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発達障害と睡眠問題、発達障害に伴う睡眠の問題と対策
Vol.116発達

発達障害と睡眠問題、発達障害に伴う睡眠の問題と対策

- 発達障害のある子の50〜80%に睡眠問題がある

発達全年齢11
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 8·Q&A 5問収録

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この記事のポイント

  • - 発達障害のある子の50〜80%に睡眠問題がある
  • - メラトニンの分泌パターンの違いが一因
  • - 睡眠問題は日中の行動(不注意、衝動性、癇癪)を悪化させる

愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.116

発達障害と睡眠問題、発達障害に伴う睡眠の問題と対策

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。 「寝つけない」「夜中に何度も起きる」「朝起きられない」。発達障害のあるお子さんの外来では、睡眠の相談がとても多いです。 実際、発達障害のあるお子さんの50〜80%に何らかの睡眠問題があるとされ、定型発達の子ども(約25%)と比べてかなり高い割合です。 睡眠が乱れると日中の行動にも響くので、早めに手を打っていきましょう。

Q1.「発達障害の子はなぜ眠りに問題を抱えやすいのですか?」

——6歳の息子はADHDで、毎晩寝つくまでに1時間以上かかります。なぜこんなに寝ないのですか?

発達障害のあるお子さんに睡眠問題が多い理由は、複数の要因が関わっています [1][2]

説明

体内時計の乱れ
メラトニン分泌のリズムが通常と異なる
覚醒調節の問題
脳の覚醒レベルのコントロールが難しい
感覚過敏
布団の感触、部屋の音や光が気になる
不安
明日のことが心配で眠れない
こだわり
寝る前の儀式が崩れると眠れない
薬の影響
ADHD治療薬(特に中枢刺激薬)の副作用
運動不足
体を十分に動かしていない
スクリーンタイム
就寝前のブルーライトがメラトニン分泌を抑制

関連する障害

体内時計の乱れ
ASD、ADHD
覚醒調節の問題
ADHD
感覚過敏
ASD
不安
ASD、不安障害
こだわり
ASD
薬の影響
ADHD
運動不足
全般
スクリーンタイム
全般

特にASDのお子さんでは、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌パターンが通常と異なることが研究で報告されています。メラトニンの分泌量が少なかったり、分泌のタイミングがずれていたりすることが、入眠困難や睡眠リズムの乱れにつながります [1]

ADHDのお子さんでは、覚醒レベルの調節が難しく、日中に眠く夜に目が冴えるという逆転パターンが見られることがあります。また、コンサータやビバンセなどの中枢刺激薬は不眠の副作用があり得ます [2]。」

ポイント

  • 発達障害のある子の50〜80%に睡眠問題がある
  • メラトニンの分泌パターンの違いが一因
  • 睡眠問題は日中の行動(不注意、衝動性、癇癪)を悪化させる

Q2.「具体的にどんな睡眠の問題がありますか?」

——うちの子の場合は寝つきの悪さですが、他にもありますか?

発達障害に伴う睡眠問題は多岐にわたります [2][3]

特徴

入眠困難
寝つくまでに30分以上かかる
中途覚醒
夜中に1回以上目が覚める
早朝覚醒
朝早く(5時前等)に目が覚める
睡眠時間の短さ
同年齢に比べて総睡眠時間が短い
睡眠相後退
寝る時間・起きる時間が遅くずれていく
夜驚症・悪夢
睡眠中の叫び声、恐怖体験
レストレスレッグス症候群
脚がムズムズして眠れない
睡眠時無呼吸
いびき、無呼吸エピソード

よく見られる障害

入眠困難
ADHD、ASD
中途覚醒
ASD
早朝覚醒
ASD
睡眠時間の短さ
ADHD、ASD
睡眠相後退
ADHD(思春期に多い)
夜驚症・悪夢
ASD
レストレスレッグス症候群
ADHD(鉄欠乏が関連)
睡眠時無呼吸
全般

これらの睡眠問題は、日中の行動に直接影響します [3]

睡眠不足の影響具体的な変化
注意力の低下授業に集中できない、指示を聞き逃す
衝動性の増大怒りっぽくなる、待てない
感情調節の悪化癇癪が増える、泣きやすくなる
学習効率の低下記憶の定着が悪い、成績の低下
身体への影響成長ホルモン分泌への影響、免疫力低下

ポイント

  • 睡眠問題の種類によって対応が異なる
  • 睡眠不足はADHD・ASDの症状を悪化させる
  • 「行動の問題」の裏に睡眠問題が隠れていることがある

Q3.「睡眠の改善のためにまず何をすればよいですか?」

——何から始めればいいか分かりません。

まずは睡眠衛生(スリープハイジーン)の改善から始めましょう。薬を使う前に、環境と習慣を整えることで改善するお子さんは多いです [4][5]

睡眠衛生のチェックリスト:

カテゴリ推奨事項
就寝時間毎日同じ時間に寝かせる(休日も30分以内の差)
起床時間毎日同じ時間に起こす(朝の光を浴びる)
寝室環境暗く、静かで、涼しく(18〜22℃)
寝具感覚過敏に配慮した素材(タグなし、肌触りの良いもの)
スクリーン就寝1時間前にはスクリーンをオフ
カフェインチョコレート、コーラ等を午後以降は避ける
運動日中に十分な身体活動(就寝直前は避ける)
食事就寝の2〜3時間前までに食事を済ませる
昼寝年齢に応じて調整(5歳以降は基本的に不要)

就寝前ルーティンの確立:

就寝前の30〜60分間のルーティンを毎日同じ順番で行うことが非常に効果的です [5]

時間活動例
就寝60分前テレビ・タブレット終了
就寝45分前お風呂
就寝30分前パジャマに着替え、歯磨き
就寝20分前絵本の読み聞かせ(2〜3冊と決める)
就寝10分前部屋を暗くする、おやすみの挨拶
就寝時間布団に入る

ASDのお子さんには、このルーティンを視覚的に表示することが効果的です。写真カードやイラストで就寝前の手順を示し、一つ終わるごとにチェックしていく方法です。見通しが立つことで、就寝への不安や抵抗が減ります。

ポイント

  • 薬の前にまず睡眠衛生を改善する
  • 就寝前ルーティンの確立が最も効果的
  • スクリーンオフの時間を決めることが重要

Q4.「睡眠衛生を整えても改善しない場合はどうしますか?」

——いろいろ試しましたが、2時間近く寝つけない日があります。薬は使えますか?

