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「車に乗ると気持ち悪い……」、子どもの乗り物酔いを徹底解説
Vol.60生活・育児

「車に乗ると気持ち悪い……」、子どもの乗り物酔いを徹底解説

乗り物酔いは「目からの情報」と「耳(前庭)からの情報」のズレが原因。2〜12歳がピーク

生活・育児全年齢16
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 12·Q&A 5問収録

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この記事のポイント

  • 乗り物酔いは「目からの情報」と「耳(前庭)からの情報」のズレが原因。2〜12歳がピーク
  • 予防が最も大切。座る位置・視線・食事のタイミングで大きく変わる
  • 酔い止め薬は市販薬でも有効。正しく使えば安全で効果的

愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.60

「車に乗ると気持ち悪い……」、子どもの乗り物酔いを徹底解説

今号のポイント

  1. 2
    乗り物酔いは「目からの情報」と「耳(前庭)からの情報」のズレが原因。2〜12歳がピーク
  2. 4
    予防が最も大切。座る位置・視線・食事のタイミングで大きく変わる
  3. 6
    酔い止め薬は市販薬でも有効。正しく使えば安全で効果的

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

「うちの子、車に乗るとすぐ気持ち悪くなって……。遠出が怖いです」、乗り物酔いは子どもによくあるお悩みです。せっかくの家族旅行やお出かけが、乗り物酔いのせいで楽しめないのはつらいですよね。

実は、乗り物酔い(動揺病: motion sickness)は2〜12歳の子どもに最も多く見られ、特に6〜9歳がピークです [1][2]。成長とともに改善することが多いのですが、それまでの間にできる対策はたくさんあります。

今回は、乗り物酔いのメカニズム、なりやすい年齢、予防法、酔い止め薬の使い方、車中でできる即効ワザまで、詳しくお伝えします。

Q1.「なぜ子どもは車に酔うんですか?」

——大人は酔わないのに、子どもだけ酔うのはなぜですか?

乗り物酔いの正体は、目から入る情報と、耳の奥にある前庭器官(バランスセンサー)からの情報のズレです [1]。このズレを脳がうまく処理できないと、自律神経が乱れて吐き気やめまいが起こります

乗り物酔いのメカニズム、感覚の不一致(Sensory Conflict)理論

乗り物に乗っている時、脳には複数のセンサーから情報が送られます [1][3]:

送る情報

目(視覚)
周囲の景色・動き
前庭器官(内耳)
加速・回転・傾き
体性感覚(筋肉・関節)
体の姿勢・振動

車に乗っている時

目(視覚)
車内を見ていると「動いていない」と判断
前庭器官(内耳)
「体が揺れている、加速している」と検知
体性感覚(筋肉・関節)
「座っているが振動がある」と感知

たとえば、車の後部座席でスマホを見ていると、目は"動いていない"と判断しますが、耳の前庭器官は"揺れている"と感知します。この情報のズレ(感覚不一致: sensory conflict)を脳が"何かおかしい"と認識し、嘔吐中枢を刺激して吐き気が起きる、これが乗り物酔いのメカニズムです [1][3]

なぜ子どもは酔いやすいのか?

理由説明
前庭器官の発達途中 [2]2歳頃から前庭器官が急速に発達。発達途上では感覚統合が未熟で、ズレに弱い
感覚統合の未熟さ [1]目・耳・体の情報を脳で統合する能力が未発達
視覚優位の処理 [3]子どもは視覚に頼りやすく、車内を見つめがちで感覚不一致が大きくなる
座席の位置後部座席は窓の外が見えにくい → 視覚情報と前庭情報のズレが拡大

乗り物酔いの年齢別頻度:

酔いやすさ

0〜2歳
まれ [2]
2〜6歳
増加 [2]
6〜12歳
ピーク [1][2]
13歳〜思春期
徐々に減少 [1]
成人
さらに減少 [1]

説明

0〜2歳
前庭器官がまだ未発達で、かえって酔いにくい
2〜6歳
前庭器官の発達とともに酔いやすくなる
6〜12歳
最も酔いやすい年齢。特に6〜9歳
13歳〜思春期
感覚統合が成熟し、慣れ(habituation)が進む
成人
ただし個人差が大きい。一生酔いやすい人もいる

