愛育病院 小児科おかもん だより Vol.309
「歯ぎしりがすごい」「いびきをかく」、赤ちゃんの歯ぎしりといびき、心配なサイン
今号のポイント
- 2乳歯の歯ぎしりは噛み合わせ調整のための正常な行動。多くは自然に消失し、マウスピースは不要
- 4いびきの原因はアデノイド肥大・扁桃肥大・鼻づまりが多い。常時いびきをかく場合は要注意
- 6口呼吸・寝汗・日中の眠気は閉塞性睡眠時無呼吸のサイン。成長発達にも影響するため早めに受診を
こんにちは。愛育病院小児科のおかもんです。
今回のテーマは赤ちゃんの歯ぎしりといびきです。
「寝ている時にギリギリと歯ぎしりをします」「赤ちゃんなのにいびきをかきます」、どちらも「まさか赤ちゃんが?」と驚かれるご相談です。歯ぎしりもいびきも、多くの場合は心配いりませんが、中には治療が必要なケースもあります。今号では、それぞれの原因と受診の目安をお伝えします。
Q1.「赤ちゃんの歯ぎしりは大丈夫ですか?」
——8ヶ月の子が寝ている時にギリギリと歯ぎしりをします。歯がすり減りませんか?
赤ちゃんの歯ぎしりはとても多く見られる正常な行動です [1]。上下の乳歯が生え始める生後8ヶ月〜1歳頃に始まることが多く、乳歯が生えそろう3歳頃まで続くことがあります
——なぜ歯ぎしりをするんですか?
主な理由は噛み合わせの調整です [1]。乳歯は次々に生えてきますが、上下の歯がぴったり噛み合うわけではありません。赤ちゃんは無意識に歯をすり合わせることで、自分にとって快適な噛み合わせの位置を探しているんです。いわば顎の筋肉のトレーニングでもあります。また、歯が生える時のむずがゆさを紛らわせるために歯ぎしりをすることもあります
——歯がすり減ったり、顎に悪影響はないですか?
乳歯は永久歯に比べてエナメル質が薄いため、歯ぎしりで多少すり減ることはあります [2]。しかし、乳歯はいずれ生え替わるため、通常は問題になりません。顎関節への悪影響もほとんど報告されていません。大人の歯ぎしりとは異なり、乳幼児期の歯ぎしりにマウスピース(ナイトガード)は不要です [2]。多くは永久歯が生え始める6歳頃までに自然に消失します
ポイント
- 赤ちゃんの歯ぎしりは噛み合わせ調整のための正常な行動 [1]
- 乳幼児期のマウスピースは不要。多くは6歳頃までに自然消失 [2]
- 乳歯は多少すり減っても、いずれ生え替わるため問題なし
Q2.「歯ぎしりで心配すべきケースはありますか?」
——自然に治るとのことですが、受診したほうがいいケースはありますか?
以下の場合は小児歯科に相談してください [2]。
| 受診を検討すべきケース | 理由 |
|---|---|
| 歯が著しくすり減っている | まれにエナメル質がなくなるほどすり減るケースがある |
| 起きている時も頻繁に歯ぎしりをする | ストレスや痛みのサインの可能性 |
| 歯ぎしりに伴って痛みを訴える | 顎関節や歯の問題の可能性 |
| 6歳以降も強い歯ぎしりが続く | 永久歯への影響を考慮する必要がある |
ただし、これらに該当するケースは非常にまれです。通常の乳幼児の歯ぎしりは、見守っていれば大丈夫です。お子さんの歯磨きを毎日していれば、歯の状態は自然と確認できますし、定期的な歯科検診でもチェックしてもらえます
ポイント
- 受診の目安は著しいすり減り・起床時も頻繁・痛み・6歳以降の持続 [2]
- これらに該当するケースはまれ。通常は見守りでOK
- 定期的な歯科検診での確認が安心
Q3.「赤ちゃんがいびきをかくのは普通ですか?」
——1歳の子が寝ている時にいびきをかきます。風邪の時だけでなく、普段からです。大丈夫でしょうか?
