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「ワンオペ育児の限界とSOSの出し方」、一人で抱え込まないために
Vol.330メンタルヘルス

「ワンオペ育児の限界とSOSの出し方」、一人で抱え込まないために

ワンオペ育児の限界サインと利用できる支援サービス一覧

メンタルヘルス全年齢8
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 5·Q&A 5問収録

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この記事のポイント

  • ワンオペ育児は慢性的な睡眠不足・社会的孤立・うつリスク増大をもたらします
  • 「助けて」と言えない心理の裏には、罪悪感と自己犠牲の文化があります
  • 港区にはファミリーサポート・子育てひろば・ショートステイなど、具体的に使える支援があります

愛育病院 小児科おかもん だより Vol.330

「ワンオペ育児の限界とSOSの出し方」、一人で抱え込まないために

今号のポイント

  1. 2
    ワンオペ育児は慢性的な睡眠不足・社会的孤立・うつリスク増大をもたらします
  2. 4
    「助けて」と言えない心理の裏には、罪悪感と自己犠牲の文化があります
  3. 6
    港区にはファミリーサポート・子育てひろば・ショートステイなど、具体的に使える支援があります

こんにちは。愛育病院小児科のおかもんです。

Vol.327〜329で産後うつ、父親の産後うつ、育児バーンアウトを取り上げてきました。シリーズ最終号の今号は「ワンオペ育児の限界とSOSの出し方」です。一人で育児を抱え込むことの危険性と、具体的に使える支援についてお伝えします。

Q1. ワンオペ育児は体と心にどんな影響がありますか?

お母さん:夫は仕事で帰りが遅く、ほぼ一人で育児をしています。最近、体がきついです。

おかもん先生:「ワンオペ育児」という言葉が広く使われるようになりましたが、これは単なる大変さの問題ではなく、健康上の深刻なリスクを伴います。

身体的な影響:

  • 慢性的な睡眠不足:夜間の対応をすべて一人で行うため、連続した睡眠がとれません。睡眠不足は免疫機能の低下、肥満、心血管疾患のリスク増大につながります[1]。
  • 身体の不調:腰痛、腱鞘炎、慢性的な疲労感。自分の体調不良を後回しにしがちです。
  • 食事の乱れ:子どもの食事を優先し、自分はまともに食べられないことも。

精神的な影響:

  • 社会的孤立:外出もままならず、大人と会話する機会が激減します。孤立感は産後うつの最大のリスク因子の一つです[2]。
  • うつ・不安のリスク増大:育児を分担するパートナーがいない場合、産後うつのリスクが有意に高まることが報告されています[3]。
  • 自己肯定感の低下:「自分はダメな母親だ」「もっと頑張らなければ」という思考のループ。

ポイント ワンオペ育児は「大変」なだけではなく、身体的・精神的な健康リスクです。個人の努力で解決できる問題ではありません。

Q2. なぜ「助けて」と言えないのですか?

お父さん:妻に「つらかったら言ってほしい」と伝えているのですが、なかなか言ってくれません。

おかもん先生:「助けて」と言えない背景には、いくつかの心理的メカニズムがあります[4]。

  1. 2
    罪悪感:「母親なんだから自分でやるべき」「他の人はできているのに」という罪悪感が、SOSを出すことを阻みます。
  2. 4
    完璧主義:「人に頼る=自分の能力不足を認めること」と捉えてしまう。
  3. 6
    迷惑をかけたくない:日本の文化的背景として、「人に迷惑をかけてはいけない」という価値観が強く根づいています。
  4. 8
    わかってもらえないという諦め:以前SOSを出したときに「みんなやっていることだよ」「贅沢だ」と言われた経験が、次のSOSを出す気力を奪います。
  5. 10
    限界に気づけない:慢性的な疲労は感覚を麻痺させます。「これが普通」と思い込んでしまい、自分が限界にいることに気づけないのです。

パートナーの方へ:「言ってくれたら手伝うよ」ではなく、「言わなくても気づいて動く」ことが大切です。SOSを出す側にも大きなエネルギーが必要だということを理解してください。

ポイント 「助けて」と言えないのは甘えではなく、複数の心理的障壁があるためです。周囲から手を差し伸べることが重要です。

Q3. 港区で使える具体的な支援にはどんなものがありますか?

