愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.375
「麻疹の症状、どう見分ける?」、親が気づくべき3つのサイン
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「熱と発疹が出ていて、これ麻疹でしょうか?」。この質問がやっかいなのは、初期の見た目だけでは、麻疹と他の発疹の病気を区別しにくいからです。そしてもう一つ。麻疹は「疑った時点で普通に受診しない」ことが大事になります。今号では、家庭で気づけるポイントと、疑ったあとの動き方を整理します。
麻疹の典型経過は3段階で進む
麻疹の症状は、カタル期→発疹期→回復期と3段階をたどります [1]。
カタル期(発疹が出る前の2〜4日)は、38℃前後の発熱と強い咳、大量の鼻水、目の充血(結膜炎)が特徴です。この「発熱+咳+鼻水+目の充血」をカタル3徴と呼びます [1]。風邪にしては目やにがひどい、光をまぶしがる、こういう違和感を覚える親御さんは鋭いです。
そして、発疹が出る直前の1〜2日、頬の内側の粘膜(上の奥歯の対側)に、赤い背景の上に白砂を散らしたような小さな斑点が現れます。これがコプリック斑です [2]。麻疹に特異的な所見で、これが見えればほぼ確定できます。ただし発疹が出て1〜2日で消えてしまうので、見逃されがちです。
発疹期に入ると、一度下がった熱が39〜40℃に跳ね上がります。これが「二峰性発熱」です [1]。発疹は耳の後ろから始まり、顔→体幹→手足の順番に広がります。かゆみはあまりなく、退色した後に薄茶色の色素沈着を残すのが特徴です。
「風邪にしては目の充血と咳が強い」「一度熱が下がってまた上がった」「顔から始まる赤い発疹が下に広がっている」、この3つが揃ったら、麻疹を疑ってください。
他の発疹性疾患とどう見分けるか
子どもの発疹といえば、突発性発疹が圧倒的に多い病気です。こちらは3〜4日高熱が続いた後、解熱と同時に体幹から発疹が出ます。顔には出にくく、咳や目の充血はありません。麻疹のような前駆症状の激しさがないのがポイントです [1]。
風疹は麻疹と似ていますが、発熱は軽く、リンパ節腫脹(特に耳の後ろ)が目立ちます。発疹も3日程度で消え、色素沈着を残しません [3]。
川崎病は5日以上続く発熱・目の充血・発疹・口の中の赤み・首のリンパ節腫脹・手足の変化などの症状が出ますが、咳や鼻水は目立ちません [4]。発疹のパターンも多様で、麻疹のような頭から足への広がり方は示しません。
ウイルス性の発疹(エンテロウイルス、パルボウイルスB19など)はさらに多彩で、一つひとつの鑑別は小児科医でも迷うことがあります。だからこそ、「麻疹かも」と頭をよぎった時点で、まず電話で相談していただきたいのです。
受診の前に、必ず電話してください
麻疹が疑われたとき、医療機関の待合室に直接入るのは避けてください [2]。麻疹は空気感染するので、待合室にいる妊婦さんや、ワクチン未接種の赤ちゃん、免疫が下がっている方に広げてしまう恐れがあります。
正しい行動は、次の順番です。
- 2まず電話で「麻疹かもしれない」と伝える。病院側が専用の入口や診察時間を案内します
- 4可能なら自家用車で来院する。電車・バスは避ける
- 6病院の指示した場所・時間に到着する
- 8待合室には絶対に入らない

おかもん先生より
実際に、春先の海外帰りのお子さんが外来に「風邪と発疹で」と来たことがあります。診察中にコプリック斑を見つけて冷や汗をかきました。すぐに個室に移していただき、他の患者さんとの接触を最小限にして対応できましたが、もし待合室に1時間いたら、その後2時間は新しい患者さんを入れられません。電話一本で守れるものが多いので、「大げさかな」と思う段階でもぜひ連絡してください。迷惑な質問ではありません。助けになる質問です。
受診のタイミングの目安
発熱だけで発疹がない段階でも、次のどれかがあれば早めの連絡をおすすめします。
- 海外渡航後10〜14日以内の発熱
- 家族や保育園で麻疹患者との接触がある
- 高熱+咳・鼻水・目の充血が強く、風邪にしては重い
- 一度下がった熱が再び上がった
- 赤い発疹が顔から始まって下に広がっている
発熱と発疹に加えて、ぐったりしている、水分がとれない、けいれんがある、これらは合併症のサインです。夜間でもすぐ医療機関に連絡してください。
まとめ
- 麻疹はカタル期→発疹期→回復期と進む。カタル3徴と二峰性発熱が鍵
- コプリック斑は発疹直前の1〜2日だけ見える麻疹特有の所見
- 突発性発疹・風疹・川崎病との鑑別は症状の経過で考える
- 疑ったら直接受診せず、まず電話。これで他の家族を守れる