愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.140
「RSウイルスに似てる?」、ヒトメタニューモウイルスを知っておこう
今号のポイント
- 2ヒトメタニューモウイルス(hMPV)はRSウイルスに次いで乳幼児の下気道感染症の原因として多い
- 4春先(3〜6月)に流行のピークがあり、RSウイルスとは時期がずれる
- 6特効薬はなく対症療法が中心。呼吸困難の兆候を見逃さないことが大切
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「RSウイルスは陰性でした。でも咳がひどくてゼーゼーしています」、こうしたお子さんの中に、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)が原因のケースがあります。
2001年に発見された比較的新しいウイルスですが、実は以前からずっと存在していたことが分かっています [1]。今回は、hMPVについて詳しくお伝えします。
Q1.「ヒトメタニューモウイルスって何ですか?」
——聞いたことがないウイルスですが、珍しいのですか?
名前はあまり知られていませんが、とても身近なウイルスです。ヒトメタニューモウイルス(human metapneumovirus: hMPV)は、パラミクソウイルス科に属するRNAウイルスです [1]。RSウイルスと同じ科に属しており、症状もよく似ています
RSウイルスとhMPVの比較 [1][2]:
RSウイルス
- 発見年
- 1956年
- 流行時期
- 秋〜冬(10〜2月)
- 好発年齢
- 0〜2歳
- 主な症状
- 細気管支炎、肺炎
- 迅速検査
- あり
hMPV
- 発見年
- 2001年
- 流行時期
- 春(3〜6月)
- 好発年齢
- 0〜5歳
- 主な症状
- 細気管支炎、肺炎、喘鳴
- 迅速検査
- あり(2014年保険収載)
5歳までにほぼ全員が感染するとされ、生涯を通じて繰り返し感染します [2]。成人でも再感染しますが、通常は軽症です
ポイント
- hMPVはRSウイルスに似た呼吸器ウイルス [1]
- 春先(3〜6月)に流行のピークがある [2]
- 5歳までにほぼ全員が感染する [2]
Q2.「どんな症状が出ますか?重症化しますか?」
——風邪との違いは何ですか?
症状は風邪に似ていますが、乳幼児では下気道感染(気管支炎・細気管支炎・肺炎)に進行することがあります [3]
年齢別の症状 [3][4]:
| 年齢 | 典型的な症状 |
|---|---|
| 0〜1歳 | 発熱、咳、鼻汁、喘鳴(ゼーゼー)、細気管支炎 |
| 1〜5歳 | 発熱、咳、喘息様発作、クループ症候群 |
| 学童以上 | 軽い風邪症状(鼻水、咳、微熱) |
| 高齢者 | 肺炎(重症化リスクあり) |
潜伏期間は4〜6日で、RSウイルスより少し長めです [3]。発熱は3〜5日程度続き、咳は1〜2週間残ることもあります
重症化リスクが高いお子さん [4]:
- 早産児・低出生体重児
- 先天性心疾患
- 慢性肺疾患
- 免疫不全
ポイント
- 乳幼児は細気管支炎・肺炎に進行する可能性がある [3]
- 喘鳴(ゼーゼー)が目立つのが特徴 [3][4]
- 潜伏期間は4〜6日 [3]
Q3.「検査で診断できますか?」
——RSウイルスの検査みたいに、すぐ分かりますか?
はい。hMPV迅速抗原検査が2014年に保険適用となり、外来で15〜20分程度で結果がわかります [5]
検査のポイント [5]:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検査方法 | 鼻腔ぬぐい液による迅速抗原検査 |
| 所要時間 | 約15〜20分 |
| 保険適用 | 6歳未満の入院患者(外来では保険適用外の場合あり) |
| 感度 | 約70〜80%(陰性でも否定できない) |
保険適用の条件がRSウイルス検査と同様に制限があるため、すべてのお子さんに検査を行うわけではありません [5]。臨床症状と流行状況から総合的に判断します
ポイント
- 迅速検査で15〜20分で診断可能 [5]
- 6歳未満の入院患者で保険適用 [5]
- 感度は約70〜80%で、陰性でも完全には否定できない [5]
Q4.「治療法はありますか?」
——RSウイルスと同じように治療するのですか?
はい、基本的な考え方は同じです。特効薬はなく、対症療法が中心です [6]
治療の基本 [6]:
| 対応 | 内容 |
|---|---|
| 水分補給 | こまめな水分摂取。母乳・ミルクも少量頻回で |
| 鼻吸引 | 鼻閉が強い場合。授乳・睡眠前に特に有効 |
| 解熱剤 | アセトアミノフェン(カロナール)。辛そうなときに |
| 気管支拡張薬 | 喘鳴が強い場合に吸入(効果は限定的) |
| 入院適応 | SpO2低下、哺乳不良、多呼吸、陥没呼吸 |
RSウイルスにはパリビズマブ(シナジス)という予防薬がありますが、hMPVには現時点で予防薬・ワクチンはありません [6]。手洗い・うがいなどの基本的な感染対策が重要です
ポイント
- 特効薬はなく、対症療法が中心 [6]
- 予防薬・ワクチンは現時点でなし [6]
- 手洗い・うがいが最も有効な予防策
Q5.「受診の目安を教えてください」
——どうなったら病院に行くべきですか?
以下の症状が見られたら、早めに受診してください [6][7]
受診の目安チェックリスト [6][7]:
| 緊急度 | 症状 |
|---|---|
| すぐに受診 | 呼吸が速い(1歳未満:60回/分以上)、陥没呼吸(肋骨の間がへこむ)、顔色が悪い・唇が紫色 |
| 早めに受診 | ゼーゼー・ヒューヒューが目立つ、水分が十分に取れない、ぐったりしている |
| 翌日でOK | 鼻水・咳はあるが元気、水分・食事が取れている、熱があっても機嫌がよい |
特に生後6ヶ月未満のお子さんは重症化しやすいので、ゼーゼーや哺乳量の低下があれば早めに受診してください [7]。風邪と思って様子を見ていたら急に悪化することもありますので、呼吸の状態をよく観察することが大切です
ポイント
- 呼吸が速い・陥没呼吸・チアノーゼは緊急受診 [6][7]
- 生後6ヶ月未満は特に注意が必要 [7]
- 呼吸の状態の観察が最も重要
まとめ
- hMPVはRSウイルスに似た呼吸器ウイルスで、春先に流行 [1][2]
- 乳幼児は細気管支炎・肺炎に進行する可能性がある [3]
- 迅速検査で診断可能だが、保険適用に制限あり [5]
- 特効薬はなく対症療法が中心。予防薬・ワクチンもなし [6]
- 呼吸困難の兆候(多呼吸、陥没呼吸、チアノーゼ)を見逃さない [6][7]
- 手洗い・うがいが最も有効な予防策
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