愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.369
産後の「ガルガル期」:攻撃的になる自分が怖い
「赤ちゃんに触らないで」。義母にきつく言ってしまった。夫の些細な言動にイラッとして怒鳴った。自分でも驚くほど攻撃的になる。
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
産後1~3か月頃に見られるこの状態は俗に「ガルガル期」と呼ばれます。あなたの性格が変わったのではありません。ホルモン変化による防衛本能です。
身近な人にこそ攻撃的になる。それには理由があります
夫や実母にイライラが止まらない。おかしいのかな、と不安になっていませんか。おかしくありません。これはホルモンの変化による生理的な反応です。
出産後のオキシトシンは赤ちゃんへの愛着を強める一方で、「赤ちゃん以外の存在」への警戒心を高める作用もあります [1]。動物行動学では、産後の母親が外敵に対して攻撃的になる「母性攻撃性」は広く知られた現象です [2]。身近な人にこそ攻撃的になるのは、その人たちが赤ちゃんに最も接触する存在だからです。
産後1か月は「縄張り意識」がいちばん強い時期で、赤ちゃんの匂い、温度、泣き声に対する感受性が極度に高まっています [3]。産後13か月がピークで、36か月でホルモンが安定して徐々に落ち着きます。
イライラだけでなく気分の落ち込みが持続する、赤ちゃんに対して無関心になる、自分を傷つけたいという考えが浮かぶ場合は産後うつの可能性があります [4]。6か月を過ぎても改善しない場合は受診を検討してください。
いちばんの対策は「事前に仕組みを説明しておく」こと
パートナーや家族にどう伝えればいいか。いちばん効果的なのは、事前に仕組みを説明しておくことです。
産前または産後早期に伝えておくのが理想です。「産後はホルモンの影響でイライラしやすくなる。あなたが嫌いなわけではない」「きつく言ってしまったらホルモンの仕業だと思ってほしい」。パートナーには、きつく言われても言い返さず「大丈夫?疲れてない?」と声をかけてほしい、と伝えてください。訪問者には短時間の面会と、赤ちゃんを無断で抱かないようお願いを。
怒りのピークは6秒。その6秒をやり過ごす方法
攻撃的な衝動を感じたとき、口を開く前に6秒待ってください。怒りのピークは6秒で過ぎます。
怒りを感じた瞬間に口を開かない。その場を離れて10秒深呼吸。冷たい水で手を洗う(自律神経のリセット効果)。「これはホルモンの仕業」と心の中で唱える [5]。日常的には睡眠を最優先に。1日1回外の空気を吸う。感情を日記やメモに書き出す。

おかもん先生より
怒りを感じること自体は悪いことではありません。大切なのは怒りに支配されないこと。6秒待つだけで、対応は変わります。
今号のまとめ
- 産後の攻撃性(ガルガル期)はホルモン変化による防衛本能で正常な反応
- 身近な人にこそ攻撃的になるのは、赤ちゃんへの接触機会が多いから
- 産後1
3か月がピークで、36か月で徐々に落ち着く - パートナーや家族に事前に仕組みを説明しておくことが最も効果的
- 怒りのピークは6秒。衝動を感じたらまず6秒待つ
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ご質問・ご感想
「こんなガルガル体験がありました」「パートナーにこう伝えたらうまくいきました」など、体験談やご質問がございましたら、お気軽にお寄せください。
愛育病院 小児科 おかもん先生
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