愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.378
「言葉が遅い気がする」、いつから心配?
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
外来でいちばん多いご相談が「うちの子、言葉が遅い気がするんです」というもの。1歳半健診の前後で急に気になりだす方がとても多いです。今号では、最新のエビデンスをもとに「いつから心配すべきか」をまとめます。
どれくらい遅いと「late talker」なのですか
言葉の発達がゆっくりな子(late talker)は、24ヶ月時点で表出語彙が50語未満、または2語文が出ていない子を指すのが一般的です [1]。人口ベースの研究では、有病率は10〜15%程度と報告されています [1]。
大事なのは「late talkerの約半数は3歳までに定型発達群に追いつく」という事実です [2]。一方で、残り半数は発達性言語障害(DLD)など、何らかの言語面の課題が残ることもわかっています [2]。つまり、「待てば大丈夫」でも「必ず問題」でもない、グラデーションのある現象だということです。
ポイント
- late talkerの定義: 2歳で表出語彙50語未満 または2語文なし [1]
- 有病率は10〜15% [1]
- 約半数は追いつくが、残り半数は言語面の課題が続く [2]
月齢ごとの目安を教えてください
WHOや米国小児科学会(AAP)、そして日本の乳幼児発達スケール(KIDS)を総合すると、次のような目安になります [3][4]。
期待されるマイルストーン
- 12ヶ月
- 「ママ」「まんま」など有意語が出始める
- 15ヶ月
- 有意語が3〜5語、指さしが出る
- 18ヶ月
- 有意語10語程度、「ちょうだい」で渡せる
- 24ヶ月
- 2語文(「ママ きた」など)
- 36ヶ月
- 簡単な会話のキャッチボール
気になる状態
- 12ヶ月
- 喃語も少ない
- 15ヶ月
- 指さしなし・有意語ゼロ
- 18ヶ月
- 有意語ゼロ、指示が通らない
- 24ヶ月
- 有意語のみ、2語文なし
- 36ヶ月
- 何を言っているかわからない
特に注意したいのが「18ヶ月で有意語ゼロ」「24ヶ月で2語文なし」という線です [3]。USPSTFの2024年のレビューでも、この2つは受診の目安としてしばしば引用されています [4]。
・聞こえているか気になる(呼んでも振り向かない) ・いったん話していた言葉が消えた ・指さしや身振りも少ない これらが重なるときは、様子見ではなく受診を選んでください [3]。
「様子を見ましょう」と言われたけれど不安です
とても多いご相談です。ここではっきりお伝えしたいのは、「様子を見る」は「何もしない」ではないということです。日常でできることはたくさんあります。
- テレビ・動画は視聴時間を短く、代わりに絵本の読み聞かせを増やす
- 子どもの発した音に応答する(「わんわんだね」と返す)
- 指さしを真似る、物の名前をゆっくり伝える
- 聞こえのチェック(ささやき声で振り向くかなど)を意識する

おかもん先生より
外来で「言葉が遅くて」と来られるお母さんに、僕はよく「今の時点で心配するより、3ヶ月後にもう一度一緒に見てみましょう」と伝えます。1歳半で単語ゼロだった子が、2歳直前にいきなり「爆発」するのを何十例も見てきました。ただ、同じように見えても、聞こえの問題や自閉スペクトラム症の初期サインが隠れていることもあります。だからこそ「待つ」ではなく「関わりながら見る」というスタンスをお伝えしています。
受診の目安と、連れて行くときの準備
次のいずれかが当てはまるなら、かかりつけ小児科にご相談ください [3][4]。
- 18ヶ月で有意語がゼロ
- 24ヶ月で2語文が出ない
- 指さし・バイバイなどの身振りがほとんどない
- 呼びかけへの反応が鈍い
- いったん出ていた言葉が消えた(折れ線型)
受診時には、母子手帳と「日常の動画」を持っていくと話が早いです。診察室ではお子さんが緊張して普段と違う行動をとることが多いからです。
ポイント
- 18ヶ月で有意語なし、24ヶ月で2語文なしは受診の目安 [3]
- 折れ線型(獲得した言葉が消える)は急ぎ相談
- 動画は診察の強い味方
今号のまとめ
- late talkerは全体の10〜15%、約半数は3歳までに追いつく
- 18ヶ月で有意語なし、24ヶ月で2語文なしは一つの目安
- 「様子を見る」と「何もしない」は違う。関わり方を工夫しながら経過を見る
- 折れ線型・聞こえの心配・他の発達も遅いときは早めに相談を
愛育病院 小児科 おかもん先生
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまの症状についてはかかりつけの小児科医にご相談ください。