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「乳児湿疹と言われたけど……アトピーとの違い、どう見分ける?」
Vol.17皮膚

「乳児湿疹と言われたけど……アトピーとの違い、どう見分ける?」

乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の違いと見分け方

皮膚0〜6ヶ月・6〜12ヶ月9
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 6·Q&A 5問収録

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この記事のポイント

  • 乳児湿疹は赤ちゃんの湿疹の総称であり、ほとんどが自然によくなる
  • 2ヶ月以上続く・強いかゆみ・場所が広がる場合はアトピーの可能性があり、早めの受診が大切
  • 湿疹の早期治療が食物アレルギーの予防にもつながる

愛育病院 小児科おかもん だより Vol.17

「乳児湿疹と言われたけど……アトピーとの違い、どう見分ける?」

今号のポイント

  1. 2
    乳児湿疹は赤ちゃんの湿疹の総称であり、ほとんどが自然によくなる
  2. 4
    2ヶ月以上続く・強いかゆみ・場所が広がる場合はアトピーの可能性があり、早めの受診が大切
  3. 6
    湿疹の早期治療が食物アレルギーの予防にもつながる

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

赤ちゃんの顔や体に湿疹が出ると、「乳児湿疹?それともアトピー?」と心配になりますよね。まずお伝えしたいのは、乳児湿疹のほとんどは自然によくなるということです。とはいえ、1か月健診や3〜4か月健診で「様子を見ましょう」と言われても、治らないと不安は募ります。

今回は、乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の違い、そして「様子を見る」で見逃さないためのポイントを整理します。

Q1.「赤ちゃんの湿疹、いろいろ種類があるって本当ですか?」

——生後3週間くらいから顔にブツブツが出てきました。「乳児湿疹」と言われましたが、具体的にはどんな種類があるんですか?

「乳児湿疹」というのは実は病名ではなく、赤ちゃんの時期に出る湿疹の総称なんです。主に以下の種類があります

  • 新生児ざ瘡(にきび): 生後2〜4週に顔に出る赤いブツブツ。母体ホルモンの影響で、石鹸で洗えば1〜2ヶ月で自然に治る
  • 脂漏性湿疹: 頭皮や眉毛に黄色いかさぶた状のもの。皮脂の分泌が多い部位に出る
  • 接触性皮膚炎: よだれかぶれ、おむつかぶれなど。刺激物質との接触が原因
  • アトピー性皮膚炎: かゆみを伴い、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性的な湿疹

——全部まとめて「乳児湿疹」と呼んでいるんですね。では、どうやってアトピーかどうかを見分けるんですか?

大事なポイントが3つあります。期間・かゆみ・場所です

ポイント

  • 乳児湿疹は赤ちゃんの湿疹の総称であり、1つの病気ではない
  • 新生児ざ瘡や脂漏性湿疹は石鹸で洗って保湿すれば自然に治ることが多い
  • 問題は「乳児湿疹」の中にアトピー性皮膚炎が隠れている場合

Q2.「アトピーかどうか、どうやって見分ければいいですか?」

——「しばらく様子を見ましょう」と言われましたが、いつまで様子を見ていいのか不安です

アトピー性皮膚炎を疑う3つのサインを覚えておいてください

乳児湿疹(一過性)

期間
数週間〜1ヶ月で改善
かゆみ
軽度or なし
場所
顔(頬・額)中心

アトピー性皮膚炎

期間
2ヶ月以上続く・繰り返す
かゆみ
強いかゆみ(顔をこする、体をよじる)
場所
顔→首・体幹・肘や膝の内側にも広がる

日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024では、「強いかゆみのある湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返し、乳児では2ヶ月以上続くもの」をアトピー性皮膚炎と定義しています [1]

——2ヶ月が目安なんですね。家族にアレルギーがあると、なりやすいですか?

はい。ご両親のどちらかにアトピー性皮膚炎やぜんそく、花粉症がある場合、赤ちゃんのアトピーリスクは高くなります。また、フィラグリン遺伝子(FLG)(肌のうるおいバリアを作るための設計図となる遺伝子)の変異がある場合、生まれつき肌のバリア機能が弱く、アトピーを発症しやすいことがわかっています [2][6]

ポイント

  • 2ヶ月以上続く湿疹はアトピー性皮膚炎の可能性がある
  • 強いかゆみはアトピーの最も重要な特徴
  • 家族歴(アトピー・ぜんそく・花粉症)があるとリスクが高い

Q3.「「様子を見る」間に、悪いことが起きたりしませんか?」

——治療しないで放っておくと、食物アレルギーになるって聞いたことがあるのですが……

そのご心配、科学的な根拠があります。「経皮感作(けいひかんさ)」と呼ばれる現象です [3]

——けいひかんさ?

