愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.70
【防災チェックリスト】赤ちゃん・子どものための地震備え
このチェックリストは、印刷して冷蔵庫に貼ったり、スマホで見返すことを想定しています。お子さんの月齢・年齢に合わせて、必要な項目を確認してください。
はじめに
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
首都直下地震は、今後30年以内にマグニチュード7程度の地震が起こる確率が70%程度と評価されています [1]。「いつか」ではなく「いつ起きてもおかしくない」前提で備える時期に入っています。
赤ちゃんや小さなお子さんがいるご家庭の防災は、大人だけの備えと中身が違います。ミルク、おむつ、離乳食、常備薬、これらは災害時に最も手に入りにくくなる物資です [2]。
今回は、子どものいるご家庭向けの防災チェックリストです。全部一度に揃える必要はありません。「今日できること」から1つずつ進めてください。
1. 赤ちゃん・子どものための備蓄品チェック
授乳・ミルク関連
- 液体ミルク(3日分 = 約8〜12本。常温保存可能) [3]
- 使い捨て哺乳瓶(洗浄不要で衛生的)
- 粉ミルク(スティックタイプ)+ ペットボトルの水(液体ミルクと併用がおすすめ)
- 母乳パッド(授乳中の方)
おむつ・衛生用品
- おむつ(3日分 = 約20〜30枚。サイズを定期的に確認)
- おしりふき(多めに。体や手の清拭にも使える)
- ビニール袋(使用済みおむつの処理用)
- 除菌ウェットティッシュ
食事・栄養
- 離乳食・ベビーフード(月齢に応じたレトルトパウチ。3日分) [4]
- 使い捨てスプーン
- おやつ(ビスケット、ボーロなど長期保存できるもの)
- 経口補水液(OS-1など)(脱水対策。子ども用がベスト) [5]
衣類・保温
- 着替え(2〜3セット。季節に応じたもの)
- ブランケットまたはおくるみ(保温用)
- レインコート(子ども用)
医療・健康
- 常備薬(処方薬がある場合は必ず。解熱剤も) [6]
- 母子手帳のコピー(ワクチン接種歴・アレルギー情報の記録) [7]
- 保険証・医療証のコピー
- 体温計
- 絆創膏・消毒液
心のケア
- お気に入りのおもちゃ・ぬいぐるみ(安心感のために重要) [8]
- 絵本(1〜2冊。軽いもの)
- 家族写真(小さなお子さんの安心材料に)
2. 知っておきたい知識
① 液体ミルクの使い方
液体ミルクは災害時の強い味方です [3]。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 保存 | 常温で6〜12ヶ月保存可能(製品による) |
| 調乳 | 不要。開封してそのまま飲める |
| 衛生面 | 滅菌済み。断水時でも安全 |
| 温め | 常温でOK。人肌にしたい場合はカイロで温める |
使い方のポイント:
- 使い捨て哺乳瓶(または紙コップ)と組み合わせる
- 開封後は2時間以内に使い切る。飲み残しは廃棄(日本小児科学会の注意点)
- 普段から1〜2回は試しておく(拒否する赤ちゃんもいるため)
ポイント: 液体ミルクを「飲んだことがない」状態で災害を迎えると、いざという時に赤ちゃんが拒否することがあります [3]。月に1回は試し飲みさせて、ローリングストック(消費しながら備蓄)にしておくと安心です。
② 災害時の授乳
母乳育児中の方へ [9]:
- 母乳はストレス下でも止まりません。一時的に量が減ることはありますが、吸わせ続ければ回復します [9]
- 避難所で授乳スペースがない場合は、授乳ケープやバスタオルで対応できます(備蓄に入れておくと安心)
- 水分補給をこまめに。母乳を出すにはお母さん自身の水分が必要です
- ストレスで母乳量が一時的に減った場合は、液体ミルクで補完して構いません
混合栄養・完全ミルクの方へ:
- 液体ミルク + 使い捨て哺乳瓶を優先的に備蓄
- 粉ミルクの場合、ペットボトルの水(軟水)も忘れずに
- 断水時は粉ミルクの調乳が困難になるため、液体ミルクを必ず備えておく
③ 子どもの心理ケア
災害後の子どもの変化は「正常な反応」です [8][10]。
| 年齢 | よく見られる反応 |
|---|---|
| 0〜2歳 | 夜泣きの増加、後追い、ミルクの飲みムラ |
