ、うちの子のスマホ、すぐ取り上げたほうがいいですか?」と聞かれます。違います。急に取り上げると、親子関係が壊れるほうが先に起きます。「一緒に使い方を見直そう」から始めてください。数字が示しているのは、完全排除の必要性ではなく、丁寧な運用の必要性です。
今号のまとめ
- JAMA Pediatrics 2026年の大規模メタ解析が、世界の縦断研究を統合
- ソーシャルメディアは抑うつ・行動問題・自傷・物質使用・学業低下と一貫して関連
- ビデオゲームは攻撃性増加と関連するが、注意・実行機能はわずかに向上
- 相関係数は小〜中程度だが、運動不足や偏食と同等の生活習慣因子
- メディアは種類別に考え、家族の関わり・学校教育・業界規制の3階建てで対応
あわせて読みたい
- Vol.468「思春期のソーシャルメディアとメンタルヘルス」
- Vol.469「親のスマホ使用と乳幼児の発達」
- Vol.470「ビデオゲームと子どもの攻撃性・注意機能」
- Vol.471「家族のスクリーンルールの作り方」
ご質問・ご感想
「うちはこういうルールにしています」など、体験談やご質問がございましたら、お気軽にお寄せください。
愛育病院 小児科 おかもん先生
本メルマガの内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。個別のメディア使用については、かかりつけの小児科医にご相談ください。