お母さん:支援があることは知っていますが、具体的に何が使えるのかわかりません。

おかもん先生:港区には多くの子育て支援制度があります。主なものをご紹介します。

  1. 2

    ファミリーサポート事業 地域の協力会員(子育て経験のある方など)が、保育園の送迎や一時的な預かりなどを手伝ってくれます。1時間あたり数百円程度で利用でき、事前登録が必要です。

  2. 4

    子育てひろば(子育てサロン) 港区内の各地域に設置されており、0歳から未就学児とその保護者が自由に利用できます。スタッフに育児の悩みを相談することもできます。何より「大人と話せる場所」として、孤立防止に大きな役割を果たします。

  3. 6

    ショートステイ(子どもの短期預かり) 保護者の病気、出産、看護、冠婚葬祭などの理由で、一時的に子どもの養育が困難な場合に、児童養護施設などで最大7日間預かってもらえます。

  4. 8

    トワイライトステイ(夜間預かり) 保護者が仕事などで夜間に子どもの世話ができない場合に、午後5時〜午後10時まで預かってもらえる制度です。

  5. 10

    産後ケア事業 宿泊型・日帰り型・訪問型があり、助産師による母親の心身のケアや育児サポートを受けられます。産後うつのリスクがある方には特におすすめです。

  6. 12

    一時預かり保育 保育園に通っていないお子さんを、リフレッシュ目的でも一時的に預けることができます。「用事がなくても、休むために預ける」ことは正当な利用理由です。

ポイント 「リフレッシュ目的」でも一時預かりは利用できます。休むことに罪悪感を持つ必要はありません。

Q4. 支援を受けることに抵抗があります。弱い親だと思われませんか?

お母さん:「他の人に子どもを預ける」ということに罪悪感があります。

おかもん先生:その気持ちはとてもよくわかります。しかし、はっきり申し上げます。支援を受けることは弱さではありません。むしろ、子どもを守るための賢い判断です。

人間の育児は、本来「一人で行うもの」ではありません。人類の歴史を見ても、育児は共同体で行うもの(共同養育:alloparenting)でした[5]。核家族化が進んだ現代において「一人で全部やる」というのは、進化的にも不自然な状態なのです。

飛行機の安全説明を思い出してください。「まず自分の酸素マスクをつけてから、お子さまのマスクをつけてください」。自分が倒れたら、子どもを守ることもできません。

ポイント 支援を使うことは「手抜き」ではなく「セルフケア」です。長く健やかに育児を続けるための投資と考えてください。

Q5. パートナーとの関係を改善するにはどうすればよいですか?

お父さん:ワンオペにさせてしまっている自覚はあります。何から始めればよいですか?

おかもん先生:パートナーシップの再構築は、段階を踏んで進めることが大切です。

Step 1:現状を「見える化」する 育児と家事のタスクをすべて書き出し、どちらが何を担当しているか可視化します。多くの場合、一方に偏っていることが客観的にわかります。

Step 2:「手伝う」ではなく「分担する」意識 「手伝う」という言葉は、主体が相手にあることを意味します。育児は二人の責任です。「自分の担当」として引き受ける姿勢が重要です。

Step 3:完璧を求めない パートナーのやり方が自分と違っても、口を出しすぎないこと。「やってくれているだけでありがたい」と思える関係が理想です。

Step 4:定期的に話し合う時間を設ける 週に一度でも、子どもが寝た後に「最近どう?」と話す時間をつくりましょう。問題が大きくなる前に共有できます。

ポイント 「手伝う」ではなく「一緒にやる」。育児の主語を「私たち」に変えることが、パートナーシップ再構築の第一歩です。

まとめ

ワンオペ育児は個人の問題ではなく、社会構造の問題です。しかし、社会が変わるのを待っている余裕はありません。今、つらいと感じている方は、今日から使える支援に手を伸ばしてください。

「助けて」と言うことは、弱さではありません。子どもを守り、自分を守るための、最も勇気ある行動です。

あわせて読みたい

  • Vol.292「港区の子育て支援施設」
  • Vol.327「産後うつ」
  • Vol.329「育児バーンアウト」

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愛育病院 小児科 おかもん

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