愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.284
「食べない、食べすぎ、それは病気かもしれない」、摂食障害
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「娘がほとんど食べなくなりました」「食べた後にトイレにこもっています」、摂食障害は命に関わることもある深刻な精神疾患です。近年、発症年齢の低年齢化が指摘されており、小学生での発症も珍しくなくなっています [1]。早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。
Q1.「摂食障害とはどんな病気ですか?」
——摂食障害にはどのような種類がありますか?
摂食障害は食行動の異常を主症状とする精神疾患の総称です [2]。
| 種類 | 主な特徴 |
|---|---|
| 神経性やせ症(AN) | 体重増加への強い恐怖、極端な食事制限、やせ [2] |
| 神経性過食症(BN) | 過食+排出行動(嘔吐・下剤等) [2] |
| 過食性障害(BED) | 過食発作を繰り返すが排出行動なし [2] |
| ARFID | 食への興味の欠如、感覚的嫌悪による食事制限 [2] |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 有病率(AN) | 生涯有病率 約0.3〜1%(女性) [1] |
| 有病率(BN) | 生涯有病率 約1〜3%(女性) [1] |
| 好発年齢 | 14〜19歳が多いが低年齢化傾向 [1] |
| 男女比 | 女性に圧倒的に多い(約10:1)が男児も罹患する [1] |
| 死亡率(AN) | 標準化死亡比(SMR)が精神疾患の中で最も高いと報告されている [3] |
ポイント
- 摂食障害は命に関わりうる深刻な疾患 [3]
- 神経性やせ症の死亡率は精神疾患の中で最高 [3]
- 低年齢化が進み、小学生での発症も増加 [1]
Q2.「どのようなサインに注意すべきですか?」
——早期発見のためにどんなサインを見ればよいですか?
以下のサインに気をつけてください [4]。
| 身体面のサイン | 行動面のサイン |
|---|---|
| 急激な体重減少 | 食事を避ける、少量しか食べない |
| 成長曲線の停滞・低下 | 食後にトイレに行く |
| 月経の停止・遅延 | カロリーを過度に気にする |
| 疲労感、めまい | 過度な運動 |
| 皮膚の乾燥、うぶ毛の増加 | 体重を頻繁に測る |
| 手の甲のたこ(嘔吐の証拠) | 食品のラベルを過度にチェック |
| 緊急受診が必要なサイン |
|---|
| BMIが年齢別の3パーセンタイル未満 |
| 心拍数が50回/分未満 |
| 失神、意識障害 |
| 電解質異常(低カリウム等) |
| 食事を全く摂れない |
ポイント
- 成長曲線の変化が最も重要な早期発見の手がかり [4]
- 食後のトイレ、過度な運動は要注意サイン
- 上記の緊急サインがあればすぐに受診を
Q3.「摂食障害の原因は何ですか?」
——なぜ摂食障害になるのですか?
摂食障害は生物学的・心理的・社会的要因が複合して発症します [5]。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 遺伝的要因 | 遺伝率は約50〜80%(AN) [5] |
| 脳の神経伝達物質 | セロトニン系の機能異常 [5] |
| 心理的要因 | 完璧主義、低い自尊感情、身体イメージの歪み [4] |
| 社会的要因 | やせ礼賛文化、SNS、ダイエット情報 [4] |
| きっかけ | ダイエット、いじめ、部活での体重管理、転校 [4] |
「ダイエットが摂食障害の最大のリスク因子です [4]。子どもに安易なダイエットをさせないでください。」
ポイント
- 摂食障害は多因子疾患であり、本人の意思の問題ではない [5]
- ダイエットが最大のリスク因子 [4]
- SNSでの「やせ」の美化が発症に関与しうる
Q4.「治療はどのように行いますか?」
——摂食障害の治療法を教えてください
治療は栄養回復と心理的支援の両面から行います [3]。
| 治療の柱 | 内容 |
|---|---|
| 栄養回復 | 安全な体重増加、管理栄養士による食事計画 [3] |
| 家族療法(FBT) | 家族が食事管理をリードする。小児ANに最もエビデンスあり [6] |
| 認知行動療法(CBT-E) | BNに対して高いエビデンス [3] |
| 身体管理 | 心電図、電解質、骨密度のモニタリング [3] |
| 入院治療 | 重症例(バイタル不安定、自殺リスク等) [3] |
| 家族療法(FBT)の3段階 |
|---|
| 第1段階:親が食事管理をリードし、体重回復を目指す |
| 第2段階:食事管理を段階的に本人に戻していく |
| 第3段階:通常の思春期の課題(自立等)に取り組む |
ポイント
- 小児の神経性やせ症には家族療法(FBT)が第一選択 [6]
- 栄養回復が最優先(低栄養は脳機能にも影響) [3]
- 重症例は入院治療が必要 [3]
Q5.「家庭で気をつけることは?」
——親として何に気をつければよいですか?
家庭環境は予防にも回復にも重要です [4]。
| 予防のためにできること | 具体的な方法 |
|---|---|
| 体型への否定的なコメントを避ける | 「太った?」「やせた方がいい」は禁句 |
| 家族で一緒に食事をする | 規則正しい食事習慣の土台を作る |
| 多様な体型を肯定する | 「体は人それぞれ」と伝える |
| 自己肯定感を育てる | 外見以外の長所を認める |
| 安易なダイエットをさせない | 成長期のダイエットの危険性を知る |
| 回復期の家族の役割 |
|---|
| 食事を責めない、食事中の緊張を減らす |
| 治療チームと密に連携する |
| 親自身のメンタルヘルスにも配慮する |
| きょうだいへのケアも忘れない |
ポイント
- 体型への否定的なコメントは摂食障害のリスクを高める [4]
- 家族の食卓を安全な場所にすることが大切
- 回復には時間がかかるため、長期的な支援が必要
今号のまとめ
- 摂食障害は命に関わりうる深刻な精神疾患
- 成長曲線の変化が早期発見の鍵
- ダイエットが最大のリスク因子
- 小児のANには家族療法(FBT)が第一選択
- 体型への否定的コメントを避けることが予防に重要
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- Vol.050「ARFID(回避・制限性食物摂取症)」
- Vol.093「子どもの偏食と食べムラ」
- Vol.285「自傷行為」
- Vol.288「思春期の心の変化」
ご質問・ご感想
「子どもが食べなくなって心配です」「体重がどんどん減っています」など、ご質問がございましたらお気軽にお寄せください。
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