風邪の時など、鼻が詰まっている時に一時的にいびきをかくのは正常です [3]。しかし、風邪でもないのに常時いびきをかいている場合は、何らかの原因があるかもしれません。子どものいびきの主な原因をお伝えします [3][4]。
| いびきの原因 | 特徴 |
|---|---|
| アデノイド肥大 | 鼻の奥(上咽頭)のリンパ組織が大きくなり気道が狭くなる。2〜5歳でピーク |
| 口蓋扁桃肥大 | のどの両側の扁桃腺が大きくなる。3〜6歳でピーク |
| 慢性鼻づまり | アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎など |
| 肥満 | 気道周囲の脂肪が増え気道が狭くなる |
最も多い原因はアデノイド肥大と口蓋扁桃肥大です [4]。アデノイドとは鼻の一番奥にあるリンパ組織で、外から見ることはできません。2〜5歳頃に生理的に大きくなりますが、気道を圧迫するほど大きくなると、いびき・口呼吸・中耳炎の原因になります。扁桃腺も同様に、3〜6歳頃に最も大きくなります
——アデノイドは見えないんですね。どうやって診断するんですか?
レントゲン撮影や内視鏡(ファイバースコープ)で確認できます [4]。いびきに加えて口呼吸が見られる場合は、一度耳鼻咽喉科を受診してみてください
ポイント
- 風邪の時の一時的ないびきは正常。常時のいびきは要注意 [3]
- 主な原因はアデノイド肥大と口蓋扁桃肥大 [4]
- いびき+口呼吸がある場合は耳鼻咽喉科受診を
Q4.「いびきから睡眠時無呼吸になることはありますか?」
——いびきの途中で呼吸が止まることがあるような気がします。睡眠時無呼吸ということもありますか?
はい、子どもにも閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)があります [5]。小児の1〜4%に見られるとされ、最も多い原因はアデノイド・扁桃肥大です [5]。以下のサインがある場合はOSAを疑い、受診をお勧めします。
| 閉塞性睡眠時無呼吸の警告サイン | チェック |
|---|---|
| 大きないびきが毎晩続く | |
| 呼吸が止まる瞬間がある(無呼吸) | |
| 口呼吸が常態化している | |
| 寝汗がひどい(頭や首がびっしょり) | |
| 落ち着きのない睡眠(頻繁に寝返り、体位変換) | |
| 日中の眠気やイライラ | |
| おねしょが年齢のわりに多い | |
| 成長の遅れ(体重増加不良、身長の伸びが悪い) |
小児のOSAは大人と少し症状が違います。大人は日中の眠気が主症状ですが、子どもは日中の多動・注意力低下・イライラとして現れることが多いんです [5]。そのため、ADHD(注意欠如多動症)と誤診されることもあります。また、OSAによる睡眠の質の低下は成長ホルモンの分泌に影響し、体重増加不良や身長の伸びの低下につながることがあります [6]
——治療はどうするんですか?
原因がアデノイド・扁桃肥大の場合は、アデノイド・扁桃摘出術(アデノトンシレクトミー)が第一選択です [6]。古いメタ解析では8割前後の症例でOSAが改善すると報告されていましたが、近年の検討では肥満や年長児では残存するケースもあり、症状や重症度の改善率で見るとおおむね60〜80%と幅があります [6]。手術は全身麻酔で行いますが、小児耳鼻咽喉科では最も一般的な手術のひとつで、入院は通常3〜5日程度です。鼻づまりが原因の場合は、アレルギー治療や鼻腔ステロイドスプレーで改善することもあります
ポイント
- 小児の1〜4%に閉塞性睡眠時無呼吸がある [5]
- 口呼吸・寝汗・日中の多動やイライラは警告サイン [5]
- 成長ホルモン分泌への影響で成長の遅れにつながることも [6]
- アデノイド・扁桃摘出術でおおむね60〜80%が改善(年齢・肥満で成績に差)[6]
今号のまとめ
- 乳幼児の歯ぎしりは噛み合わせ調整のための正常行動。マウスピースは不要で自然に消失する [1][2]
- 常時のいびきの主な原因はアデノイド肥大・扁桃肥大 [4]
- 口呼吸・寝汗・日中の多動/イライラ・成長の遅れは閉塞性睡眠時無呼吸のサイン [5]
- 小児OSAは成長発達にも影響。アデノイド・扁桃摘出術でおおむね60〜80%が改善 [6]
- いびき+口呼吸が続く場合は耳鼻咽喉科受診を
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※ この記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さんの症状が心配な場合は、かかりつけの小児科医にご相談ください。記事中の情報は掲載時点の医学的知見に基づいており、今後の研究の進展により変更される可能性があります。