愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.422
頭の形が気になる
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「うちの子の頭、片方が平らです」「後ろが絶壁で」、乳児健診でよくご相談いただきます。1992年に仰向け寝が推奨されてからSIDS(乳幼児突然死症候群)は劇的に減りましたが、一方で「位置的頭蓋変形(positional plagiocephaly)」が増えました [1]。今回はこの頭の形についてお伝えします。
位置的頭蓋変形とは
赤ちゃんの頭蓋骨は柔らかく、同じ姿勢で寝続けると重みで変形します [1]。これは病気ではなく、寝姿勢の影響による形の偏りです。
| 主な変形の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 斜頭症(plagiocephaly) | 片方の後頭部が平ら、非対称 |
| 短頭症(brachycephaly) | 後頭部全体が平ら(絶壁) |
| 長頭症(scaphocephaly) | 前後に長い(早産児に多い) |
Mawji ら (2013) の研究では、生後2か月時点で約46.6%の乳児に何らかの位置的頭蓋変形が見られたと報告されています [1]。決して珍しいことではありません。
| リスク因子 | 内容 |
|---|---|
| 男児 | やや多い |
| 第一子 | 子宮内の姿勢 |
| 多胎 | 子宮内スペース |
| 胎位異常 | 骨盤位など |
| 筋性斜頸 | 首を片方に向けやすい |
| 仰向け寝 | 圧力が同じ方向に |
| 運動発達の遅れ | 寝返りが遅いと改善しない |
Mawji らの追跡研究では、2歳までにほとんどが自然または介入により改善しました [1]。
ポイント
- 位置的頭蓋変形は非常に多い [1]
- 柔らかい頭蓋骨と寝姿勢の影響
- 多くは自然改善
頭蓋骨縫合早期癒合症との区別
位置的頭蓋変形とは別に、「頭蓋骨縫合早期癒合症(craniosynostosis)」という疾患があります [2]。これは頭蓋骨の継ぎ目が早く閉じてしまう先天的な病気で、手術が必要な場合があります。
位置的変形
- 頻度
- 多い
- 頭の形
- 平行四辺形(斜頭症)
- 耳の位置
- 前後にずれる
- 前頭部
- 変形側が前に出る
- 頭囲
- 正常
- 縫合部を触る
- 平滑
- 治療
- 体位変換など
縫合早期癒合症
- 頻度
- 約2,000人に1人 [2]
- 頭の形
- 台形・三角形など独特の形
- 耳の位置
- 疾患により変化
- 前頭部
- 疾患により変化
- 頭囲
- 成長パターンに異常
- 縫合部を触る
- 硬い隆起あり
- 治療
- 手術
見分けが難しい場合は、小児科または形成外科での診察を [2]。エコーや3D CTで確定診断ができます。
単純な「絶壁」とは違う独特の形、頭囲が小さい・大きい場合は早めに受診を。
ポイント
- 縫合早期癒合症は約2000人に1人 [2]
- 独特の形と頭囲異常に注意
- 迷ったら受診
自宅でできる対策は
AAPのガイドラインでは、位置的頭蓋変形の第一選択は体位変換とタミータイムです [3]。
| 体位変換の工夫 | 内容 |
|---|---|
| 枕の向きを変える | 寝る時の向きを日替わり |
| お気に入りを反対側に | 見たいものを変形側と反対に |
| 授乳の向きを変える | 左右交互に抱っこ |
| 抱っこの向き | 意識的に向きを変える |
| ベッドの位置 | 光や音源を反対側に |
| 昼寝時の向き | 寝入り時に意識的に調整 |
| タミータイム(うつぶせ遊び) | 内容 |
|---|---|
| 開始時期 | 生後すぐ〜 |
| 頻度 | 1日数回 |
| 1回の時間 | 数分〜10分 |
| 注意 | 起きている時、大人の監視下で |
| 目的 | 後頭部への圧力を減らし、首の筋力を育てる |
タミータイムは頭の形だけでなく、首・肩・体幹の筋力発達にも重要です [3]。寝ている時はNG、起きている時のみ行います。
ポイント
- 体位変換とタミータイムが第一選択 [3]
- 日常の小さな工夫の積み重ね
- タミータイムは起きている時のみ
ヘルメット治療は
重度の変形で生後4〜6か月以降も改善しない場合、ヘルメット治療(頭蓋矯正療法)の選択肢があります [4]。
| ヘルメット治療の概要 | 内容 |
|---|---|
| 開始時期 | 生後4〜6か月 |
| 終了時期 | 12〜18か月 |
| 装着時間 | 1日23時間 |
| 期間 | 3〜6か月 |
| 費用 | 保険適用外(40〜50万円程度) |
| 対象 | 中等度〜重度の変形 |
ヘルメット治療は日本では保険適用外で、効果と費用のバランスを考える必要があります [4]。van Wijk ら (2014) のランダム化比較試験では、中等度の変形ではヘルメットと自然経過の2歳時の差は小さいと報告されています [4]。一方、重度の変形では有効という報告もあります [5]。
| 治療の検討ポイント | 内容 |
|---|---|
| 変形の重症度 | 軽度〜中等度は自然経過を優先 |
| 年齢 | 4〜6か月までに開始 |
| 継続できるか | 23時間装着のストレス |
| 家族の希望 | エビデンスを理解した上で |
ポイント
- ヘルメット治療は重症例の選択肢 [4]
- 中等度までは自然経過を優先
- 保険適用外で費用と効果の見極め
いつまでに改善しますか
多くは6〜12か月以内に改善に向かいます [1]。寝返り・お座り・つかまり立ちと運動発達が進むにつれ、頭にかかる圧力が分散されるためです。
| 経過の目安 | 内容 |
|---|---|
| 生後2〜3か月 | 圧力変形のピーク |
| 4〜6か月 | 寝返りで圧が分散 |
| 6〜9か月 | お座りで頭に縦の力 |
| 12か月頃 | 立位で大きく改善 |
| 2歳頃 | ほとんどが気にならない程度に |
髪の毛が生えそろうと、気にならなくなることも多いです。

おかもん先生より
長男の頭が少し斜頭でした。体位変換を意識しながら、「この子の個性」と受け入れて見守りました。今はもう髪の毛で全く分かりません。親としては心配でしたが、医師としては「ほとんどは改善する」と知っていたので気持ちが楽でした。知識は不安を消します。
ポイント
- 運動発達とともに改善 [1]
- 2歳頃にはほとんど気にならない
- 髪の毛が生えると目立たない
今号のまとめ
- 位置的頭蓋変形は仰向け寝で増え、多くは自然改善
- 体位変換とタミータイムが第一選択
- 頭蓋骨縫合早期癒合症は別物、独特の形は要受診
- ヘルメット治療は生後4〜6か月の重症例が対象
- 運動発達とともに2歳頃には目立たなくなる
- 知識が不安を減らす
あわせて読みたい
- Vol.421「成長曲線の読み方」
- Vol.023「筋性斜頸」
- Vol.009「SIDS予防」
ご質問・ご感想
「頭の形が気になる」「ヘルメットは必要?」などは外来でお気軽に。
愛育病院 小児科 おかもん先生
本メルマガの内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。