簡単に言うと、荒れた肌から食べ物の成分が体に入ることで、アレルギー体質になってしまう現象です。健康な肌はバリアがしっかりしているので、外からの異物を通しません。でも、湿疹で肌が荒れていると、バリアに「穴」が開いた状態になり、ハウスダストに含まれる微量の卵やピーナッツのタンパク質が皮膚から侵入してしまうんです [4]

——食べていなくても、肌からアレルギーになるんですか!

その通りです。国立成育医療研究センターのPACI試験(Yamamoto-Hanadaら, 2023)では、乳児アトピーに対して積極的な早期皮膚治療を行った群で、28週齢時点の鶏卵アレルギー発症が41.9%→31.4%へ有意に低下しました [5]。肌を早くきれいにすることが、食物アレルギー予防につながる可能性があるのです。ただしこの試験では、強化治療群で体重・身長がやや軽度に低下したため、ステロイド過剰使用は勧められていません [5]

ポイント

  • 荒れた肌から食べ物の成分が侵入する「経皮感作」が食物アレルギーの原因の1つ [3]
  • 湿疹を放置すると、食物アレルギーのリスクが上がる可能性がある
  • 早期の皮膚治療が食物アレルギー予防につながるという日本の研究あり [5]

Q4.「アトピーかも、と思ったらすぐ病院に行くべきですか?」

——具体的にどんな状態になったら受診したほうがいいですか?

以下の受診チェックリストを参考にしてください

すぐに受診をおすすめする状態:

  1. 2
    湿疹が2週間以上保湿しても改善しない
  2. 4
    赤ちゃんが顔をこすったり、体をよじったりしている(かゆみのサイン)
  3. 6
    湿疹がジュクジュクしている(滲出液が出ている=感染の可能性)
  4. 8
    顔だけでなく体幹や手足にも広がっている
  5. 10
    哺乳量が減った、夜中に何度も起きる(かゆみによる睡眠障害)

特に大事なのは、「2ヶ月以上待たなくてもいい」ということです。2ヶ月というのはアトピーの診断基準であって、治療を始めるタイミングではありません。湿疹があれば早めに受診して、適切なスキンケアの指導を受けることをおすすめします

ポイント

  • 保湿しても2週間以上改善しない湿疹は受診を
  • かゆみのサイン(顔こすり、体よじり)があれば早めに相談
  • 「2ヶ月待つ」必要はない。湿疹があれば早めの受診が安心

Q5.「アトピーと診断されたら、一生治らないんですか?」

——アトピーって聞くと、ずっと薬を塗り続けなきゃいけないイメージで……

乳児期に発症したアトピー性皮膚炎の場合、適切な治療を行えば、多くのお子さんが就学前後に症状が軽快します。ただし「治る」というよりは、肌のバリア機能を保つスキンケアを続けることで、症状をコントロールできるようになるというイメージが正確です

——治療はどうすればいいですか?

アトピー性皮膚炎の治療の3本柱は以下の通りです

  1. 2
    スキンケア(保湿でバリア機能を補う)
  2. 4
    薬物療法(ステロイド外用薬などで炎症を抑える → vol013参照)
  3. 6
    悪化因子の除去(汗・よだれ・ダニなどの対策)

特に最近注目されているのが「プロアクティブ療法」(症状が治まった後も再発を防ぐために薬を計画的に塗り続ける方法)です。これは症状が落ち着いた後も、週に2〜3回ステロイドを予防的に塗り続ける方法で、再発を大幅に減らせることがわかっています(vol013でも触れました)

——早く見つけて、早く治療すれば大丈夫なんですね

その通りです。「乳児湿疹だから様子を見よう」で放置せず、早めに適切な治療につなげることが、お子さんの肌とアレルギーの両方を守る最善の方法です

ポイント

  • 乳児期のアトピーは適切な治療で多くが就学前に軽快する
  • 治療の3本柱: スキンケア・薬物療法・悪化因子の除去
  • プロアクティブ療法で再発を予防できる

まとめ

乳児湿疹(一過性)

期間
数週間で治る
かゆみ
軽いor なし
場所
顔中心
経過
自然に改善
対応
洗浄+保湿

アトピー性皮膚炎

期間
2ヶ月以上続く・繰り返す
かゆみ
強いかゆみ
場所
顔→体・手足に広がる
経過
良くなったり悪くなったり
対応
早めの受診+治療

迷ったら、早めにかかりつけの小児科にご相談ください。

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愛育病院 小児科 おかもん

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