愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.282
「わざとじゃないんです」、チック症の正しい理解
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「子どもが頻繁にまばたきをするんです」「首をカクカク動かすのが気になって」、外来でよくいただくご相談です。チック症は小児の約15〜20%が一度は経験するとされていて [1]、思ったより身近な症状です。ただ、「わざとやってるんでしょ」「やめなさい」と声をかけてしまう保護者の方は少なくありません。チックは本人の意思で止められる動きではない、ここを最初にお伝えしておきたいと思います。
Q1.「チック症とはどんな病気ですか?」
——チックってどういうものですか?
チックは、突発的で急に出る、繰り返しの運動や発声のことです [2]。本人の意思とは関係なく出てしまうのが特徴です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 有病率 | 小児の約15〜20%が一過性に経験 [1] |
| 好発年齢 | 4〜6歳に発症が多い [1] |
| 男女比 | 男児に多い(約3〜4:1) [1] |
| ピーク | 10〜12歳で症状が最も強くなることが多い [3] |
| 自然経過 | 約70〜80%は思春期後半までに軽快 [3] |
| チックの種類 | 具体例 |
|---|---|
| 単純運動チック | まばたき、首振り、肩すくめ、顔しかめ [2] |
| 複雑運動チック | 飛び跳ね、物に触る、回転する [2] |
| 単純音声チック | 咳払い、鼻すすり、うなり声 [2] |
| 複雑音声チック | 単語の反復、状況に合わない言葉 [2] |
ポイント
- チックは不随意運動であり、わざとではない [2]
- 小児の約15〜20%が一過性に経験する一般的な症状 [1]
- 多くは思春期後半までに自然に軽快する [3]
Q2.「チック症の分類を教えてください」
——チック症にも種類があるのですか?
DSM-5-TRでは持続期間と種類によって分類されます [2]。
基準
- 暫定的チック症
- 運動チックまたは音声チックが1年未満 [2]
- 持続性運動または音声チック症
- 運動チックまたは音声チックが1年以上 [2]
- トゥレット症
- 運動チック+音声チックの両方が1年以上 [2]
頻度
- 暫定的チック症
- 最も多い
- 持続性運動または音声チック症
- やや少ない
- トゥレット症
- 約0.3〜1% [1]
| チックの経過の特徴 |
|---|
| 症状は増減を繰り返す(waxing and waning) |
| ストレス、疲労、興奮で悪化しやすい [3] |
| 集中している時は目立たないことが多い |
| 睡眠中は消失または軽減する [3] |
| チックの種類は時期によって変化する |
ポイント
- 多くは暫定的チック症で1年以内に消失 [2]
- トゥレット症は運動+音声チックが1年以上持続 [2]
- 症状は増減を繰り返すのが特徴 [3]
Q3.「チックの原因は何ですか?」
——ストレスが原因ですか? 私の育て方が悪いのでしょうか?
チック症は大脳基底核を中心とした神経回路の機能のゆらぎが背景にあると考えられています。育て方やストレスが原因ではないので、まずそこを押さえてください [4]。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 遺伝的要因 | 遺伝率は約50〜60% [4] |
| 神経生物学的要因 | 大脳基底核のドパミン系の過活動 [4] |
| 環境的要因 | ストレスは悪化因子であるが原因ではない [3] |
| 併存症の影響 | ADHD、OCDが併存しやすい [5] |
「ストレスはチックを悪化させる要因ではあるけれど、原因ではないんです [3]。お母さんの育て方のせいでもない。ここは何度でもお伝えしたいところです。」
ポイント
- チック症は脳の神経回路の機能異常が原因 [4]
- 育て方やストレスが原因ではない
- ストレスは悪化因子にはなりうる [3]
Q4.「治療は必要ですか?」
——チックは治療すべきですか?
軽症のチックは治療不要で、経過観察が基本です [3]。
| 重症度 | 対応 |
|---|---|
| 軽症(日常生活に支障なし) | 経過観察、心理教育 [3] |
| 中等症(社会生活に一部支障) | 行動療法(CBIT/HRT) [6] |
| 重症(著しい機能障害) | 行動療法+薬物療法 [6] |
| 治療法 | 内容 |
|---|---|
| 心理教育 | チックの仕組みを家族・学校に説明 [3] |
| CBIT(包括的行動療法) | チックに対する行動介入で最もエビデンスあり [6] |
| HRT(ハビットリバーサル) | チックに気づき、拮抗する動作を行う訓練 [6] |
| 薬物療法 | 重症例にα2作動薬、抗精神病薬 [3] |
ポイント
- 軽症では治療不要、経過観察が基本 [3]
- 治療が必要な場合は行動療法(CBIT)が第一選択 [6]
- 「やめなさい」と注意するのは逆効果
Q5.「家庭や学校での対応は?」
——周囲にはどう説明すればよいですか?
チックを指摘しない、注意しないことが最も重要です [3]。
| 推奨される対応 | 具体的な方法 |
|---|---|
| チックを指摘しない | 気づいても知らないふりをする |
| リラックスできる環境 | 過度なプレッシャーを避ける |
| 十分な睡眠 | 疲労はチックを悪化させる |
| 学校への説明 | 担任にチック症について情報提供 |
| からかいへの対応 | いじめにつながらないよう学校と連携 |
| 避けるべき対応 |
|---|
| 「やめなさい」と注意する |
| チックのたびに反応する |
| 「気合で止められるでしょ」と言う |
| チックを真似する |
ポイント
- チックを指摘・注意しないことが最も大切 [3]
- 学校への情報提供でからかい防止を
- 十分な睡眠と適度なストレス管理が症状緩和に
今号のまとめ
- チック症は小児の約15〜20%が経験する一般的な症状
- チックは不随意運動であり、わざとではない
- 多くは思春期後半までに自然に軽快する
- 軽症では治療不要、経過観察が基本
- 「やめなさい」と注意するのは逆効果
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ご質問・ご感想
「チックが増えたり減ったりします」「学校での対応をどうすればよいですか?」など、ご質問がございましたらお気軽にお寄せください。
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