愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.473
「助けてって言えない」、ひとりで抱えない子育て、核家族の「孤育て」対策
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
外来で、明らかに疲れ切っているのに「大丈夫です」と笑顔を作るお母さんに出会うことがあります。ご実家が遠方で、パートナーは仕事で帰りが遅い。日中は赤ちゃんと二人きり。今の都市部ではめずらしい話ではありません [1]。今回は、核家族の「孤育て(こそだて)」をどう乗り越えるか、一緒に考えましょう。
つらいのは、あなたの能力が足りないからじゃない
周りのお母さんはちゃんとやっているように見えるのに、私だけうまくいかない。そう思っていませんか。
はっきり言います。ワンオペ育児がつらいのは、そもそも育児が一人でやるようにできていないからです。
人類の歴史をさかのぼると、子育ては常に集団で行われてきました。祖父母、きょうだい、近隣の大人がみんなで子どもの面倒を見る「共同養育(alloparenting)」が、人間の子育ての基本形です。核家族でお母さんが一人で育児をするという状況は、人類史的にはきわめて特殊なことなんです。
日本では核家族世帯が全世帯の多数を占め、祖父母との三世代同居はごく少数です(正確な割合は国勢調査・厚労省統計をご確認ください、要確認)。パートナーや周囲からのサポートの欠如が、産後うつの独立したリスク因子であることは研究でも示されています [1]。
つらいのは当然です。人間一人で赤ちゃんを24時間見るのは、本来無理なことをやっているのですから。「ワンオペ」は構造的な問題であって、お母さんの能力の問題ではありません。
「助けて」と言うのは、弱さじゃない。賢さです
人に頼るのが苦手。迷惑をかけたくないし、自分でやらなきゃと思ってしまう。その気持ちはよくわかります。
「助けて」と言えない心理には、「母親なんだから自分でやらなきゃ」という責任感、他人に弱みを見せたくないプライド、迷惑をかけることへの罪悪感、そしてそもそも誰に頼めばいいかわからない、という構造があります。これらはすべて、真面目で責任感の強いお母さんに多い感情です。
でも考えてみてください。赤ちゃんが風邪をひいたら小児科に連れて行きますよね。それは「弱さ」ではなく「適切な判断」です。育児で追い詰められたときに助けを求めるのも同じことです。
まずは小さなことから始めてみてください。パートナーに「今日は疲れたから、お風呂はお願い」と言う。それだけでいいんです。
使えるサービスは、遠慮なく全部使ってください
頼れる身内が近くにいなくても、プロの手を借りる選択肢はあります。港区にはいくつかの支援サービスがあります。使えるものは全部使ってください。
ファミリーサポート(港区)は、地域の協力会員が育児を手伝ってくれるサービスで、保育園の送迎や一時預かりに1時間800円から利用できます。一時保育は保育園で数時間から1日預かってもらえるサービスで、事前登録制、1日3,000円程度です。リフレッシュ目的でも利用できることを知らない方が多いです。
産後ドゥーラは産後の家事・育児を専門的にサポートする人で、自宅に来てくれます。1時間3,000~5,000円ですが、港区には費用助成の制度があります [4]。食事を作ってくれたり、赤ちゃんを見てくれている間にお母さんが昼寝したり、「生活全般」を支えてくれる存在です。
港区産前産後家事・育児支援は、ヘルパーが自宅訪問で家事や育児を手伝うサービスで、妊娠中から産後1年まで1時間500円から利用可能です。

おかもん先生より
全部を使う必要はありません。でも、1つも使わないのは危険です。特に産後ドゥーラはおすすめです。
60点で十分。完璧な親は幻想です
SNSで見る他のお母さんは、手作りの離乳食を作って、部屋もきれいで、笑顔で写真を撮っている。私は何もできていない。そう思ったことがあるなら、ひとつ知っておいてほしいことがあります。あれは「見せたい瞬間」だけを切り取ったものです。投稿されていない99%の日常は、あなたと同じです。
小児科医として長年子どもを見てきて、私(おかもん)が断言できることがあります。子どもが健やかに育つために必要なのは、完璧な親ではなく「ほどほどの親(good enough parent)」です。これは小児科医で精神分析家のDonald Winnicottが提唱した概念で、子どもにとって大切なのは完璧なケアではなく「おおむね安定した、ほどよい世話」なんです。
離乳食は市販のベビーフードでいい。部屋は散らかっていていい。洗濯物がたまっていてもいい。お母さんが倒れないこと。それがいちばん大事です。

おかもん先生より
100点を目指すと親も子も苦しくなります。60点で十分。残りの40点は、周りの力を借りればいいんです。
今号のまとめ
- ワンオペ育児がつらいのは構造的な問題。お母さんの能力不足ではない
- 「助けて」と言うのは弱さではなく、賢い判断
- ファミリーサポート、一時保育、産後ドゥーラなど、使えるサービスは全部使う
- 完璧な親を目指さない。60点で十分
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ご質問・ご感想
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愛育病院 小児科 おかもん先生
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