愛育病院 小児科おかもん だより Vol.30
1ヶ月健診FAQ⑧、「赤ちゃんの口の中に白いできもの」「唇が剥けている」
今号のポイント
- 2上皮真珠は生理的なもので、自然に消える。治療不要
- 4先天歯は稀だが、授乳障害があれば抜歯することも
- 6唇の皮むけ(吸いだこ)は授乳の摩擦。心配不要
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
1ヶ月健診で、「口の中に白いぶつぶつがあるんです」「唇の皮がむけているんですけど大丈夫ですか?」 というご質問をよくいただきます。赤ちゃんの口の中は見慣れないものばかりで、心配になりますよね。
今回は、1ヶ月健診でよくある「口の中の心配事」 についてお答えします。
Q1.「上あごに白いぶつぶつがあるんですが、これは何ですか?」
——赤ちゃんの上あごに、白い小さなできものがいくつかあります。痛そうではないんですが、これは何でしょう?
それはおそらく 上皮真珠(じょうひしんじゅ) です。新生児の約80%に見られる、全く心配のないものです [1]
上皮真珠とは?
- 上あごの真ん中や歯ぐきに見られる、1〜2mm程度の白いぶつぶつ
- 正体は 皮膚や粘膜の成分(ケラチン)が残ったもの [1]
- 赤ちゃんの口の中が作られる過程で、上皮細胞が残留してできる
- 生後2〜4ヶ月で自然に消える [2]
見た目の特徴:
- 白色〜黄白色
- 米粒より小さい(1〜2mm)
- 痛みや違和感はない
- 複数個あることが多い
上皮真珠は 治療の必要が全くありません。数週間〜数ヶ月で自然に吸収されて消えます。触ったり潰したりしないでください [2]
カンジダとの違い:
上皮真珠
- 色
- 白色〜黄白色
- 場所
- 上あご・歯ぐき
- 拭き取れるか
- 拭き取れない
- 症状
- なし
口腔カンジダ
- 色
- 白色(ミルクかす状)
- 場所
- 舌・頬の内側
- 拭き取れるか
- 拭き取れる(擦ると出血)
- 症状
- 哺乳拒否・機嫌が悪い
カンジダは ガーゼで拭くと取れるのが特徴です。上皮真珠は拭いても取れません。もしカンジダが疑われる場合は受診してください [3]
ポイント
- 上皮真珠は 新生児の約80%に見られる正常所見 [1]
- 生後2〜4ヶ月で自然に消える。治療不要 [2]
- カンジダとの違いは「拭き取れるかどうか」 [3]
Q2.「生まれたときから歯が生えているんですが、大丈夫ですか?」
——うちの子、生まれたときから下の前歯が2本生えているんです。早すぎませんか?
それは 先天歯(せんてんし) または 新生歯(しんせいし) と呼ばれるものです。非常に珍しいですが、病気ではありません [4]
先天歯・新生歯とは?
- 先天歯: 生まれたときから生えている歯
- 新生歯: 生後30日以内に生える歯
- 頻度: 2,000〜3,500人に1人 [4]
- 多くは下の前歯(乳中切歯)
なぜ早く生えるのか?
- 歯胚(歯の芽)の位置が浅い
- ほとんどの場合、原因は不明 [5]
対応の考え方:
ケース1: そのまま様子を見てOK
以下の条件を満たせば、抜歯の必要なし:
- 歯がぐらつかない(しっかり固定されている)
- 授乳に支障がない(お母さんの乳首が傷つかない)
- 赤ちゃんの舌に潰瘍ができていない
ケース2: 抜歯を検討
以下の場合は抜歯が必要なことも [5]:
- 歯が非常にグラグラしている(誤飲・誤嚥のリスク)
- 授乳障害(お母さんの乳首が切れる、赤ちゃんが痛がる)
- 舌に潰瘍ができている(リガ・フェーデ病)
先天歯の約90%は通常の乳歯ですので、抜歯しなければ、永久歯まで普通に使えます [4]。ただし、グラグラして誤飲のリスクがある場合は、安全のため抜歯することもあります。かかりつけ医と相談してください
ポイント
- 先天歯は 2,000〜3,500人に1人 [4]
- 固定されていて授乳に支障がなければ様子見でOK
- グラグラしている、授乳障害がある場合は 抜歯を検討 [5]
Q3.「唇の皮がむけているんですが、何かの病気ですか?」
——赤ちゃんの上唇の真ん中が、ずっと皮がむけているんです。痛そうではないんですが……
それは 吸いだこ(すいだこ) と呼ばれるもので、授乳による摩擦が原因です。心配いりません [6]
吸いだこ(Sucking callus)とは?
