愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.410
上の子を優先する理由
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「上の子を優先しましょう」という育児アドバイス、一度は耳にしたことがあると思います。でも「下の子がかわいそう」「不公平じゃないか」と戸惑う方も多いです。今回はこの「上の子優先」について、科学的な根拠と、外来でお伝えしている実践のコツをまとめます。
上の子優先の根拠は何ですか
上の子は、弟や妹の誕生で「親という愛着対象を初めて誰かと分け合う」という危機を体験します。この時期の愛着が不安定になると、その後の情緒発達に影響が残ることが知られています [1]。
Volling (2012) のレビューでも、出産後3か月以内の上の子の攻撃行動や不安症状は、親が上の子に対して継続的に応答してあげることで軽減すると報告されています [1]。
| 上の子を優先する理由 | 詳細 |
|---|---|
| 愛着の再確認 | 「自分は大事にされている」実感が必要 |
| 嫉妬の緩和 | 嫉妬は正常だが、放置すると攻撃に転化 |
| 退行の最小化 | 不安が強いほど赤ちゃん返りが激しくなる |
| 長期の関係性 | 上の子の情緒安定は、後のきょうだい仲の基礎 |
一方で新生児は、親の応答の早さや温かさはちゃんと感じ取りますが、「お兄ちゃんと自分でどっちが時間をかけてもらったか」を記憶として比べる力はまだありません [2]。つまり、上の子に時間をかけても、下の子は「不公平だ」と感じているわけではないんです。
必要なケアを必要なだけ与えるのが「公平」。同じ時間を割くのが「平等」。育児では公平の方が大切です。
ポイント
- 上の子の愛着安定が家族全体の鍵 [1]
- 新生児は時間量より応答性を感じる [2]
- 「平等」より「公平」
具体的にどう優先すればいいですか
「上の子優先」は抽象的ですが、日常の小さな選択の積み重ねです [3]。
| 場面 | 上の子優先の行動 |
|---|---|
| 同時に泣いた | 上の子を先に抱きしめる(赤ちゃんは少し待っても大丈夫) |
| 食事 | 上の子の食事を先に準備 |
| お風呂 | 上の子と先に入る日を作る |
| 呼ばれた時 | 赤ちゃんの授乳中でも「ちょっと待っててね」と目を合わせる |
| お出かけ | 上の子の好きな場所を優先 |
| 挨拶 | 帰宅時に上の子を先に呼ぶ |
特に「ふたりが同時に泣いたとき、上の子を先に」というのは、多くの親御さんがためらうところです。でも、ここが一番効きます [3]。赤ちゃんは数分泣いていても発達に影響はありません。逆に上の子は「やっぱり自分は後回しなんだ」という体験を繰り返すほど、心が削られていきます。
「放っておく」のではなく、「少しだけ待ってもらう」です。「ちょっと待っててね」と声をかけてあげれば十分。
ポイント
- 同時の時は上の子を先に [3]
- 声かけだけでもメッセージになる
- 日常の小さな選択の積み重ね
下の子が大きくなってきたら
下の子が1歳を過ぎて自分で動きはじめると、「上の子優先」の意味合いも変わってきます。この時期からは少しずつ「平等」も意識する段階に入ります [4]。
| 下の子の月齢 | 優先のかたち |
|---|---|
| 0〜6か月 | 上の子優先を強めに |
| 6〜12か月 | 上の子優先 + 下の子との接触時間 |
| 1〜2歳 | 場面ごとに使い分け |
| 2歳以降 | 各自のニーズに応じて平等に |
ただし、優先のルールを変えるときは上の子にちゃんと説明を [4]。「〇〇ちゃんも大きくなってきたから、これからは順番こね」と言葉にしてあげると、納得しやすいです。
ポイント
- 下の子の発達に応じて優先を調整 [4]
- ルール変更は言語化して伝える
- 2歳以降は各自のニーズで判断
下の子がかわいそうではないですか
外来で本当によく聞かれる質問です。答えはシンプルに「下の子はかわいそうじゃないですよ」。
Kramerらの研究によれば、下の子は「常に上のロールモデルがいる環境」で育つので、社会性や言語発達、感情の読み取りが上の子より早く育つ傾向があるとされています [5]。上の子優先で親のケアが少し減る分を、下の子は観察学習でしっかり補ってくれるんです。
| 下の子のメリット | 内容 |
|---|---|
| 観察学習 | 上の子の行動から学ぶ |
| 早期の社会化 | きょうだいという「他者」が常にいる |
| 語彙の発達 | 上の子との会話から言葉を吸収 |
| 運動発達 | 上の子の動きを真似して刺激 |
もちろん下の子にもたっぷり愛情は必要です。ただ「時間の総量」で焦らなくていい、ということです。

おかもん先生より
うちは3人きょうだいで、僕は真ん中でした。母は意識して「ひとりの時間」を順番に作ってくれていて、「お兄ちゃんとさっき遊んだから次はあんたの番ね」と順繰りに回していたのを覚えています。上の子優先でも下の子優先でもなく「ひとりずつ順番に主役」。今でもこれが育児の理想だと思っています。
ポイント
- 下の子は観察学習で育つ [5]
- 時間の総量より応答の質
- 「順番に主役」が現実的な落とし所
パートナーとの分担はどうする
理想は「上の子はパパ、下の子はママ(その逆もあり)」のように、担当を明確に分けることです [6]。Kuoら (2018) の研究では、親が役割分担を決めている家庭ほど上の子の情緒的な問題が少なかったと報告されています [6]。
| 分担パターン | メリット |
|---|---|
| 完全分担 | 上の子が「お父さんは自分のもの」と感じやすい |
| 曜日交替 | どちらの親ともバランスが取れる |
| 場面分担 | お風呂はパパ、寝かしつけはママなど |
| 補完型 | 片方が疲れた時に交替 |
完璧にやる必要はまったくありません。「上の子に対して、夫婦のどちらかが意識して向き合う時間」が日常のなかにあれば、それで十分です。
ポイント
- パートナーとの役割分担が効果的 [6]
- 完璧でなくてよい
- 「意識する」ことが最初の一歩
今号のまとめ
- 上の子優先は「不公平」ではなく、愛着安定のための戦略
- 新生児は時間量より応答性を感じる
- 同時の時は上の子を先に、下の子は「少し待ってもらう」
- 下の子は観察学習で育つので時間の総量で焦らない
- 下の子の成長に応じて優先のかたちを変える
- パートナーとの分担が効果を高める
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- Vol.411「きょうだい間の比較をやめる」
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ご質問・ご感想
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