| 2〜5歳 | おねしょの再発、指しゃぶりの再開、赤ちゃん返り、暗がりを怖がる |
| 5歳以上 | 腹痛や頭痛(身体症状)、集中力低下、地震ごっこ |
親ができること:
- 退行行動(赤ちゃん返り)を叱らない [10]。「怖かったね」と受け止める
- スキンシップを増やす。抱っこ、添い寝、手をつなぐ
- 生活リズムをできるだけ早く元に戻す。食事・睡眠の時間を一定にする
- 地震の話を子どもからしてきたら、否定せず聴く
- テレビやスマホでの繰り返しの災害映像は見せない [11]
注意: 災害後1か月以上、強い恐怖・不眠・フラッシュバックが続く場合は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の可能性があります [10]。小児科や児童精神科に相談してください。
④ アレルギー児の備え
食物アレルギーのあるお子さんは、特別な備蓄が必要です [12]。
チェックリスト
- アレルギー対応食(3日分以上。普段食べ慣れたもの)
- アレルギー情報カード(氏名・年齢・アレルゲン・緊急連絡先を記入)
- エピペン(処方されている場合。使用期限を確認) [13]
- 抗ヒスタミン薬(処方されている場合)
- 食物アレルギー連絡カード(アレルゲンを明記。避難所での誤食防止)
避難所での注意点:
- 避難所の炊き出しはアレルギー対応でないことが多い [12]
- 善意の差し入れでも、成分表示を必ず確認する
- 「うちの子は○○アレルギーです」と周囲に伝えておく
- アレルギー情報カードは見えるところ(首から下げる、リュックに貼る)に
⑤ 乳幼児連れの避難のポイント
避難するときに覚えておきたいこと:
- 抱っこひも(おんぶひも)を備蓄に入れておく。両手が空くことが命を守る
- ベビーカーは瓦礫の中では使えない可能性が高い
- 靴(子ども用)を寝室に置いておく。ガラスの破片から足を守る
- 避難所が混雑している場合、車中泊になることもある。チャイルドシートを外さないこと
- 近所の一時避難場所を家族で確認しておく
3. 災害時の連絡先
番号
- 救急車
- 119
- 小児救急相談
- #8000
- 救急安心センター
- #7119
- 災害用伝言ダイヤル
- 171
- 災害用伝言板
- web171.jp
備考
- 救急車
- 意識がない、呼吸が苦しい場合
- 小児救急相談
- 夜間・休日の子どもの急病相談 [14]
- 救急安心センター
- 救急車を呼ぶか迷った場合
- 災害用伝言ダイヤル
- 安否確認。「1」で録音、「2」で再生 [15]
- 災害用伝言板
- スマホ・PCから安否登録 [15]
ポイント: #8000(小児救急相談)は、災害時もつながります。子どもの体調が心配な時は遠慮なく電話してください [14]。
4. 年齢別・備蓄品の見直しガイド
お子さんの成長に合わせて、備蓄品は変わります。半年に1回は見直しましょう。
| 月齢・年齢 | 重点項目 |
|---|---|
| 0〜6ヶ月 | 液体ミルク、使い捨て哺乳瓶、おむつ(新生児〜S) |
| 6〜12ヶ月 | 離乳食(月齢に合ったもの)、おむつ(M)、ストローマグ |
| 1〜2歳 | 幼児食(レトルト)、おむつ(L〜BIG)、おやつ、靴 |
| 3〜5歳 | 幼児食、おやつ、着替え、絵本、靴 |
5. 先生に相談したいこと(健診・受診時に)
- 「常備薬の予備をもらえますか?(防災用)」
- 「うちの子のアレルギー情報をまとめたいのですが」
- 「災害後、子どもの様子が心配です(夜泣き・おねしょなど)」
- 自分のギモン: ____________

おかもん先生より
「備えなきゃ」と思いながら、なかなか手がつかない、そんな方は多いと思います。全部を一度に揃える必要はありません。今日はおむつを3日分多めに買う、来週は液体ミルクを1本試してみる。小さな一歩で十分です。
このチェックリストを、年に2回(防災の日 9月1日と、3月11日)に見直す習慣をつけてみてください。お子さんの成長に合わせて、備蓄品も変わります。半年前のおむつサイズはもう合わないかもしれません。
「あの時やっておいてよかった」、そう思える備えを、一緒に始めましょう。
関連記事: vol029「子どもの窒息事故を防ぐために」、vol023「夜間受診の判断」
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