愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.358
「全部ひとり」、ワンオペ育児の実態と、今日から使える対策
38度の熱がある。でも赤ちゃんの授乳はやめられない。おむつも替えなきゃいけない。代わりの人はいない。
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
ポピンズシッターの調査では、72.5%の方が「ワンオペ育児をしたことがある」と回答しています(回答者の約9割は母親) [1]。また、令和3年の社会生活基本調査では、6歳未満の子がいる世帯で、妻の家事・育児関連時間は1日7時間28分、夫は1時間54分。妻の負担は夫の約4倍です [2]。今回は、ワンオペ育児の具体的な対策をお話しします。
「自分が倒れたらどうなるんだろう」。その恐怖は正しい
体調不良でも代わりがいない。それが一番怖い。その恐怖は正しいです。ワンオペの本質的な問題は作業量ではなく、「代替がいない」という構造そのものです。
ワンオペ育児のつらさは4つの層に分かれます。自分が倒れたら誰が世話をするのかという代替不在の恐怖。すべてを自分で判断しなければならず「これでいいのかな」と聞ける相手がいない判断の孤独。仕事には退勤があるけれど育児には退勤がないという休みのなさ。大人と会話する機会が極端に減る社会的な孤立 [3]。
「助けて」と言えない背景には、「みんなやっている」という比較、「母親なら当然」という規範、迷惑をかけることへの罪悪感、弱みを見せたくない防衛があります [3](松田2008)。でも助けを求めることは甘えではありません。子どもの安全と自分の健康を守るための、責任ある判断です。
人に頼めなくても、制度やサービスには頼れます。ファミリーサポート(1時間800円~)、一時保育(リフレッシュ目的OK)、産後ドゥーラ(港区助成あり)、ベビーシッター(港区助成あり)。全部を使う必要はありません。でも、1つも使わないのは危険です [4]。
「俺だって疲れてる」で終わらせないために。育児を「見える化」する
パートナーにワンオペのつらさをわかってもらえない。「仕事で疲れている」と言われると何も言えなくなる。お互いの疲れを比較しても解決しません。大切なのは、育児の中身を「見える化」することです。
1日の育児・家事タスクをリストに書き出してください。授乳、おむつ替え、寝かしつけ、洗濯、掃除、買い出し、料理、食器洗い。各タスクにかかる時間を記録する。そのリストをパートナーと共有して「このうちどれを担当できるか」を一緒に決める [5]。
大事なのは「あなたがやらないから大変」ではなく「これだけのタスクがある。2人でどう分けるか」という問題設定にすること。パートナーに「まる1日ワンオペ」を体験してもらうことも有効です。
限界を超えそうなとき。これだけは覚えておいてください
子どもに怒鳴ってしまいそうで怖い。その「怖い」という感覚を持っていること自体が、まだ踏みとどまれている証拠です。でも、限界が近いサインでもあります。
- 2子どもを安全な場所(ベビーベッド、ベビーサークル)に置く。2. 別の部屋に移動する。3. 10秒間、深呼吸する。4. 冷たい水で顔を洗う。5. 落ち着いてから戻る。この「一時退室」は虐待予防として推奨されている方法です。子どもが数分間泣いていても害はありません。
それでも限界が続くなら、今日中に相談してください。よりそいホットライン(0120-279-338、24時間)、児童相談所虐待対応ダイヤル(189)、港区こども家庭センター(各地区総合支所)、港区みなと保健所(03-6400-0084)。

おかもん先生より
「189」に電話することは「通報」ではありません。「相談」です。助けを求めることは、子どもを守ることです。
今号のまとめ
- ワンオペ経験者は母親の7割超。妻の家事育児時間は夫の約4倍(令和3年社会生活基本調査)
- 「助けて」と言えない背景には社会的プレッシャーがある
- ファミサポ、一時保育、産後ドゥーラなど外部リソースを最低1つは使う
- パートナーへの理解促進は「見える化」と「体験」が有効
- 限界のときは一時退室。それでもつらいなら相談窓口へ
あわせて読みたい
- Vol.357「育休復帰の不安、96%のママが感じる『怖さ』の正体」
- Vol.351「困ったときの相談先ガイド(東京・港区)」
- Vol.356「産後クライシス、夫が嫌いになるのは異常じゃない」
ご質問・ご感想
「ワンオペでこんな工夫をしています」「こんなサービスが役立ちました」など、体験談やご質問がございましたら、お気軽にお寄せください。
愛育病院 小児科 おかもん先生
本メルマガの内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまやお母さまの症状についてはかかりつけの産婦人科・小児科医にご相談ください。