2歳未満の赤ちゃんが乗り物酔いになることはほとんどありません [2]。逆に、2歳を過ぎて前庭器官が発達し始めると酔いやすくなります。思春期以降は自然に改善することが多いので、"今だけのこと"と思ってください [1]

ポイント

  • 乗り物酔いの原因は目と耳の情報のズレ(感覚不一致) [1][3]
  • 2〜12歳がピーク。特に6〜9歳 [1][2]
  • 0〜2歳はまれ。思春期以降は改善することが多い [1][2]

Q2.「乗り物酔いを予防するには?」

——来週、家族で車で旅行に行くんですが、いつも息子が酔ってしまいます。予防法はありますか?

乗り物酔いは治療よりも予防が大切です [4]。事前の準備から乗車中の工夫まで、エビデンスに基づいた予防法をお伝えします

出発前の準備

対策理由
十分な睡眠をとる [4]睡眠不足は乗り物酔いのリスクを高める
軽い食事をとる(出発30分〜1時間前)[4]空腹は酔いやすい。ただし食べすぎもNG
脂っこい食事を避ける [4]胃の滞留時間が長くなり吐き気が出やすい
柑橘系・炭酸飲料を避ける [4]胃酸分泌を促進し、嘔気を増強
締め付ける服を避けるお腹を締め付けない楽な服装で

乗車中の予防法、座る位置と視線

乗車中の予防で最も重要なのは"どこに座るか"と"何を見るか"です [1][4]

詳細

前方の座席に座る [4]
助手席(6歳以上)、または後部座席の真ん中
遠くの景色を見る [1][4]
窓の外の遠くの山、建物、地平線を見る
読書・スマホ・ゲームをしない [1][4]
近くのものを見ると感覚不一致が拡大
進行方向を向く [4]
後ろ向きや横向きに座らない
窓を開けて換気 [4]
新鮮な空気、涼しい風
こまめに休憩 [4]
1〜2時間ごとに車を止めて外に出る

効果

前方の座席に座る [4]
前方の景色が見えると視覚と前庭のズレが減る
遠くの景色を見る [1][4]
視覚情報と前庭情報が一致しやすくなる
読書・スマホ・ゲームをしない [1][4]
酔いの最大の誘因を排除
進行方向を向く [4]
前庭器官の情報と視覚が一致しやすい
窓を開けて換気 [4]
自律神経の安定、車内の匂い軽減
こまめに休憩 [4]
感覚不一致のリセット

子どもに効果的な追加の工夫

工夫説明
歌を歌う・しりとりをする [5]注意を酔いから逸らす(注意分散効果)
冷たいタオルを額に当てる副交感神経を刺激し、吐き気を軽減
ペパーミントの香り [5]制吐効果が報告されている(ただしエビデンスは限定的)
チャイルドシートの角度を調整リクライニングを少し後ろに。頭の動きを安定させる
窓の外を「実況中継」させる「あ、白い車がいるね!」など。外を見るきっかけに

最も簡単で効果的なのは、窓の外を見せることです [1][4]。後部座席でも、窓から遠くの景色が見えるようにチャイルドシートの位置や高さを工夫してみてください。読書やスマホ、DVDは到着してからのお楽しみに

ポイント

  • 前方の座席に座り、遠くの景色を見るのが最も効果的 [1][4]
  • 読書・スマホ・ゲームは酔いの最大の誘因。乗車中は避ける [1][4]
  • 睡眠不足・空腹・満腹は酔いやすくなる [4]
  • こまめな休憩と換気を心がける [4]

Q3.「酔い止め薬は何歳から使えますか?どう使うのがいいですか?」

——酔い止め薬を使いたいのですが、小さい子にも飲ませて大丈夫ですか?

