愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.138
「叱ってばかりで疲れます」、ペアレントトレーニングの基礎
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「何度言っても聞かない」「毎日叱ってばかりで自己嫌悪」。発達障害のあるお子さんの子育ては、通常以上にストレスが大きくなりがちです。ペアレントトレーニング(ペアトレ)は、保護者がお子さんへの効果的な関わり方を学ぶプログラムで、エビデンスに基づいた子育て支援の方法です。今回は、ペアレントトレーニングの基礎をお伝えします。
Q1.「ペアレントトレーニングとは?」
——ペアレントトレーニングとは何ですか?親が訓練されるのですか?
ペアレントトレーニングは、保護者が子どもへの効果的な関わり方のスキルを学ぶプログラムです [1]。『親が悪いから訓練する』のではなく、お子さんの特性に合った関わり方を知ることで、親子の関係がより良くなることを目指します。
| ペアレントトレーニングの特徴 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 発達障害のあるお子さんの保護者 |
| 形式 | 小グループ(5-8人程度)、全6-10回 |
| 頻度 | 週1回または隔週、1回90分程度 |
| 方法 | 講義+ロールプレイ+宿題(実践) |
| 効果 | エビデンスで実証済み |
ポイント
- 保護者が関わり方のスキルを学ぶプログラム
- 「親が悪い」のではない
- 親子関係の改善が目的
Q2.「どんなことを学ぶのですか?」
——具体的にどんな内容ですか?
一般的なプログラムの流れを紹介します [2]。
テーマ
- 第1回
- 行動の理解
- 第2回
- 肯定的な注目
- 第3回
- 効果的な指示の出し方
- 第4回
- 好ましくない行動への対応
- 第5回
- トークンエコノミー
- 第6回
- タイムアウト
- 第7回
- まとめと振り返り
学ぶこと
- 第1回
- 行動を「好ましい」「好ましくない」「危険」の3つに分ける
- 第2回
- 褒め方のコツ。「ほめるポイント」を見つける
- 第3回
- CCQ(Calm, Close, Quiet)の原則
- 第4回
- 計画的な無視(注目を外す)
- 第5回
- ごほうびシステムで行動を強化
- 第6回
- 危険な行動への対応
- 第7回
- 学んだスキルの定着
「最も重要なのは『褒める』スキルです。発達障害のあるお子さんは叱られる経験が多くなりがちです。好ましい行動を見つけて褒めることで、その行動が増え、問題行動が自然に減っていきます。」
ポイント
- 行動を3つに分類するところから始まる
- 「褒める」スキルが最も重要
- 好ましい行動を増やすことで問題行動が減る
Q3.「本当に効果がありますか?」
——褒めるだけで変わりますか?
多くの研究でエビデンスが実証されています [3]。
| 研究結果 | 効果 |
|---|---|
| 子どもの問題行動 | 有意に減少(効果量 中程度) |
| 保護者のストレス | 有意に低下 |
| 親子関係 | 肯定的なやりとりが増加 |
| 子どもの自己肯定感 | 改善 |
| 効果の持続 | 6か月以上持続する報告あり |
「効果が出るまでには2-3週間程度かかります。最初は『褒めるところが見つからない』と感じるかもしれませんが、視点が変わると必ず見つかるようになります。」
| よくある変化のプロセス |
|---|
| ①「褒めるところが見つからない」 |
| ②小さな「良い行動」に気づけるようになる |
| ③褒めると子どもの反応が変わる |
| ④子どもの行動が変わり始める |
| ⑤叱る場面が減り、親のストレスも減る |
ポイント
- 問題行動の減少効果がメタ解析で確認されている
- 効果が出るまで2-3週間
- 親のストレスも低下する
Q4.「日常で使えるコツを教えてください」
——すぐに使えるテクニックはありますか?
今日から使える3つのコツをお伝えします [4]。
方法
- ①25%ルール
- 完璧でなくても、できた部分を褒める
- ②CCQの指示
- Calm(穏やかに)、Close(近づいて)、Quiet(静かに)
- ③行動の実況中継
- 好ましい行動をしている時に言葉で描写する
例
- ①25%ルール
- 「靴を揃えようとしたんだね(片方だけでもOK)」
- ②CCQの指示
- 怒鳴らず、近くで、穏やかに指示
- ③行動の実況中継
- 「今、静かに本を読んでいるね」
「特に25%ルールは効果的です。完璧にできなくても、取り組もうとした気持ちを褒めることで、お子さんの意欲が育ちます。」
| やりがちなNG | 代わりにこう言う |
|---|---|
| 「なんで片付けないの!」 | 「おもちゃを1つ箱に入れたね!」 |
| 「早くしなさい!」 | 「靴を履こうとしているね」 |
| 「いつも忘れるんだから」 | 「今日は鉛筆を入れたね」 |
ポイント
- 25%ルール:完璧でなくても褒める
- CCQ:穏やかに、近づいて、静かに指示
- 行動の実況中継で好ましい行動に注目
Q5.「港区でペアレントトレーニングを受けるには?」
——どこで受けられますか?
港区で受けられる場所をご紹介します [5]。
| 実施場所 | 特徴 |
|---|---|
| 医療機関 | 発達外来のあるクリニック・病院で実施 |
| 児童発達支援事業所 | 療育の一環として保護者プログラムを実施 |
| 港区障害保健福祉センター | 区の事業として定期的に開催 |
| NPO・民間団体 | 各種ペアトレプログラムを提供 |
「まずはかかりつけ小児科に相談してください。お子さんの状況に合ったプログラムをご紹介します。」
ポイント
- 医療機関、療育事業所、区の施設等で実施
- かかりつけ小児科に相談が第一歩
- 複数のプログラムから選べる
今号のまとめ
- ペアレントトレーニングは保護者が関わり方を学ぶプログラムです
- 「褒める」スキルが最も重要。好ましい行動に注目する
- エビデンスで効果が実証されています(問題行動の有意な減少)
- 25%ルール、CCQ、行動の実況中継を今日から試してみてください
- かかりつけ小児科にまずご相談ください
あわせて読みたい
- Vol.099「自閉スペクトラム症(ASD)の基礎」
- Vol.101「ADHD(注意欠如・多動症)の基礎」
- Vol.127「発達障害と療育」
- Vol.117「発達障害の二次障害」
ご質問・ご感想
「ペアトレを受けてみたい」「褒めるのが難しい」など、ご経験やご質問がございましたら、お気軽にお寄せください。
愛育病院 小児科 おかもん先生
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