睡眠衛生の改善で十分な効果が得られない場合は、薬物療法を検討します [5][6]

  1. 2
    メラトニン
項目内容
薬剤名メラトベル顆粒小児用0.2%(メラトニン製剤)
適応小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善(対象は6〜15歳)
用法就寝前に1日1回1mgから。最大4mg/日まで
効果入眠時間の短縮、睡眠リズムの調整
副作用傾眠、頭痛がまれに
特徴依存性なし、安全性が高い

メラトベルは2020年に承認され、効能は『小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善』です。診断はDSM-5に基づき、まず睡眠衛生指導や行動療法を行ったうえで処方します [6]

海外でもASD・ADHDを問わず小児の入眠困難に広く使われており、エビデンスが蓄積されてきています。メラトニンはもともと体内で作られるホルモンで、依存性はなく副作用も少なめです。」

  1. 2
    その他の薬物療法

適応

ラメルテオン(ロゼレム)
入眠困難(成人適応だが小児にも使用されることがある)
スボレキサント(ベルソムラ)
中途覚醒(成人適応)
抗ヒスタミン薬
一時的な睡眠補助
鉄剤
レストレスレッグス症候群(鉄欠乏時)

注意点

ラメルテオン(ロゼレム)
メラトニン受容体作動薬
スボレキサント(ベルソムラ)
オレキシン受容体拮抗薬
抗ヒスタミン薬
長期使用は推奨されない
鉄剤
フェリチン低値の場合に有効

薬を検討する前に、ADHD治療薬の影響も確認が必要です。コンサータやビバンセを服用しているお子さんで不眠がある場合、服用時間の調整や薬の種類変更で改善することがあります [6]

ポイント

  • メラトベル(メラトニン)は安全性が高く、ASDの入眠困難に有効
  • ADHD治療薬の副作用としての不眠には、処方の調整を相談
  • 薬はあくまで睡眠衛生の改善と組み合わせて使う

Q5.「重み付きブランケットなど、睡眠を助けるグッズはありますか?」

——薬以外で使えるグッズがあれば知りたいです。

いくつかの補助グッズにはエビデンスがあります [7][8]

効果・特徴

重み付きブランケット(加重ブランケット)
深部圧覚刺激でリラックス効果
遮光カーテン
光刺激を遮断して入眠を促す
ホワイトノイズマシン
環境音をマスキングして聴覚過敏を軽減
イヤーマフ・耳栓
就寝時の音過敏への対処
アロマ(ラベンダー等)
リラクゼーション効果
圧迫感のあるパジャマ
身体への均一な圧覚入力

エビデンス

重み付きブランケット(加重ブランケット)
ASD・ADHDでの一定のエビデンスあり
遮光カーテン
効果的(特に夏場)
ホワイトノイズマシン
一定のエビデンスあり
イヤーマフ・耳栓
個人差があるが有効な場合あり
アロマ(ラベンダー等)
限定的なエビデンス
圧迫感のあるパジャマ
一部のお子さんに有効

重み付きブランケットについて:

重み付きブランケットは、体重の10%前後のものが目安としてよく紹介されています(ただし強いエビデンスがあるわけではありません)。深部圧覚刺激が神経系を落ち着かせ、入眠を助けるとされています。ただし、2歳未満のお子さんや、自分でブランケットを外せないお子さんには使用しないでください。窒息のリスクがあります [7]

また、感覚の特性は個人差が大きいため、全てのお子さんに効果があるわけではありません。まずは短時間から試して、お子さんの反応を見ながら調整してください。」

リラクゼーション法(年長児向け):

  • 深呼吸(「お腹を膨らませて〜ゆっくり吐いて〜」)
  • 漸進的筋弛緩法(体の各部分に力を入れて→脱力する)
  • マインドフルネス(「体の音を聞いてみよう」)
  • オーディオブック(暗い部屋で耳だけで物語を聴く)

ポイント

  • 重み付きブランケットは一定のエビデンスがあるが、年齢制限に注意
  • 遮光カーテンとホワイトノイズは比較的手軽に試せる
  • お子さんの感覚の好みに合わせて選ぶことが大切

今号のまとめ

  • 発達障害のある子の50〜80%に睡眠問題があり、日中の行動に大きく影響する
  • まず睡眠衛生(規則正しい生活リズム、就寝前ルーティン、スクリーンオフ)を整える
  • 改善しない場合はメラトベル(メラトニン)が安全で有効な選択肢
  • ADHD治療薬の不眠副作用は処方の調整で対応可能
  • 重み付きブランケット等の補助グッズも検討に値する

あわせて読みたい

  • Vol.98「夜泣き対策」
  • Vol.74「夜驚症と夜泣きの違い」
  • Vol.104「ADHDの薬物療法」

ご質問・ご感想

お子さんの睡眠の問題についてお悩みのことがありましたら、お気軽にご相談ください。次回の Vol.117 では「発達障害の二次障害」についてお話しします。

愛育病院 小児科 おかもん先生

本メルマガの内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまの症状についてはかかりつけの小児科医にご相談ください。

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