酔い止め薬は正しく使えば安全で効果的です [6][7]。ただし、年齢制限がある薬もありますので、お子さんの年齢に合ったものを選びましょう

子どもに使える主な酔い止め薬

成分名代表的な製品使用可能年齢特徴
ジメンヒドリナートトラベルミン(ファミリー)5歳〜 [6]最も一般的。眠気あり
メクリジントラベルミン115歳〜 [6]持続時間が長い(24時間)
ジフェンヒドラミン各種配合薬3歳〜(製品による)[6]眠気が強い
スコポラミンパッチ剤(海外)原則成人のみ [7]日本では小児用パッチなし
d-クロルフェニラミンこども用センパアS3歳〜 [6]ドロップ・チュアブルあり

酔い止め薬の飲み方のポイント:

ポイント説明
出発30分〜1時間前に飲む [6][7]事前に飲むのが最も効果的
酔ってからでも効果あり [6]飲まないよりは飲んだ方がよい
用法・用量を守る [6]多く飲んでも効果は変わらない。副作用のリスクが増す
眠気に注意 [6]抗ヒスタミン薬ベースなので眠気が出る。下車後の安全に注意
複数回飲む場合は間隔を守る [6]通常4〜6時間以上あける

市販の酔い止め薬の多くは第一世代抗ヒスタミン薬がベースです [6]。これは前庭器官からの信号を抑制することで乗り物酔いを防ぎます [7]。眠気が出やすいのが弱点ですが、裏を返せば眠ってしまえば酔わないので、長距離移動にはむしろメリットにもなります

酔い止め薬を使うか迷う場合の判断

状況判断
毎回確実に酔う酔い止め薬の使用を推奨 [6]
たまに酔う程度予防策(座席・視線)を中心に。薬はお守り的に持参
3歳未満市販薬の多くは使用不可。小児科に相談
他の薬を飲んでいる抗ヒスタミン薬との相互作用に注意。医師に相談 [6]
てんかんの既往がある一部の薬で痙攣閾値が下がる可能性。医師に相談 [7]

ポイント

  • 酔い止め薬は出発30分〜1時間前に飲むのが効果的 [6][7]
  • 3〜5歳から使える市販薬がある。年齢に合ったものを選ぶ [6]
  • 酔ってからでも飲む価値あり [6]
  • 眠気は副作用でもあるが、長距離移動では味方にもなる

Q4.「酔ってしまった時、すぐにできることは?」

——車の中で"気持ち悪い"と言い出した時、何をしたらいいですか?

酔いの初期症状が出たら、早め早めの対応が大切です [4]。嘔吐まで進む前に対処しましょう

乗り物酔いの症状の段階

症状

初期
生あくび、顔が青白い、唾液が増える、落ち着きがない [1]
中期
吐き気、冷や汗、頭痛、めまい [1]
後期
嘔吐 [1]

対応

初期
窓を開ける、遠くを見る、会話で気を紛らわす
中期
車を止めて休憩。横にさせる
後期
吐かせて楽にさせる。水分補給

車内でできる即効対策

まずは止められるなら車を止めてください。止められない場合は、以下を試してください [4]

  1. 2
    窓を全開にする: 新鮮な空気を入れる。顔に風を当てる [4]
  2. 4
    遠くを見させる: 「あの山を見て」「あの看板を読んで」と外を見るきっかけを [4]
  3. 6
    シートを倒す: 頭を安定させる。できれば横にさせる [4]
  4. 8
    目を閉じさせる: 視覚情報を遮断し、感覚不一致を減らす [1]
  5. 10
    首の後ろ・額を冷やす: 冷たいタオルや保冷剤(タオルで包んで)
  6. 12
    ゆっくり深呼吸: 腹式呼吸で自律神経を安定させる [8]
  7. 14
    ベルトやボタンを緩める: 腹部の圧迫を解除

嘔吐してしまった場合

対応詳細
体を横向きにする嘔吐物で窒息しないように
口の中をすすぐ水やお茶で口をゆすぐ
少量の水分補給一気に飲まず、少しずつ。経口補水液があれば理想的
無理に食べさせない吐き気が治まるまで食事は不要
着替え汚れた服は早めに着替えさせる(匂いが再度吐き気を誘発)

嘔吐した後は、不思議と少し楽になることが多いです [1]。着いたら必ず治るのが乗り物酔いの特徴ですので、お子さんには"もう少しで着くからね"と安心させてあげてください