- 上唇の真ん中に白っぽく皮がむけたような部分ができる
- 正体は 授乳時の摩擦で厚くなった角質 [6]
- 生後1〜2ヶ月の赤ちゃんに多い
- 授乳の回数が多い子ほどできやすい
特徴:
- 痛み・かゆみはない
- 出血しない
- 授乳に支障はない
- 離乳食が始まる頃には自然に消える
吸いだこは、赤ちゃんが一生懸命おっぱいやミルクを飲んでいる証拠 です [6]。皮膚を保護しようとして角質が厚くなっているだけなので、何もしなくて大丈夫です
やってはいけないこと:
- 無理に剥がす
- クリームを塗る
- 消毒する
こんなときは受診:
- 唇が 赤く腫れている
- 唇から 血が出ている
- 授乳を嫌がる
- 唇に 水ぶくれ・ただれがある
ポイント
- 吸いだこは 授乳の摩擦による正常な反応 [6]
- 痛みはなく、自然に消える
- 無理に剥がさない。クリームも不要
- 腫れ・出血・授乳拒否があれば受診
Q4.「舌の裏のひだが短いような気がします。舌小帯短縮症ですか?」
——赤ちゃんの舌の裏にあるひだ(舌小帯)が短くて、舌がハート形に見えるんです。手術が必要ですか?
舌小帯短縮症(ぜつしょうたいたんしゅくしょう)の可能性がありますが、多くの場合、成長とともに改善します [7]
舌小帯短縮症とは?
- 舌の裏のひだ(舌小帯)が短い、または舌の先端まで付着している
- 舌を前に出すと、ハート形やW字型になる [7]
- 新生児の約4〜10%に見られる [8]
様子を見てOKのケース:
- 授乳に問題がない
- 体重が順調に増えている
- 赤ちゃんが哺乳を嫌がらない
成長とともに改善する理由:
- 舌の成長に伴い、相対的に舌小帯が緩む
- 生後6ヶ月〜1歳で自然に改善することが多い [7]
手術を検討するケース:
- 授乳障害が明らか(体重増加不良)
- 発音障害(サ行・タ行・ラ行が言えない)が3〜4歳以降も続く [9]
- 舌を前に出せない(舌の先端が下の前歯に届かない)
新生児期に手術が必要なケースは稀です [9]。授乳に問題なければ、3〜4歳まで様子を見ます。発音に影響が出た場合に、小児科医や耳鼻科医と相談して手術を検討します
ポイント
- 舌小帯短縮症は 新生児の4〜10% [8]
- 多くは成長とともに改善 [7]
- 授乳障害がなければ様子見でOK
- 発音障害が残れば 3〜4歳以降に手術検討 [9]
Q5.「歯ぐきに青黒い塊があるんですが、これは何ですか?」
——上の歯ぐきに、青黒い膨らみがあります。血が溜まっているように見えて心配です
それは 萌出性嚢胞(ほうしゅつせいのうほう) または 萌出血腫(ほうしゅつけっしゅ) と呼ばれるものです。歯が生える直前に一時的にできるもので、心配いりません [10]
萌出性嚢胞・萌出血腫とは?
- 歯が生える直前に、歯ぐきに 青黒い・紫色の膨らみ ができる
- 正体は、歯が歯ぐきを押し上げる際にできる 血液や液体の溜まり [10]
- 乳歯でも永久歯でも起こりうる
特徴:
- 痛みはほとんどない
- 数日〜数週間で自然に消える
- 歯が生えてくると同時に破れて消える [10]
対応:
- 通常は 何もしなくてOK
- 歯が生えてくるのを待つ
- 非常に大きい場合や、哺乳・離乳食に支障がある場合は、切開することもある [11]
見た目がびっくりするかもしれませんが、歯が生える準備をしている正常な反応 です [10]。多くは自然に破れて、歯が顔を出します
ポイント
- 萌出性嚢胞は 歯が生える直前の正常な反応 [10]
- 青黒い・紫色の膨らみが特徴
- 自然に消える。治療不要
- 哺乳・離乳食に支障があれば受診
まとめ
- 上皮真珠は新生児の約80%に見られる正常所見。自然に消える
- 先天歯は珍しいが、固定されていて授乳に問題なければ様子見
- 吸いだこは授乳の摩擦。痛みはなく、自然に消える
- 舌小帯短縮症は多くが成長とともに改善。授乳障害がなければ様子見
- 萌出性嚢胞は歯が生える直前の正常反応。自然に消える
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