愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.383
こだわりが強い子
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「いつもと違う道で帰ると癇癪を起こす」「同じDVDしか見ない」「電車のおもちゃを必ず一直線に並べる」。こうしたこだわり行動(限局された反復行動、RRB)は、多くの親御さんが気にされるテーマです。今号では、最新のRRB研究から、どこが心配ラインかを整理します。
こだわり行動は異常なのですか
結論から言うと、こだわり行動そのものは異常ではありません。定型発達の1〜3歳児でも、並べる、同じ絵本を繰り返し読みたがる、特定の洋服しか着ない、といった行動はよく見られます [1]。むしろ、子どもが自分なりに「世界のルール」を確認している健全な営みです。
ASDとの鑑別ポイントになるのは「頻度」「強度」「生活への影響」の3つです [1]。2022年のFrontiers in Psychologyの系統的レビューでは、ASDと診断された子どもたちは2歳前からRRBが多いだけでなく、種類も多様(感覚過敏、手指の常同、物の並べ方へのこだわり等)であることが報告されています [2]。
ポイント
- こだわり行動は定型発達の子にも見られる [1]
- 頻度・強度・生活への影響が鑑別ポイント
- 2歳前から強いRRBが見られるときはASDの早期評価を検討(単独の指標のみでは陽性的中率は高くない)[2][4]
どんな「こだわり」が気になるサインですか
AAP(2020)の発達監視ガイドラインと、Uljarević(2022)らの系統的レビューを参照すると、以下のパターンは一度専門家に相談する価値があります [2][3]。
定型でも見られる
- 物を並べる
- 一時的・飽きる
- ルーティンへのこだわり
- 多少ある
- 感覚への興味
- 一時的に夢中
- 手指の常同運動
- ほぼない
- 特定分野の知識
- ある程度
ASDで目立つ
- 物を並べる
- 崩されると強い癇癪・長時間集中
- ルーティンへのこだわり
- 少しでも変わるとパニック
- 感覚への興味
- 特定の感覚を繰り返し追求(回るもの・光等)
- 手指の常同運動
- 興奮時にヒラヒラ・パタパタが頻回
- 特定分野の知識
- 年齢に不相応な深さ・生活の全てを支配
これら単独ではASDとは言えませんが、複数が重なり、他の社会的コミュニケーションの遅れ(指さし・視線・言葉)も伴う場合は、早めにスクリーニングを受ける価値があります [3]。
・ルーティンの変更で毎日のように激しく崩れる ・物を並べる・回すことが食事や睡眠を妨げる ・手指の常同運動が日常的に目立つ ・「こだわり+言葉/視線の遅れ」の組み合わせ
外来で思うこと、そして家庭でできること
家庭では、こだわりを「直す」より「予測できるようにする」のが基本戦略です [3]。
- 予定の変更は、視覚的スケジュール(絵カード・写真)で事前に伝える
- 「同じ流れ」をある程度許容する(寝る前の儀式など)
- 崩れやすい場面は最初から選ばない(混雑時間帯を避ける等)

おかもん先生より
外来で「うちの子こだわりが強くて……」と相談されるとき、僕はよく「それで困っているのはお子さん自身ですか、それとも家族ですか?」と聞きます。子ども自身が毎日のように泣いて崩れ、寝られない・食べられない・保育園に行けないのなら、それは支援の対象です。一方で、家族がちょっと大変、くらいなら、多くの場合は成長とともに楽になります。「こだわりの強さ」より「生活がどれだけ崩れているか」のほうが、診療判断では大きな情報です。
今号のまとめ
- こだわり行動そのものは異常ではない
- 頻度・強度・生活への影響が鑑別ポイント
- 2歳前から多様で強いRRBが見られるときは早めに相談を
- 家庭では「直す」より「予測できる環境」をつくる
愛育病院 小児科 おかもん先生
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまの症状についてはかかりつけの小児科医にご相談ください。