事前に準備しておくと安心なもの

  • ビニール袋(エチケット袋)、複数枚
  • タオル・ウェットティッシュ
  • 着替え1セット
  • 冷たいペットボトルの水・お茶
  • 酔い止め薬
  • ビニールシート(座席保護)

ポイント

  • 初期症状(生あくび、顔が青い)を見逃さず早めに対処 [1]
  • 車を止める、窓を開ける、遠くを見させるが基本 [4]
  • 嘔吐したら横向きにして口をすすぐ、少量の水分補給 [4]
  • ビニール袋と着替えは必ず持参

Q5.「乗り物酔いは成長すれば治りますか?何か訓練はできますか?」

——大きくなったら治るんでしょうか?今からできる訓練はありますか?

乗り物酔いは多くの場合、成長とともに改善します [1][2]。さらに、"慣れ"の訓練(habituation)で酔いにくくなることが科学的に分かっています [9]

乗り物酔いの自然経過

年齢経過
6〜9歳ピーク。最も酔いやすい [1][2]
10〜12歳徐々に改善 [1]
思春期〜成人多くは改善。ただし一部は大人になっても酔いやすい [1]

慣れ(Habituation)による改善

乗り物酔いに対して最も効果的な"訓練"は、繰り返し乗り物に乗ること(段階的暴露: graded exposure)です [9][10]。脳が揺れの情報に慣れていくことで、感覚不一致への反応が弱まります

慣れの訓練のステップ [9]:

内容

ステップ1
短距離から始める(10〜15分の近場への車移動)
ステップ2
少しずつ距離・時間を延ばす
ステップ3
酔いやすい条件を少しずつ追加(窓を閉める、後部座席など)
ステップ4
長距離移動にチャレンジ

期間

ステップ1
週2〜3回
ステップ2
2〜4週間
ステップ3
慣れに応じて
ステップ4
自信がついたら

ポイントは"酔う手前で止める"ことです [9]。完全に酔ってしまうと逆効果で、乗り物恐怖(不安による条件付け)が生じてしまいます。"少し揺れたけど大丈夫だった"という成功体験を積み重ねることが大切です

日常でできる前庭訓練

遊び・運動効果
ブランコ [9]前後の揺れに対する前庭の慣れ
トランポリン上下の動きに対する前庭の慣れ
でんぐり返し回転に対する前庭の適応
平均台・バランスボードバランス感覚の向上
ハンモックゆっくりした揺れに対する慣れ

ブランコやトランポリンなど、前庭を刺激する遊びを日常的にさせることで、バランス感覚が鍛えられ、乗り物酔いが改善するという報告があります [9]。楽しみながら訓練できるのがいいですね

心理面のサポートも大切

乗り物酔いには心理的な要因も大きく関係します [5][10]。"また酔うかも"という予期不安が自律神経を乱し、実際に酔いやすくなります(条件付け) [10]。以下の声かけが大切です

NG声かけOK声かけ
「酔わないでね!」「もし気持ち悪くなったら教えてね」
「また吐くんじゃないでしょうね」「大丈夫。前より長く乗れたね」
「お薬飲んだから大丈夫」(過度な保証)「薬も飲んだし、窓も開けてあるよ」

ポイント

  • 乗り物酔いは成長とともに改善することが多い [1][2]
  • 段階的に乗り物に慣れる訓練が効果的 [9]
  • ブランコ・トランポリンなど前庭を刺激する遊びも有効 [9]
  • 予期不安が酔いを悪化させる。ポジティブな声かけを [10]

まとめ

項目ポイント
原因目・耳・体からの感覚情報のズレ(感覚不一致)[1][3]
好発年齢2〜12歳がピーク。特に6〜9歳 [1][2]
予防の基本前方の座席、遠くの景色を見る、読書・スマホ禁止 [4]
酔い止め薬出発30分〜1時間前に服用。3〜5歳から使える市販薬あり [6]
酔った時の対処車を止める、窓を開ける、目を閉じる、冷やす [4]
改善方法成長で改善。段階的な慣れ訓練、前庭を刺激する遊び [1][9]

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